見出し画像

#90 ウーブンシティは禅寺にした方がいいと思う

 世界のトヨタの創業家である豊田家には一世代一事業という、目標があると聞いたことがある。初代の佐吉の織り機から始まり、2代目はトヨタ自動車、3代目はトヨタホームを創業した。

そして今会長になった豊田章男さんはウーブンシティという街づくりを次の事業として成立させようと、私財を出して事業を進めている。

家、自動車までは個人で買えるものだったが、街となると生活そのものを提供することになるので、一企業が提供するものとしてはこれ以上のサービスは無いものに感じるが、それゆえ難しさのレベルが格段に上がると思う。

自分が最も難しいと感じるのは、街に必要な”毒”と"薬"だと思う。例えば風俗店、キャバクラ、パチンコ店など、住人にとってはあまりあってほしくないと感じる人が多い施設は人工的な街(=ウーブンシティ)に入れることはできないが、そういった施設も少量は必要だと思う。

 名古屋の下町商店街の大須にはパチンコ屋に来る客人が開店前に過ごすためのコンパルという喫茶店がある。今流行りのオシャレな感じではないが、何十年も続く名古屋では有名な喫茶店だ。7時から9時ごろは、開店を待つお客さんが、モーニングを食べて、過ごしている。

果たして、パチンコ屋がなかったらその喫茶店は何十年も続いただろうか?そう。施設としては毒かもしれないが、そこに来る客によって多少なりともその町に循環が生まれ、喫茶店という文化ができるという薬の効果もあるのだ。

健全な住民、健全なお店、完ぺきなシステムで街を作る事は無菌ルームを作るのと同じだ。その無菌ルームでは生きて行けるかもしれないが、味のある文化や、多様性、深みは生まれない。そんな街にずっと住み続けるのは水耕栽培された人間を作る事で、形は人間の形をしているが、味が薄い人間になってしまうと思う。

ではどうしたらいいか?それは無菌ルームを必要な人に必要な期間提供することだと思う。ディズニーランドに一生住みたい人が少ないように、ある期間、無菌状態が必要な人は居る。その方に日頃の生活で染みついた垢を落としてもらうために、一定期間、自分と向き合う禅寺道場の様に、過ごせばいいのではないか?と私は考える。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?