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じんろう

先日、相方の神田と同期の慶士と3人で人狼ハウスというお店に行った。
文字通り、人狼ゲームをする施設だ。

部屋に入ると既に6人の方がいた。

・このお店の店長さん
・如何にも経験者ですオーラさん
・ハーフ顔の180cmオーバーさん
・立川住み40代成人男性さん
・2ℓ烏龍茶がぶ飲み男
・人見知りだが絶対良い人さん

僕ら3人を含め、男の子9人でゲームをすることになった。

今日ここに来なければ一生会うことはなかっただろうというメンバーと人狼が始まった。

初対面ということもあり、1人ずつ簡単な自己紹介をした。
僕たち3人はもちろん初参加だが、他の方たちも2回目という方など始めたばかりの方がほとんどだった。
全員ほぼ素人なら難しく考えずにゲームを楽しめると思った。

役職は市民3人、占い師、霊媒師、騎士の市民側6人と人狼2人、狂人の人狼側3人で行われることになった。

最初に役職カードが配られ、そのカードに載っている役職で市民側か人狼側か決まる。

僕は騎士という役職カードだった。
夜のターンに誰か1人を人狼の襲撃から守れる役職だ。

ただ、この役職は人狼にとっては邪魔な役職なので、人狼側は早めに消しておきたい役職である。

つまり僕は人狼に騎士であることがバレてはいけない。
投票で処刑されず、かつ人狼に騎士だとバレないように動く必要があった。

全員が自分の役職を確認したところでゲームがスタートした。

ゲームスタートと共に神田が
"いやー昨日はよく眠れましたね。"
と言った。

特段気にする必要のない一言を放った。

だが、僕と慶士以外の6人はその発言を聞いて
"よく眠れたということは市民なのでは?"
"いや、人狼だからこそ襲われる心配がないからよく眠れたのでは?"
と推理を始めた。

いやいや、なんの考察も要らない挨拶代わりの一言ですやん!と。
そこも推理しちゃったら僕ら3人は今後余計なこと話せませんやん!
そう思った。

そしたら案の定、そこからえぐい推理が始まった。

芸人3人が全然前に出れなかった。
あんなにタジタジになっている神田を初めて見た。

このゲームではちょっとした一言が命取りになる、そう思ったら僕も何も話せなくなった。

あんたたち自己紹介でほぼ素人ですって言ってたやん!
そう思った。

僕たち3人以外は現役バリバリのプレイヤーばかりだった。
最初の自己紹介で油断させる作戦で来ていた。そしてまんまと油断していた。

あの時点で人狼ゲームは始まっていたのか。
ゲームスタート前は人狼6人、芸人3人の村だったとその時気付いた。

ゲームが始まり何のヒントもない為、占い師と霊媒師はカミングアウトをしようとなった。
がぶ飲み男と人見知り優男さんが占い師とカミングアウトした。
つまりどちらかは本物の占い師で、もう1人は人狼側だ。
霊媒師は、如何にも経験者さんしかカミングアウトしなかった為、ほぼ確定で霊媒師として扱おうとなった。

占い師、霊媒師でカミングアウトをしていない残りの6人に疑いの目が向けられることになった。
ここで案の定、芸人3人が特に疑われ始める。

初心者でも楽しめると思っていた為、パッションだけで来た僕たちは、自分は市民側ですよ!と上手くアピールできない。
喋れば怪しいと思われ、喋らなければ怪しいと思われる負のスパイラルに陥っていた。
もう詰んでいた。

すると、慶士が
"占い師と言った人が2人いるので、まだどちらが本物かわからない以上初日に投票するべきではないと思います。"と言った。

すると
"いい考えだね。"
"この発言ができるってことは市民側だと思う。"
と何故か称賛され慶士は1番安全圏に躍り出た。

ずるいって!!僕と神田も助けてくれって!!

投票の時間になり、1人ずつ投票先を言っていく。
神田、みの、立川住み、みの、立川住み、と順番に投票されていった。

僕の投票の番になった。
まじで誰か分からねえ!!
てか俺2票入ってるし!!

全員市民側ぽく見えるし、全員人狼側に見えて怪しい。

ただ、なんとなく慶士が怪しく思えた。
1番安全圏にいる慶士が、理由はないが怪しく思えた。
というか、僕と神田を残して1人安全圏に行ったから投票してやろうと思った。

残りの3人が、みの、立川住み、神田にそれぞれ投票した。

僕と立川住みさんが3票ずつとなり決選投票となった。
ここで爪痕を残さなければ投票で処刑されてしまう。

人狼に狙われると思ったから黙っていたが、騎士であることをカミングアウトしよう。それで市民側を味方につけよう。

"えっと、一応騎士です、はい、、。以上です。"

それだけを伝えた。
頼む!!僕に投票しないで!!
そう願った。

決選投票の結果、立川住みさんが処刑となった。
あぶねえ!!何とか生き残った!

夜のターンとなった。
この夜で、人狼は誰か1人を襲撃し、占い師は誰か1人を占える。
僕も騎士のため、誰か1人を襲撃から守れる。
ここで、人狼の襲撃から守れれば、市民側のヒーローでしかない。

今までの話し合いを思い返し、市民側と断定できるのは霊媒師でカミングアウトをした如何にも経験者さんだけだ。

この人を人狼も襲撃するに違いない。
つまり、この人を守っていれば僕はヒーローだ。

はいはい、翌日の占い師結果次第では市民側の勝ちへのルート見えたよ!

そう思ってた。

"昨夜、みのさんは無惨な姿で発見されました。"

しまったあ!!騎士って言っちゃってたんだ!!
そりゃあそうだ、騎士は人狼が1番襲撃したい役職なのだから

ここで霊媒師を守ればヒーローになれるとホクホクしてた自分がアホみたいだ。

そのまま退場となり、2分前に決選投票を戦った戦友の立川住みさんの横に小さくなって座った。

2日目の投票で神田が呆気なく処刑となった。
何もできずに2人並んで小さくなった。

もう勝ち負けとかは良いから、慶士爪痕を残してくれ!
そう思っていた。

翌日の投票で慶士が処刑された。

芸人3人は何もできずに退場となった。
3人並んで小さくなった。

僕たち3人が退場したことで、それまでは抑えていた専門用語が飛び交うようになった。
僕たちがいる間はお遊びでしたと言わんばかりに全員饒舌になっていた。肩を回していた気さえする。

残り3人となり、人狼1人、市民側2人の構図になっていた。

最後の3人が話し合いをしている5分間はマジで何を言っているのか分からなかった。0.75倍速で再生したいと思うぐらいに3人がめっちゃ喋ってた。

なんだかんだで本物の占い師だった人見知り優男さんが処刑され、人狼側の勝利となった。

人狼側の勝利が決まった途端、神田がめちゃくちゃに喜んで、もう1人の人狼だった、がぶ飲み男とハイタッチしていた。

何もできなかった人狼の神田が1番喜んでいた。

もう1戦やりましょうとなったが、あまりにもガチ人狼すぎて、バイトがあると断り帰ることにした。

お店を出た後、何もできなかったな、と3人ともなっていた。
別にあの人たちは人狼が強そうな見た目ではなかったのに。
見た目じゃ分からないものだ。

そうか、普段すれ違っている人や電車で隣に座っている人も、もしかしたら人狼が強いのかもしれない。ベビーカーを押しているママさんや仕事で疲れ切っているサラリーマンだって実は人狼が強いのかもしれない。

ただ、それを隠して普通の生活をしている。
人狼が強いことをバレないように普通の生活をしている。

人狼は私生活にも潜んでいるのか。

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