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零細起業の経営実務(6)「創業融資」について

起業したい、するかもしれない研究者さんのために、リーゾの経験談をお伝えしています。今回は、起業時に必要なお金の調達法のひとつである「創業
融資」についてです。

誤解のないように最初にお断りしますと、借金は、できればしないほうがよいですし、無借金経営ができればそれに越したことはありません。個人的には借金は大嫌いで、クレジットカードも一括払いしかしたことがない人間です。なので積極的に借金をお勧めするわけではありませんので念のため・・・。

創業融資は、日本政策金融公庫(昔の国民生活金融公庫)が、創業前・直後で他の銀行が融資しにくい人や事業を対象とする融資制度です。借りようと思う場合には、まず担当の支店(つくばの場合は土浦支店)に融資申込書を提出しに行きます。その後、面談を行い、審査を受けて、通れば融資実行、という流れです。

つまり、日本政策金融公庫といえども、誰にでも貸してくれるわけではなく、ちゃんと審査に通らないとダメなんです。
(・・・当たり前といえば当たり前ですが、借金するかどうかは自分が決心するだけの問題だと思っていた世間知らずの私は、かなり驚きました)

自慢じゃないですが、リーゾは創業融資を受けて完済するところまで、一通り終わっています。その過程で、経験してわかったことをお伝えしたいと思います。

(1)融資申込書(事業計画書)は、起業前に作成するのは難しい!
→「うそっ?」と思いませんか? 事業の内容や販売先、原価、売上予想などは、実際に事業を始めてからでないとわからないのに、それを書かないと融資申込書が完成しないんです(『創業』融資なのに!)。
なので、これから経験される方は、事業を実際に始めてしばらくしてから申し込むと良いと思います。

(2)融資してもらえる金額は、「(予想される)運転資金の3か月分」が上限である!
→最初、リーゾは給与を抑えていたので、月あたりの運転資金の金額もわずかで、借りられる金額も連動してしまい、希望の額より少なめになりました。借りたい金額が決まっているなら、それに合わせて自分の給与金額を調整して、運転資金を多めに申告するとよいかもしれません。

(3)融資できるかどうかの審査では、書類の中身よりも、経営者の人物像が重要!
→実は、一番見られるのは、「起業する事業分野での経験年数」(リーゾの場合は研究歴)で、これが長いほど成功すると考えてもらえるようです。なお、商売をやった経験が皆無であることは、意外にも全く気にされませんでした。
審査官はかなりフレンドリーに、いろいろな雑談を仕掛けてきます。深読みすれば、経営者に欠かせないコミュニケーション力や一般常識、好感度なども見られているのではないか?と思います。

(4)代表者個人の資産が結構重要!
→「お金を借りるのは会社なのにどうして?プライバシーの侵害では?」と思うほど、個人の資産については精査されます。考えてみれば当然のことですが。
預金通帳は持っているだけ全部持参しましたが、繰り越した通帳もあるとよさそうでした。過去に定期的に給与を得ていて、その中から貯めた貯金があって(親からもらったお金などはダメ)、浪費癖がなく(カードの引き落としなどを見てる?)、いざというときには個人的に返せる人であることを分かってもらうのが肝腎なようです。
つまり、「本当にお金がなくて、困った状態になったとき」には、貸してもらえません。『余裕のあるときにこそ、借りろ』も重要なポイントです。

(5)借りられたことが実績になる!
→お金を借りるには審査を通らないとダメ、ということは、借りることができた人は審査を通った=信用がある、ということです。借りたお金をきちんと返済できた、となればさらに大きな信用になり、次の融資はずっとスムーズに、もっと大きな金額で受けられるようになるようです。
それから銀行というのは、「他行が貸しているところに貸したい」もののようで、一箇所から借りていると、他の銀行からも借りやすくなります(でも、利率が低い方から借り直して、利率が高い方を返済する、というのはあからさまにやってはいけないらしいです)。

(6)創業2年目からは、「自治金融」も利用できる
→つくば市の場合ですが、起業して1年経ったら、「自治金融」を利用できます。利子のほとんどを市が負担してくれるので、ほぼ無利子で借りることができるため、リーゾも積極的に活用しています。借りる名目としては、運転資金の場合、「手元資金を厚くしておきたい」で構わないようです。確かに、現預金がしっかりあると、余計なストレスを感じずに経営に注力できる効果がありますし、借りていれば銀行との付き合いが続き、いろいろな情報が入るメリットもあります。いつでも返せる範囲の金額を借りるのであれば、リスクもあまりありません。

・・・と、ここまで書いておいて何ですが、やはり融資を前提として起業するのはお勧めしません。
資本はあくまでも自力で用意すべきで、融資は潤滑油程度に考え、利子補給などの有利な公的制度を調べて、あくまでも余裕資金として賢く活用するのがよいと思います。

以上、創業時の融資について、リーゾの経験と私見をまとめました。
ご参考になれば幸いです!

日本政策金融公庫の「新創業融資制度」について
http://www.jfc.go.jp/n/finance/search/04_shinsogyo_m.html

(2015年6月3日配信のすいすい通信より)

「すいすい通信」
https://rizo.co.jp/merumaga.html

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