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ぴんもん


モンスターエナジー パイプラインパンチ (355ml)

僕はこの飲み物が好きすぎる。

無人島に何か1つだけ飲み物を持っていくなら?と聞かれたら、そこはさすがに水と答えるが、2つと聞かれたらこのピンモンと答えるくらいには好きだ。

僕はこの通称ピンモンをこよなく愛し、引くほど飲んでいた。
そう、飲んでいた。だ。
もう今では過去の話である。

今はもう飲んでいない。
別に嫌いになった訳ではない。
今だにしっかり飲みたいという感情を持ったまま3ヶ月飲んでいない。

3ヶ月前に相方と約束をし、ピンモン禁止を自分に課した。

こういった時、大人なら禁酒が一般的な相場だろう。
だが、僕にはピンモンの方が辛い選択であった。

僕はピンモンを禁止にするまで、1日に最低2本、調子が良ければ5本は飲む生活をしていた。
その生活を約3年続けていた。

何故そんなにピンモンを飲んでいたのかと疑問を持つ方もいるだろう。
僕がピンモンを飲んでいる理由は、味が好きだからだ。
普通に味がうめえ!!
僕はエナジードリンクを味で飲んでいるタイプの人間だ。
水分補給としてピンモンを飲んでいる。
元気になりたいとか調子を良くしたいとかではなく
シンプルに喉が渇いたな、で飲んでいる。
中学生の時に出会っていたら、水筒に入れて学校に持って行っていただろう。

3年も続けていたら、飲むことが生活の一部となっていた。
だが、そんな生活を自分より周りが心配してくれていた。
相方からもネタ合わせ中に頭痛や吐き気がある度に、飲むのを止めるように言われていた。
僕はピンモンのせいだとは思っていなかったが、今思うと多少なり、いやかなり影響があったのだろう。

僕は自分で決めたルールも守れないような弱い人間である。
だが、今回のピンモン禁止条例は相方と締結した条例だからしっかり守っている。

家に帰れば相方にバレずに飲むことだってできる。
だが、もし1本飲んでしまったら2本、3本と際限なく飲んでしまうだろう。
だからこの3ヶ月間1本も飲んでいない。

ピンモンを禁止にしたからと言って、体調が良好になった気は全くしない。
相変わらず常に眠いし、めっちゃ寝ている。

だが、体調に変化がなくても精神面では変化があった。
物に当たらなくなったし、女子供に手を出さなくなった。
大人になった気がする。
この成長には自分で自分をヨシヨシしてあげたい。

今までピンモンを好んでいなかった人からしたら、この約束は何の重荷にもならないだろう。
だが、僕からしたら生活の一部を取られたようなものだ。

まず起きたら1本、出先で1本、バイト中に1本、帰宅後就寝までに1本を飲む生活をしていた。
Amazonの定期購入で毎月箱買いをしていた。
冷蔵庫の中にピンモンしか入っていない、最強の冷蔵庫を完成させそれを見ながら1人ニヤニヤしていることもあった。

だが、定期購入していると常に冷えたピンモンが家にあり、めちゃくちゃ飲んでしまっていた。1週間で1箱分を飲み切り、月に2箱購入していた時期もあった。
定期購入以外にも相変わらずコンビニなどで購入していた。

さすがにお金のない下積み芸人の購入量を超えていた。

月に70本-80本ほど美味しく頂いており、ひと月で約¥15,000分のピンモンを飲んでいた。
1ヶ月でおおよそ26ℓのピンモンを摂取していた計算となる。
この生活を芸人になってからの3年間続けていた。
3年間で約1トンものピンモンを飲んでいたことになる。

さすがに1トンものピンモンがあれば、北島康介でさえ溺れる量であろう。
だが僕は、その1トンものピンモンで北島康介以上に超気持ちいい気分になり、"ごちそうさま"と言えていたという点では、何も言えなかった北島康介以上に水泳の適性があったのかもしれない。

噂によるとエナジードリンクはあまり体に良くないらしい。
飲むと元気になれると聞いていたが、飲みすぎると元気ではなくなるみたいだ。
哲学のような話だ。

SNSでエナジードリンクの危険性やカフェイン中毒について取り沙汰される度に、その記事のスクリーンショットと共に友人から心配の連絡を貰っていた。

僕の周りの人は口を揃えてやめた方がいいと言ってくれていた。
ありがたいことに僕の体調を気にかけて言ってくれていたのだろう。

だが、本人に危機感がなければ意味がない。
全ての忠告を聞き流し、毎日毎日飽きずにピンモンを飲んでいた。

それらの忠告を他人事のように感じていた。
"明日の自分は赤の他人"と思って生きている僕からしたら、まさに他人事であった。

エナジードリンクは元気の前借りとよく聞く。
そんなの、知ったこっちゃない。
なんせ明日の自分は赤の他人なのであるから。
これで他人の寿命が数年縮もうが、それはもう仕方がない。

販売しているアサヒ飲料の開発事業部の方より飲んでいただろう。
アサヒ飲料の筆頭株主になれるほどの飲みっぷりだっただろう。
これから益々アサヒ飲料に貢献すると思っていた。

だが、僕は変わった。

さすがに相方と約束をしたからには飲めない。
これで体を壊したら2人に申し訳ない。
そう思い飲むのをやめた。

売れたらめちゃくちゃ飲んでやろうと常に機会を伺ってはいるが、まだその機会は現れない。
ピンモン禁止がきっかけに、僕には売れる理由が1つ増えた。

果汁16%のピンク液体を飲むだけで喜びを感じていたあの頃の僕はもういない。

今では、”明日の自分は赤の他人”なんて恥ずかしくてとても言えない。
明日の自分はめっちゃ自分なのであるから。
がん保険に入ろうかと思うぐらいに、今はこれから先を見据えている。

正直、ピンモン禁止条例を締結したが、すぐに破ると思っていた。
他の飲み物では代用できず、密飲すると思っていた。
だが、ピンモンを禁止にして3ヶ月が経ち、気付いたことがある。

全然、水でいい!!
冷えた水、美味え!!

全然いけた。わざわざ230円出さなくても水分補給できた。
むしろ就寝前とかピンモンより水の方が良い気さえした。

だが、若い頃の僕のように
水で代用できると知らずに今だにピンモンを飲んでいる人もいるだろう。

無知なばかりにもったいない。

だから今度、ピンモンを飲んでいる人を見かけたら、
引退したピンモンOBとして一言、言ってやりたい。

"それ、美味いよな!"と。

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