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夏の泡沫 あとがき/裏話


「夏の泡沫」再放送にあたり、裏話が下書きに残っていたので投稿します。

それぞれ考察してもらえればなーと思って投稿していなかったんですけど、それなりに時間が経ったのでザ・ネタバラシです。
ぜひ読んでから合わせてお楽しみくださいませ!


思いついたきっかけ

初めは「うまくしゃべれないけど泳ぎがうまい子」と、それに一目ぼれした男の子とのストーリーだったんですけど、全然続きが浮かばないし面白くなくてセルフ没にしました。
ただ、「しゃべれない子」=人魚設定はどうしてもやりたくて考えはじめました。

人魚って金髪なイメージがあったので、ギャルにしたら?と姫子が生まれ、女子×女子の方がおもしろいのでは?となりました。人魚姫ってしおらしいイメージもあるので、そこの部分も裏切れたらと。

マーメイド、人魚、とかのタイトルを入れるべきかと思ったんですけど、ネタバレになりそうだったので泡沫に。
読みは最初「うたかた」のつもりだったんですけど、作者自身、脳内でずっと「ほうまつ」って読んでたのでどっちでもいいです。

1話

ほたるは学校でいじめられた経験から、「学校で」しゃべるのが苦手な女の子。姫子は基本授業中寝てるので、音読で多少声が出てることには気づいてないし、ほたるの存在も「前の席の子」くらいにしか気に留めていなかった感じです。
城山が話しかけてるのを見て、初めて気づいたっていう流れです。
最初は「何あの子!城山くんに好かれて!」っていじめに発展するシーンを入れようと考えてた(なのでクラスメイトの悪口が挟まれてる)んですけど、姫子との関係性を重点的に描くことに切り替えたので没になりました。
ほたるが初めて温もりに触れた瞬間から、この物語は始まります。


2話

初めて放課後に友達と遊びに行くという経験。「欲しいもの」や「似合う」と自分を肯定してくれる初めての存在に出会う。
「本来の自分と違かったとしても、どうにか一緒にいたい」という思いが募っていくのは本家人魚姫のオマージュでした。


3話

「白雪姫」のように、何もしなくても王子が助けてくれる物語に憧れるほたる。
城山くんの言う「仲間」に違和感を覚えるのは、ほたるは夢があるわけではなく、「それが普通だから、普通になれる方法だから」と思って大学受験をするからでした。普通に暮らせたらそれでいいって思っていたほたる。幸せって何だろうと初めて考える回でした。


4話

ほたる=夜を照らす、儚い光。ほたるではあるが、姫子でもあります。名前を呼ばれて心地よさを感じることで、ほたるは別に自分の名前が嫌いだったわけじゃなくて、悪意をもって接されることが嫌いだっただけだった、と気づきます。
姫子としては、ほたるの居心地の悪そうな感じを汲み取り、本当は人魚に戻りたいのでは…と察したり、終盤につながる重要なアイテムの存在の匂わせがあった回でした。


5話

ダーリン登場。
王子っぽくない感じを出したくてチャラいパーマに、夏の大三角はわかりやすい特徴がほしくて。よくよく考えたら「三角関係」もあるな、と。
人のことをそんなに思えるってすごいな、と思うほたるですが、彼女自身も終盤にかけてそうなっていきます。
城山くんからすると、いきなりおとなしい女子がギャルに絡まれてる図なので、生徒会長タイプの彼は正義感が発動してしまったんですね。
良いやつなんですけど、その時点ではなんとなくほたるや姫子を下に見ています。僕が救うんだ、みたいなメサイアコンプレックスもある感じです。
ちなみに姫子は海の魔女の手配で人間界にホームステイしています。魔女もコンプラとか厳しい時代なのかもしれません。そのへんはいい感じに見てもらえると…。


6話

ずっと「普通」の仲間に入りたかったほたるが選んだのは、ほたる個人を尊重してくれる姫子の存在でした。
3話で問いかけていた、幸せって何だろうの答えと、「なにもしなくても助けてくれる王子が欲しかったわけではない」と気づきます。
姫子に何か返していきたいという気持ちがふくらむほたる。当の姫子は、別になんかしてる自覚もないんだけど…。
枕草子に蛍出てくるじゃん!はあとで気づいた偶然の産物でした。
最初はこの話が予定になくて、でもないと説得力がなくなるなと思って追加しました。


7話

誕生日。ほたるが人生で初めて(家族以外の)誰かに生を肯定してもらう場面。
例のシーンは最初の構想では雨降ってなかったのに、なんか自然と雨が降ってきて、走れメロスみたいな現象が起こりました。
そして、メロンソーダ =泡。生(誕生日)と死(水と泡)の対比構造回になっていました。
ここからの展開は書きたかったやつだったので楽しく書きました。


8話

姫子の幸せを考えるシーン。
「あんなやつに、ひめちゃんを幸せにできるのか?」「ひめちゃんに消えてほしくない」という、ほたるの中に複雑な感情が生まれてきた回でした。今まで「自分が傷つかないように」生きていたのに、ここで他人を思う気持ちが生まれます。
幸せをくれた分、幸せを返さねば、という、損得で考えちゃうほたる。
ほたるは「王子が見つかったが、叶わないので人魚に戻りたい」と嘘をついて姫子からナイフを受け取ります。
姫子も姫子で、やっぱり人魚戻りたかったんだ、と勘違いで噛み合わない2人。自分は成就してしまってるがゆえ、引き止めるのは憚られたんでしょう。
「幸せ~」のモノローグはどっちもの気持ちでした。


9話

城山くん、ここで2人の世界を無視して、無意識に2人を自分の正解に当てはめていたことに気づきます。頭のいい城山くんでも、人の本当の気持ちなんてわからない、ということがわかったのでした。
ほたるが本当に欲しかったものは、無条件に助けてくれる王子ではなく、そのままの自分を認めることができる力でした。
それを与えてくれた姫子が不幸になることは本意ではない。王子を殺すことで、人魚に戻れるなら、それが姫子の幸せだと確信してしまいます。
姫子は渡したことを後悔し、止めようと思って探していました。後ろ姿で判別が難しかったと思いますが、地面に置かれていたトランクケースがカギになって発見に至りました。
そして、今まで自分を守るためにしゃべらなかったほたるが、「誰かを守るため」に叫びます。
しかし、王子を殺せない+姫子に人魚じゃないことがばれる+婚約も続けられない、という最悪ルートの幕開けに…。


10話

メロンソーダの泡、蛍、かき氷、花火、消えていくものが多い夏。作品の節々にそんなモチーフを入れていました。夏の泡沫、というタイトルにはそんな意味も込めていました。

最初に出会ったプールでラストシーン。
タイトル画像も最初と最後に通づる感じです。
最後、城山くんは来ない予定だったのに来ました。本当は数年後に再会して、あの時はごめんみたいなことを言う予定だったんですけど、彼は問題を先延ばしにしなかったです。そういう真面目なやつでした。
そのおかげで、ほたるがちゃんと一歩を踏み出してくれたので結果良かったです。

なんで姫子が消えなかったのか?というと、
もともと「人間と人魚が本気で結ばれる、心を通わせるのなんて無理」→「結婚せよ」という魔女の指令だったので、心を通わせた人間がいるということで許された説と、お揃いのシュシュが指輪替わりになった説があります。
この辺は読者のご想像に…と思っていました。



その後

将来の話。
ほたるは保健室の先生に、城山くんは医者じゃなくて教師になります。もっと人のことを知るべきと思ったから。
そして同じ学校の赴任になって、「あのときはごめん」みたいな話をする予定でした。が、なんかいい感じにその後の学園生活を3人が過ごしたんだろうな、みたいなラストになったので、そんな話を入れるのも野暮か〜と思いあそこで終わりに。
その頃の姫子はというと、キッチンカーでお弁当屋さんをやってます。ほたるの赴任先についていってはお弁当を支給しています。岩塩が効いてて女子高生に人気らしいです。



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以上、裏話でした!

これを機にもう一度読み返してもらえると嬉しいです。また夏が来ますからね。

ではまた!

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