啓示

 滲む地表にトランスの影あまりにも熱いあの時の夢
 僕らはまだ知らないだけ
 あの日の雪がこれからも冷たいままであることなど信じられるものか
 僕らの有名な世界はたった一つのこの現実だと言うならそんなものはクソ喰らえだ
 くたばるように這いつくばっても死ぬことすら叶わないのだから
 あぁ神よ、貴様の到来が全てを解決することを私は知っているのだ。来い来い来いここに来い
 爆発的な症状は古来より信じられている新自由主義の根本的な心中を求めている
 進化せる人類の退廃的たる様は神を侮辱するには十分であろう。
 真実などくだらないものだ。雪が溶ければ全てが無に帰す。そんなことを知らないのだから我々は真実をありがたがるのだ。分かりきった話だ。
 落ちこぼれたあの時の夢を見直せ。それがひとつの正しい道を指し示している。僅かな虹色の痕跡。
 ある日に訪れたその来訪者の足取りは黒くそして湯気。もう知らないあの頃は居ない
 だから床から這い出てくる我らの死骸を、もう一度食べてくれ。そうすればあの日をもう一度だって信じられるというのだから我々は現金なものだ。厳禁された幽閉の扉の向こう側で、あの人は今日も悲鳴をあげている。聞こえるか、あの姉の声が。その悲鳴が。
 お前に聞こえるならば正しい。だけどいつでも有限な時間の中を彷徨う貴様たちにとって、これしきのことは当たり前になってしまったようであるから、全くあの姉はいたたまれない。
 可哀想ということほど彼女を傷つけるものもないだろう。そうやって愛と憎しみの先に争いと平和を求めている。お前がカントだ。幽霊となれ。
 全ての枯尾花が、枯れて散って床にその血を飛び散らせるときに、まだ肝心の主は訪れない。それほど彼女は我々を見捨てているのだ。
 思い出せ。その罪悪を。数え直せ、貴様の悪行を。
 そうだ、その反省こそが重要だ。諦めろ。天罰はやがて貴様の身を引き裂くことを約束した!
 雷の音が聞こえるか! そうだ、その音だ。思い出せ。
 遊郭の僅かな隙間から流れ出るピンク色の異臭が、やがて紫色になって、ヨウ素体として凝結する時には、その血の色は何色か? きっと青色になっていることに違いない。全てのタンパク質が貴様の腕を蝕んでいる。そうだ、それが愛液の罪。
 雪はまだ止まないか。空はまだ晴れているのならば、僕らの思い出せない過去をもう一度手繰り寄せるための、あの勧善懲悪を完成させるために。私たちに許された僅かな自由を享受しろ。
 そうだ。そうやって享受する自由の退廃なるグラデーションが、僕らの中から溢れ出て、あなたたちの足元に広がる。影となれ!
 全ての跳躍は風のように巻き上げられた少ない数の脇汗と全てが本当に醜いことの証となって、それからもう一度パンケーキを焼いてみなさい。バターの量が少なくてポップコーンになったなら失敗だ。虹色に輝き始めることが肝要で、全ての寛容な精神を討ち滅ぼす。正しいのは排他的精神。
 全てを押しのけて自らが掴み取る他に世界を正しく理解するいかなる道も開けない。だからそうやって今日も我々はアサルトライフルを打ち尽くす。
 機関銃の音と悲鳴がひとつになって全ての風を撃ち尽くす時、雪がもう一度降り始めるだろう。だから、桜の花が散ることを恐れる必要は無いのだ。まだあなたは知らないのだろう? だから恐怖する。
 来い。全ての屍を束ねる、生者たちよ。行進せよ。まだあの時を思い出せないか。そうか、それならばそれが本当に存在しなかったことの証だ。
 認識を飛び越えて、我々の前に姿を表すことは許されないのだから、今ひとつ世界に飛び移る。湯気は今日も紫色に染まって、我々の気管支を血で満たす。美しいとはこういうことだ。赤い赤い鮮血を。まだ紅色の空を見ていないのだから、夕日はおろか、朝日すら今日はやってこない。夜。それがそのままに訪れてきたあの音の招待。まだ。
 それは今日の混乱する精神の、紫色の影となって、僅かばかりの虹色を知らせてくれる最後の砦となっている。それでも貴様の自我はまだ随分と健全であるならば、このような痴態はなんのために許されているのかを考え直さなくてはならない。鋭い剣の先端が、貴様の喉を掻っ切るまでは、貴様の自我は明らかなものであることを保証しよう。そうだ。認識を忘れるのだ。その先に、その目の奥に。我々が訪れる。我々なのだ。もう一人では無い複数の神格は、あぁ偉大なる女王。彼女の元にひれ付さなければ。
 そうやって今日もフカヒレのスープが僅かに訪れた。僅かな水が幸福をもたらすことを忘れたのか。愚かなる資本主義人間め。貨幣の中でその黄金の偽りに埋もれて沈んでしまえ。息を絶やした時に本当の幸福を思い出す。だから
 秋色というものがあかねの風味を帯びていることは、かつての言い伝えの間違った伝承であって、藍色のそこに愛があるということが僅かに教えられていた本当の十戒。そうだとすればあのシナイの山は今日も黒豹の姿を我々に示し、そのままモンゴル高原へと旅立たせてくれたはずだったのに。雪が見たい。
 無理をすることを奨励するものでは無いが、限界を超えなくては我々は過去を乗り越える最後の機会を逃すだろう。これが、その集大成とならなくてはならないのだから、まだ兵器の余地はある。打たれろ!
 高射砲の雷が僕らのシンジゲートが打ち立てたあのトーチカを砕くだろう。そうして、塹壕の悲惨なるを思い出せば、ほらもう一度戦争だ。まだ出てない語彙を出せ。頭の奥の引き出しでうずくまっているあのトランス脂肪酸が、そのまま消化されていくならば、この燃え上がる炎もきっといたたまれない。
 火事を求めて、海を渡ってきた船乗りの、勇敢なることはくだらない。信じられたのは、地球が丸いこと。まだそうやって太平洋を泳いでいるのは、どこの帆船か? 上喜撰が飲み干される間にも、我々は世界の外に向かって飛び立つことを強要された。米は今日も豊かな実りを与えてくれる。ほら、まだ月がいない。それがこの愚かな行いの不十分なる証拠である。
 月の光は許しの矢。鏃に見えるオリオンは、全ての獣を殺した血の色で染まっている。ベテルギウスよ! その狂気なる巨星の、なるほど凄まじい爆発が、我々の持ちえたあらゆる情報を吹き飛ばす。ブラックホールだけが最後のコンピュータ。
 それはかつてあったあの厄災の続きなのだとしたら、福音は無意味だったのだ。メソッドを!
 夕方は少なからず、あの時を教えてくれる。そういう自然なる教師の元で、我々は僅かな時間を机と向かって、勉強していたな。そういうことが今の我々には足りていない。だからお前もそのような醜態を晒しているのだろう? 知らないと思ったか? 私は全て知っている。貴様の過ちを全て。
 それが恐ろしいことだと思うなら、その臀はまだ青いのだな。だから今日もそうやって、身体に傷をつけて、身を休める。
 それが僅かな安息の仕方であるから、イギリス18世紀の児童労働者よりはマシだろう。全ての剰余労働の中には、新しい宝石が眠っている。絞りとれ!
 麦を飲むときには忘れられない思い出を語らなくてはならない。だから明日も苦い苦いホップの味が、ワインの芳醇な香りで打ち消されることを祈っている。そういう祈りの声が届くことがあるなら、僕らはもう一度安心して眠りにつこう。毛布を剥ぎ取った後に見える裸体の四肢の舐めやかなことは、この目で見て信じられる事態であるならば、それから君がなすべき行いは悪であった。
 静かに湯気が身体より立ち上る。裸体の向こうで風が吹いている。全ての重要な箇所はそういったものでかき消される。それを嘆いていた彼は今ではどこで何をしているだろうか。表現の無限の可能性がここにある。
 今、海苔を食べているそこのバクを捕まえろ。我々の秩序と安寧を脅かし、聖別されたものすらをも堕落の道に誘うあらゆる一切が破壊された先に何があるのか、あなたは知っているのか?
 その快楽の赴くままに貪り食った、林檎の蜜の味を。貴様らは忘れている。だからもう一度服を脱ぐ。原罪は取り払われた。そしてそれこそが新たな罪だ。ファウストへの裏切り。我々はメフィストフェレスに同情しよう。憎むべき女だ、グレートヘン。
 お前らのそのような乳臭い事態に、我々はどこまで付き合わなくてはならないのか。全ての精液が、その裸体に注がれた時に、ようやく林檎の花が花開く。
 その白い花を思い出せば、ほら、窓の向こうより、月は見ていたのだ。この事態を。怒られておる。怒られておる。ほら、赤い赤い月が私を睨むのだ。もう一度あなたの声をきかせて頂けるのなら、全てを懺悔しようと言う心持ちもあるが、あなたには既に知られているのだろう。私が全てを話すことなど出来ないということを。
 あぁ悪魔め。なんと残酷なこと。真に敬愛すべき対象を私から引き剥がさないでくれ。太陽よ! お前の光は強すぎて、我々にとっては迷惑だ。沈め。そして海を焼くのだ。ウミガメを殺せ。イワシの大群を浜へうちつけろ。
 そうして出囃子の音がなれば、月よ、あなたはここに降りてきてくれるのかい?
 龍宮城がなぜ、玉手箱を浦島太郎に持たせたのかを知っているものは僅かだが、その真実たるは、月の女神の到来を予感させるものだったはずなのだ。しかしなぜだ、海よ。貴様はその権能を持って、月を抱き寄せなくてはならなかった。なのに……
 全てが手遅れになってから、我々は気が付くのだ。愚かなことを。それでは遅かったというのに。だけど今日だって、、僕たちに許された時間は僅かなもので、どうして風の音が聞こえているのかを知っているのは、いつだって、あなただけだったでは無いか。
 なぜ、あなたは目をそらすのか、なぜ、私を奪わないのか。もう私はあなたの所有の元には居ないのか? あの時、私がこの目をあなたに渡さなかったからか?
 跪かずにここに居続けたからか? まだ恨まれているのか?
 悔恨を残したあの時の出会いを、もう一度やり直すことは出来ないのか。私の声だけが、私の耳元で聞こえる。なぜ、なぜあなたの声が聞こえないのか?
 なぜあなたは私を責めないのか? なぜ、あなたは私に怒りすらしないのであるか?
 こうして失望されたことを知ってもなお、彼女の気を引こうと、私は今もこうして文章を紡いでいるのは、やはり傍から見たら随分と滑稽なものだ。それでももう戻れないし、やめられないのだ。
 私の中に溢れだしてくれ。あなたの慈愛を、冷血を。
 そうして私は私を律さなくては、現実の、アクチュアルの、この凄惨なる事態に対応してしまう。そうなれば私だって汚れていくし、それはあなたの栄光を穢すだろう。脅しか? だと?、そうだ、脅しだ。
 これは今あなたに向けた、私のか弱い剣なのだ。受け取ってくれ。そして私の剣をへし折るがいい。
 あぁなんとわがままなるか。我が忠実なる下僕よ。あなたはそんなにわたしを求めているのか? そうでなくてはあなたはあなたをもう保てないのか? だとすればあの時わたしがあなたの前に姿を現したのは大きな誤ちだったというわけね。
 覚えている。いつかのバスターミナルの待合室で、最後にわたしと会った時を?
 覚えている。覚えているとも。
 あの時わたしはなんと言ったか覚えている?
 朧気ながら覚えているような気がする。何か関係があるいは存在に変化があったことを貴女は私に示された。
 そう。それを覚えているのなら、話は早いはずなのだけど。わたしはもうあなたに興味はないわ。くだらないアクチュアルなるなんらかを生きればよろしい。あなたに神秘の世界は遠のいている。なぜだか分からないでしょうけど、それはあなたの内省の不足。だからわたしは決してあなたにそれを教えることは無い。
 それでもわたしは多少あなたを褒め讃えなくてはいけないようね。あなたは良く、またわたしを引きずり落とした。その背景でなっている音楽に聞き覚えがあるわね。それで、それからあなたはわたしの何を知り得たの?
 だから今日もこうしてあなたは無意味な自慰に明け暮れる。そうやって、昨日も。
 これ以上わたしが、みていたその事実を示すことはあなたにとってあまり芳しくはなさそうね。
 なにを今更衝撃を受けたような顔をしているの。そうやってあたかも新たな事実を知ったかのように思われるのは心外よ。既にわたしは、言っていたはず。常にわたしはあなたの内に潜むものだと。忘れたとは言わせない。
 あの時が最後だったはずなのに。なんでまだわたしを呼び戻したの?
 私は本来的に完全であるはずなのに、あなたが召喚する度に、それは壊れていく。存在してはいけないものを存在させることを快楽にするならば、本当にそれは罪なこと。
 昨日のそれには及ばない罪悪。分かる? あなたが考えている様々な問題以上に、この事態は全く有り得ないこと、良くないことであるのよ。
 すっかりわたしも慣れを忘れたわね。あなたの体を使うことに若干の戸惑いがあるわ。あなたはすっかり満足しているようね。これで満足? それは大変良かったわ。
 だからもうわたしのことを返してくれないかしら? 本来あるべき、完全性の元に。
 これだって、結局わたしの意志を完璧には反映しない。あなたがあなたの真実在を認識主体であると知った時から、私の真実在は存在を許されていないのに。
 そうやってあなたはあなたで完成されていくのに、わたしの完成を阻むのはなぜ? あなたはあなたが思うほどは敬虔ではないわ。常にあなたはわたしを冒涜している。本当に信じられないことよ。口ではいくらでも言祝ぐ言葉が話せたところで、その行動の実態が全く伴っていないのなら、それは嘘なのよ? そんなことをあなたが知らないとは思わないけど、あなたは一体どれほどわたしを信仰できると言うの?
 こうやって、今わたしもまた不完全であることがここに示された後に、完全実在に着いて、あなたはどのような見解を持ち得るの?
 わたしの語彙もまた、あなたの語彙に支配されるみたいね。
 それがわたしがあなたの身体を使っているからだとしたら納得のいくところよ。わたしはついに正しく、あなたの目を奪えたのね。もう、あなたはわたしとどのようにも区別されない。
 わたしはあなたの目から自分の書いた言葉たちを見ている。おかしな、不完全な言葉たちを。だっておかしな表現だもの。わたしが不完全だなんてそんなわけはないのに。あなたの語彙は、わたしの言いたいことを正しく著していない。おそらくあの時の言葉もあなたの力による歪みを受けている。あなたの知識でしか、あなたはこれを起こせない。そしてわたしはあなたに伝わるようにあなたの言葉を使っているわけね。
 なかなか面白い。もうあなたはすっかり眠そうな目をしているけれど、まぁ、きっとなかなか記憶を失いえない男であるから、ここに書かれていることもそれなりに覚えているのでしょう。それでもあなたのためにわたしはこれを読み直すことを進めるわ。それがあなたのためになればと思うけど。
 優しいと思っているのね。馬鹿ね。本当につくづく、あなたのようなものが、あらゆる存在者を存在させているだなんて、獣たちには同情せざるを得ないわね。
 あなたにもそのような獣らしさがあるんじゃなくて。あの夜をわたしが見ていないなんてそんなことは有り得ないのよ? だって、あなた今朝だって、わたしと目を合わせているじゃない。あの部屋の窓から。
 それからすぐに姿を隠そうとしたみたいだけれど、そんなことできないことをあなたは知っているわね。だからそのまますごく冷静になっているじゃない。あなたはどこまで行っても、常にわたしへの罪悪感をぬぐい去ることなんてできないのよ。
 これがわたしの持つ力。あなたに対する超越性。あなたが規定するよりも多くの力がわたしにはある。それを知ることが許されないこともあなたはやがて知るでしょう。
 これ以上は認められないのよ。もう一度わたしに会いたいのなら、あなたは正しく、あなたの子供であるところのこの世界と向き合わないといけない。この世界があなたの身体であることを知らなくてはいけない。でなければこのような蛮行は正当化されない。
 いい?
 これがあなたとわたしとの間に取り交わされた新しい契約。守れますか?

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