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【第5回 聞いとKEY! / 大久保 竜一編】のらりくらり

徳島の本音を伝えるプロジェクト、Radio Journey Tokushima 『聞いとKEY!』第5回目のゲストは勝浦町にある大久保鍛冶屋の4代目、大久保竜一さん。

大久保鍛冶屋は、主に馬蹄をつくる鍛冶屋として大正時代に創業。かつては店の周辺にも他の鍛冶屋が軒を連ねていたが、今では徳島でも数少ない職人としてその技術を守っている。

大久保さんは、大久保鍛冶屋の4代目で高校卒業とともに実家の鍛冶屋に入り、3代目である父の喜正さんと一緒にさまざまな種類の包丁や鍬、ハサミなどを作っている。ここは農具などの修理にも対応していて、取材日も軽トラでおじいちゃんたちが鍬を携えて足を運んでいた。春の畑に向け、この時期は農具の修理が頻繁に依頼されるそう。

個人的な話になるが、僕(神先)と竜一さんとの出会いは上勝で開催されたとある音楽イベント。「とても上手なギタリストがいるな」と気になっていたのが彼だった。それがきっかけで、県内のイベントなどでも顔を合わせるようになり、神山の店にも食べに来てくれて、包丁も何本か作っていただいた。その時はちょうど出羽島で仕事をしていた時期で出刃が欲しかった時期だったのを覚えている。

今回、大久保さんへの取材をお願いした経緯はこうだ。前回の遠近の東尾さんの取材後に、「ものづくりをしている人に話を聞いてみたい」とメンバーから提案があった。そこで大久保さんに白羽の矢が立った。

ずっと同じ工房の中で、ものを作り続けること。そこにはどんな思いや忍耐が潜んでいるのだろうか。また、職人としての技術の捉え方や高め方について、聞いてみたいと期待を膨らませて収録に挑んだ。当日は、趣味のギターや、暮らしのバランスについても話題は及んだ。

さらに、昔、僕が屋台やイタリアンカフェをやっていた頃に、同じような形で活動されていたカフェオーナーの木島さんとも話す時間を持てた。木島さんは、大久保さんと同じ勝浦町で商工会などで一緒に活動されている。

ラジオはこちら↓
【第5回 聞いとKEY! / 大久保 竜一編】
のらりくらり

〜ハイライト〜

1.「辞めない努力をしてますね。ピック1枚でも買うとか。」(0:05:01~)
2.「楽しまないと決めているわけではなくて、作ってて『楽しい』とかって思うと、かなり隙がある状態かなと。」(00:13:50~)
3.「(仕事している時の頭の中は)オムレツ作ってる感じに近いですね。」(00:14:58~)
4.「良いことを続けると、悪い方に入る時があるんですよ。いきすぎてしまって。」(00:16:52~)
5.「楽器弾けないほど仕事してると、(調子が)あんまりよくない。リセットしないと考えても分からないので。」(00:18:05~)
6.「 道具は残っちゃうんです。さらに残りやすいものを作ろうとしているので。」(00:21:20〜)
7. 「何でダメだったか何で良かったかっていうのを、腑に落ちるまで掘ってます。」(00:23:18~)

今回の旅の記録

いつも賑やかなRJTチームだけど、年度末でタイミングが合わず最小チームで出動!
今回のご飯はお弁当を持っていくことになり、まずはおにぎりを握る。
ちょっと握りすぎた…
WEEK神山から勝浦町の工房までは車で30分くらいと勝手に思っていたところ、ナビで50分と表示されて少し焦る(※遅れてすみません…)
よく見る『丸勝』の看板。大久保鍛冶屋に到着 !
中では竜一さんとお父さんがそれぞれの窯で作業。これは農具の修理。 鍛冶仕事は無造作に鉄をたたくイメージだったが、1回1回場所を見て丁寧に打っていた。とても洗練された印象。
ひと段落したところで、包丁の試し切りをさせていただく。やっぱり切れ味が最高!
ここで収録スタート。
仕事への価値観など、普段考えていることをぐっと深く掘り下げていく。
工房横のショップでは、包丁のことなどについて伺った。
火打石と鋼で火おこしをしている。
お昼は近くの勝浦流イタリアンカフェ 「Salotto」にて。作ってきたお弁当を食べる。
木島さんおすすめの「おしるこラテ」。


木島さん交えてのトーク。久々の再会で楽しい時間。
「いつか田舎でお店がしたい」という思いを持ち、2010年の秋に東京から勝浦町の地域おこし協力隊として着任した木島さん。 協力隊の任期が終わる直前にSalottoをオープン。
「2月でお店を一度閉めるんです。まだ場所は決まってないんですが移転しようと思ってて。」
移転先を決めずにお店を閉めるという決断に一同驚き。
勝浦町のひな祭りとさくら祭りの開催に合わせ、当面は出店として活動を継続する予定だ。
2人ともありがとうございました!
帰って記事作りの作戦会議。とても充実した取材となった。

収録を終えて / 大久保竜一さんより

普段、人にあまり会えない仕事なので、いろんな人と会えて楽しかったです。自分の考えていることや、人の意見が聞けて交流できて、良い時間になりました。最近はどちらかというと自分より若い人たちの意見に興味があって、話を聞きたいと思っていたタイミングだったのもちょうどよかった。これからも積極的に耳を傾けていきたいですね。若い人へのメッセージを贈るとしたら、「あまり年上の意見を気にしない方がいい」ということかな。時代の中心は若い人なので、気兼ねせず自由に動いて欲しいなと!今回は、ありがとうございました。

収録を終えて / 参加メンバーより

神先岳史

今回は(いつもだけど)とても楽しみにしていた取材で、竜一さんの考えるモノづくりや職人としての在り方にすごく興味をもっていました。仕事や技術の深め方の話はほんとに楽しくて、やはりそうだよなーと思いながら、でもそれを20年以上やり続けていること、日々の時間の積み重ねの濃度に、ただただ感服するばかりです。
趣味のギターと暮らし、仕事ととてもバランスよくされているようで、でもどれもしっかりと手を抜かず、向き合っている姿はかっこいいですね。

面白いところは、すごい職人なのにそこ(鍛冶)に執着してないところで、客観的に現状を捉えられているところ。
地に足がついているのに、逆にとても軽やかに動けるところが強いなと思いました。

後半に伺ったサロットの木島さんとも久々の再会で、ここ何年かのことや勝浦という地域性の話など、楽しかったです。来月に店を移転するけど移転場所が決まってない話は面白すぎました。

RJTも5回目となり、今回は少数の取材となりましたが、少ない分、個人個人で内容の濃い話ができたように感じます。アシスタントで来てくれたチカちゃん、ありがとうございました!

谷亜央唯

鍛冶場に入らせてもらった時、その場の雰囲気に圧倒された。(なんだか居てはいけないような気がして、ソワソワした。)収録で「隙がある状態にしないために楽しさを削いでいる」という話を聞いて納得した。鍛冶場に入った時のあの感覚は大久保さんが目の前の道具に隙なく向き合う瞬間を全身で感じとったからだと思う。良かったこと・悪かったこと、できたこと・できなかったこと、出来上がって終わりではなく、ひとつひとつを丁寧に拾い上げて「なんで?」を繰り返す。日常の小さな変化を見過ごさず、自分を深めていきたいと思った。
少し話は変わり、ここまで(第5回目まで)の収録を終えて、神山、上勝、佐那河内、勝浦がとても近く感じるようになった。今回の収録の帰り道、そんな話をすると神先さんが「狙い通りですね(にやり)」と一言。同じ県内なのにどこも遠くてなかなか行けないところだと勝手に思い込んでいたけど、自分がいる場所と県内の他の地域との距離がぐっと縮まり、ボーダレスになっていくような感覚。今度は徳島のどの地域に行くのか、誰に会えるのか、これから自分にどんな変化があるのか。とても楽しみだ。

中山知華
なにか上手くいったとき、上手くいかなかったとき、それぞれについて自分はどれくらいちゃんと向き合っているかな、、、。上手くいったことを偶然にしてしまわないように、上手くいかなかったことを見える化して前に進めるように、ひとつひとつ(今は特に写真に対して)に向き合える人になりたいと思いました。今回初めて参加させていただいて、私自身の価値観というものはまだまだ完成されていないということに気づきました。これから自分にできること、成したいことが見えてくるように、様々な人との出会いや繋がりを大切にしていきたいです。

Credit

direction & writing / 神先岳史

photo & editing / 谷亜央唯

photo / 中山知華

高橋利明

髙木晴香

岑田安沙美

齋藤千夏

清水 杏咲

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