見出し画像

零細起業の経営実務(2)会社のつくりかた

起業する、というと、イコール「会社を作る」というイメージがあるかもしれません。実際には、会社を作っただけでは起業したことにはならないのですが、普通の研究者さんにとってはまず会社を設立すること自体が未知の世界、めちゃめちゃハードルが高く感じることと思います。

そこで今回は、会社を作る流れについてご紹介したいと思います。
その前に、事業を始めるには「個人事業」と「会社設立」の2通りがあり、会社設立には「株式会社」と「合同会社(LLP)」があります。
ここではリーゾの経験に基づき「株式会社」の設立についてお話しします。
  
会社を作りたい人(発起人)は、まず「定款(ていかん)」を作ります。
定款とは、会社の名前、事業目的、本店の所在地など、「会社の組織や活動の内容」をまとめた書類で、会社にとっての憲法のようなものになります。

<定款に記載する主な内容>
 会社の名前:とりあえずまず決めなくてはならないのはこれです。事業内容をイメージできる名前が理想ですが、何をやってるかよくわからない名前であれば事業を自由に展開できるメリットがあります(リーゾが良例?)。他に同じ名前の会社があっても構いません。
 本店の所在地:自宅住所も可ですが、リーゾの場合は家賃2万円台のレンタルオフィスを借りてその住所を使い、開業時に移転登記しました。
 役員:最低限、代表取締役1名で会社は作れます。
 監査役:とりあえずいなくても大丈夫です。
 資本金:設立だけなら1円でできますが、現実的には100万円〜999万円が良いと思います(リーゾは200万円でした)。
 決算日:3月末が一般的です(税理士を頼むならずらした方がいいという話もあります)

雛形はネット上にたくさん落ちているので、それを自分の会社用に書き換えていけば簡単です。

簡単なのですが、注意すべきは「事業目的」です。
実際に事業を始めてみると、予想していなかった展開がいろいろあります。定款に書いた事業目的に縛られて事業のチャンスを逃してしまってはもったいないことです。
とはいえ、可能性のあることを全部盛り込もうとすると、いかにも怪しい会社になってしまいます。

これを解決する魔法の文言が、『上記事業に関連する一切の事業』。
コアになる事業目的をいくつか記入したうえで、最後の項目にこれをいれておけば、(想定した事業に何らかのつながりがある事業であれば)大概問題なくできるようになります。

さて、定款作成と並行して進めておきたいのが、代表者印を作ることと、自分の印鑑証明を準備しておくこと、それと設立時資本金の振込みです。
会社のハンコは、「代表者印(実印)」「銀行印」「角印」の3点セットで、ネット通販で数千円〜で作れます。
印鑑証明は、発起人=代表者個人のものが必要になるので、市役所でもらっておきます。
資本金については、まだ会社の銀行口座は作れませんので、個人でカラの口座を作り、自分から自分への振込手続をしたうえで通帳のコピーを取っておきます(なんとも不思議な感じですが)。

定款ができたら、「認証」をしてもらいます。
実は、リーゾで自力でやれなかった数少ない段階のひとつがこの「認証」です。
この部分だけは、行政書士に代行をお願いするのが現実的です。「電子認証」なら印紙代4万円が不要なうえに、手数料も数千円〜と安く済むのでお勧めです。認証だけの依頼でも、素人が作った定款だと言えば、最低限のチェックくらいはしてくれるでしょう。

最後に法務局に行って登記手続きです。
提出する書類は
(1)定款(認証済み)             
(2)発起人決議書           
(3)設立時取締役の就任承諾書      
(4)印鑑証明書             
(5)払込みがあったことを証する書面(通帳のコピーを添付)   
(6)資本金の額の計上に関する証明書   
です。(2)(3)(5)(6)は雛形がありますから、ワードで作って印刷してハンコを押してできあがり。

会社登記には15万円分の収入印紙が必要なので、現金15万円も忘れずに持って法務局(※)へ。

法務局に着いたら、提出前にお勧めしたいひと手間があります。
窓口で、「相談お願いします」と声を掛け、相談申込書を書いて出して待っていると、ブースに案内してもらえます。法務局の人が応対してくれるので、提出書類を全部見せて大丈夫かどうか確認してもらいましょう。万が一にもミスがあってやり直しになると面倒ですから、このひと手間はぜひ惜しまずに。

めでたくオーケーが出たら、収入印紙を購入して、窓口に提出します。
だいたい1〜2週間で登記が完了します。設立日は提出日になりますから、縁起を担ぐ場合は日柄を見て提出したらよいと思います。

問題がなければ何も連絡はないので、そろそろかなという所で登記簿謄本を取りに行きます。すんなり発行されたら登記完了のしるし。
我が子、ならぬ我が会社の誕生です。
感無量・・・ですが、感傷に浸っている暇はありません。

このとき、登記簿謄本は、まとめて10部くらい取っておきましょう。
なぜかというと、あっちこっちで、提出の必要があるからです。

というわけで、会社設立直後に必要ないろいろな作業については、次号にて!

ほぼ6年前、何も分からない素人がよくやれたものです・・・。
面倒だからお金で解決する、というのもひとつの道ではありますが、できるだけ自力で行ってみることで、得られるものは意外と大きいです(お金の節約だけではありません)。

(※ リーゾ設立当時は、つくば市内の法務局出張所で会社登記ができましたが、現在は不動産関連登記のみで会社登記はできなくなっています)

(2015年2月4日配信のすいすい通信より)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?