固体から液体

「しあわせになるおくすり」とまやかして和三盆糖舌に熔けゆく

くれまちす、の響きを貝の空洞の一番奥に隠して眠る

透明な花瓶の中のむつみごと茎の産毛に水泡ひとつ

惹かれあう、の「あう」の二語ふたごは偶然に見つけたついのシーグラスかも

頬の内溶けゆく氷を最後まで噛まない覚悟が君にはあるか

連れあって蛍を見るということはふたりにとっては心中だった

紫陽花が木乃伊みいらとなってそのままに添えられていて道祖神前

固体から液体になる瞬間をほかの誰にも見せるな君よ

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