零細起業の経営実務(5)起業の練習に最適なもの
起業したい、するかもしれない研究者さんのために、リーゾの経験談をお伝えしています。
起業を考えていても、いきなりは難しい。今の仕事を続けながら練習する方法はないものか?と言う方に、お勧めしたい方法があります。
それは、「ネットオークション」(以下、ネトオク、と略します)。
意外と思われそうですが、ネトオクでの売買経験を積むことで、小さな商売の基本事項がしっかりトレーニングできるんです。
ネトオクで何が学べるのか?具体的に言いますと・・・
・商品の手入れの仕方
同じものでも、少し手入れをして見栄えをよくするだけで高く売れるようになります。また、家電などなら使える状態であることを確認したり、電池を入れ替えるだけで、高く売れる=喜んでもらえることが実感できます。
・ニッチビジネスの立ち上げ方
自宅にある、思ってもいなかった不要品が、意外にもコレクターズアイテムであり、高額で取引されていることもあります。
ものの価値というのは相対的なもので、ごく少数でも「欲しい!」と思うお客様がいれば商売が成り立つことがわかります。
・商品説明のコツ
買い手にとって必要な情報とは何か、知りたいこと、聞きたいこと、気にすることは何かを知り、簡潔かつ正確で、不快感を与えない商品説明のコツを習得することができます。
・写真の撮り方
見栄えは写真の撮り方でもかなり変わります。白い紙や布で簡易スタジオを作ったり、花を添えて撮影したり。見栄えだけでなく、商品の特徴をきちんと伝えることが重要なことが、経験的に身につきます。
・出品単位の決め方、値段のつけ方
買い手として買いやすい数量や値段ってありますよね。例えば服ならサイズ別、季節別に分けると売れやすくなったり。最初の入札が入ると売れやすいので、思い切って1円スタートにしてみたり(その結果失敗したり)。ビジネス上、極めて重要な値段のつけ方を、低リスクで練習できる得がたい機会です。
・顧客とのやりとりの仕方
落札者との連絡は意外とアナログで、文章(メール)の交換が基本。お客様を不安にさせない連絡のタイミングや頻度も学べます。出品中の質問回答は、お客様候補(見込み客)への接客のの練習になります。もちろん、正しい敬語の使い方や、商売上の決まり文句も身につきます。
・包装・梱包・発送の仕方
商品をどう送るか?は、リアルなビジネスでも問題になることです。送料だけでなく、安全性や扱いの丁寧さ、再配達時の受け取りやすさも考慮する必要があります。梱包の仕方にもノウハウがあり、低コストで安全かつ感じの悪くない梱包の仕方が経験的に学べます。
・利益の出し方
売上と経費を記録しておく練習になります。
趣味や廃品処理と思えば厳密に考えなくて良いのですが、梱包材の実費や送料、それにサイトの利用料を差し引くと、意外と残るお金はわずかだったりします。
ざっと考えただけでもこんなにありますが、実は最も重要なことはほかにあります。実は、ネトオクで物を買うお客様というのは、金額の差異や、説明になかった商品の傷などを、非常に良く見ていることが多く、売る側としては細心の注意を払って丁寧にお取引する必要があります。
つまり、売り手としては、『最高レベルに厳しいお客様を満足させる練習になる』、というわけなんですね。
ネトオクでクレームの予防と、万が一の場合に誠意ある対応をする練習をしておくことは、実際に起業したときに絶対に役に立ちます。
以下蛇足ですが・・・
実際に商売を始めてみると実感することなのですが、会社全体の売上規模の大小に関らず(たぶん)、売上というものは、突き詰めれば「ひとりひとりのお客様との間の、小さなお取引の積み重ね」でしか形成できないものです。
当たり前のことなのですが、ビジネスプラン立案の段階など「顧客」という言葉で括って考えていると、そのことを忘れがちになるものです。
ネトオクでも、出品時にはいかに手間を掛けずに利益を出せるかと考えていても、落札者(お客様)が決まった瞬間に、「この人に絶対満足していただきたい!」という気持ちが湧き出てきて、少しくらいの面倒や不利益は全然平気になってしまう自分に気づくことになると思います(そうならない人には、商売は向かないかもしれません)。
落札者の満足は、落札者がつける出品者の「評価」に反映されます。買う立場では、入札するかどうかの重要な判断材料になるもので、リアルなビジネスでは「評判」「クチコミ」に当たるものです。
ひとつひとつ、お客様の満足を積み重ねていくことで、宣伝効果が上がって事業が少しずつ拡大していくことを体感できる点も、起業の練習としてお勧めです。
実は、ずいぶん前になりますが、「ネットオークションでプチ起業」と題した主婦向けのミニセミナーを行いました。
そのときの告知ブログ記事がこちらです。
(2015年5月7日配信のすいすい通信より)
「すいすい通信」
https://rizo.co.jp/merumaga.html