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技術移転担当者(URA・TLO)の推薦図書

 この記事ではURA/TLOへの推薦図書をまとめてみました。この分野に限らず、大学をクライアントにする案件や大学の先生を参与やアドバイザーとして迎え入れるような案件を担当している企業等の皆さんにとっても、いくつかについては有用なものではないかと思っています。
 
以下で,下記5分野についての推薦図書をご紹介します。

  1. 大学の経営について

  2. 技術戦略について

  3. PMOについて

  4. Valuationについて

  5. 知的財産について


大学の経営について

 URA/TLOの仕事は、その成果として企業や公的プロジェクト等の外部資金を取ってくることなのですが、我々のカウンターパートとなる研究者は、もちろんこの外部資金だけで研究室を運営している訳ではありません。したがって、カウンターパートが見ている全体像である研究室経営の全体像を知ることが必要です。その研究室経営は大学の経営全体と紐づいている訳ですから、そこまで把握しておくべき、ということになります。よく尊敬する元上司が「二つ上の視座を持ちなさい」と言っていましたが、そういうことだと思っています.


技術戦略について 

 URA/TLOのミッションの一つは,とある技術を事業化することであり,この知識が必要とされることは当然イメージも付きやすいと思いますので、サクッと行きます。


PMOについて

 PMO系も色々な人が良書を紹介されていると思いますので、一冊だけ。特にPMO??というような初学者であった頃に出合った本です。これを読んでおけば、そんな言葉も知らんのか!というような形で信頼を失うことはなくなるかと思います。


Valuationについて

 URA/TLOの業務では、最終的に企業に技術供与をしてマネタイズするという形が多く取られます。具体的には、特許ライセンスや技術に関するの営業秘密のライセンス等ですね。その際、ではその技術の値段はいくらなのか?ということになりますので、Valuationの方法は身に着けておかねばなりません。このValuationについては、例えば知財価値評価といった分野がありますが、私としてはまずはM&Aで用いられる事業価値評価を学んでおくことをおススメします。用いられる手法の根幹部分は同じだからです。また、技術供与先の企業の経営層は、技術単体ではなくその先の事業全体を見ている訳ですから、知財に限ったValuation知識のみでは、視野が狭小となる可能性があります。それらの全体像を掴んだうえで、知財のValuationを学んでいきましょう。


特許庁(2017)知的財産の価値評価について(リンクはPDFに飛びます)
https://www.jpo.go.jp/news/kokusai/developing/training/textbook/document/index/Valuation_of_Intellectual_Property_JP.pdf

特許庁(2017)知的財産の価値評価について



知的財産について

 二度目になりますが、我々が支援する技術供与とは、具体的には特許ライセンスや技術に関する営業秘密のライセンスです。これらを滞りなく行うには、特許法をはじめとする産業財産権法についての理解が必要です。特に、特許ライセンスという話になれば、技術供与先からは弁理士や知財弁護士等、知的財産の専門家が登場します。この際、技術供与の契約条件を調整してネゴシエーションすることになるのですが、知財に関する基本的な知識や、国が法律を作った趣旨等を知らないと、上手くコミュニケーションが図れません(というか素人扱いされます)。同時に、業務内では外部メンバーと連携しながら特許取得等の実務を支援することもありますので、そういった場合にも必要な知識になります。産業財産権法を解説した書籍はたくさん出版されていますが、私は特許庁より出版されている「工業所有権法逐条解説」をおススメします。これは、弁理士試験に挑戦する受験生の必読書とされており、各法律の制度趣旨が事細かに記載されています。すべて読む必要はありませんが、実施権や差止請求といった、実務でよく論点になる箇所は読んでおくのがいいでしょう。なお、書籍版の他にも、特許庁から無料で全く同じものの電子版が発行されているので、手軽に読むことが出来ます。

工業所有権法(産業財産権法)逐条解説第22版(リンクはPDFに飛びます)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/kaisetu/kogyoshoyu/document/chikujokaisetsu22/all.pdf

特許庁HP



まとめ

 以上、今回はURA/TLOとして働くための推薦図書を紹介しました。この領域を専門とする方のみならず、たまたま大学をクライアントや参与とするような案件にアサインされたという方にもお役立て頂けたら嬉しいです。


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