すききらいのはなし

ちょっと前のはなし。自粛生活を経て久しぶりにお気に入りのカフェにランチに行ったときのこと。数ヶ月ぶりのランチに一人でわくわくしていると、隣の席に2人組の女子がやってきた。カウンターで横並びに座っていたのだけど、奥に座った人がでかい声でしゃべるしゃべる。自分の連れが写真を撮れば


「料理がきたら早く食べろよ。料理人に失礼やろ」


なんて言うくせに自分は


「嫌いなもんばっかり」「この味はちょっと」


とか文句ばかり。小さい店だから店主さんにも聞こえてたかも。失礼はどっちだよ。てかこっちは久しぶりに来てルンルンなのにうるせぇよ!という気持ちでいっぱいになった。


私も好き嫌いが多い人間だった。だったの。保育園で働き始めて(3月で辞めましたけども)、子どもの手前残せないし、一緒に頑張って食べて、「食べられたねぇ」と一緒に喜んで一緒に育って、今では色んなものが食べられるようになった。親にも


「あんた育ててもらったねぇ」


と感心されるほど。隣のうるさい客の声を聞きながら、好き嫌いが多いのは損だなぁと思った。栄養的な面はまぁもちろんなのだけど、それよりも出会いの場が減っていく。限られたものしか食べられないと、行く店も限られてくる。出会いが少ないから


「うまっっ!!」


っていう感動も少ない。心が動かない人生はつまらない。そうやって考えると、食べられるものが増えてよかったなぁとしみじみ思いながらビビンバを食べた。おいしかった。ちょっとだけうるさい客に感謝した。



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