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タイでサル調査!研究奮闘記

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ベニガオザルを研究している豊田博士のコラム「タイサル!」をまとめました。不定期で挿絵を担当しています。
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#野生動物

タイサル!第10話「撮影へのこだわり」

みなさんこんにちは、申請書提出明けでスッキリ気分のヒヨッコ研究員豊田です。 今日は、重たい機材を担いで調査に出かける理由、”研究者が撮る写真・映像の価値”について、私なりの思いやこだわりを書いてみたいと思います。 ※トップ画像はNHKロケ時のもの(©河合よ−たりさん) カメラはフィールドワーカーの「商売道具」動物の野外調査において、カメラの果たす役割は非常に大きいものです。行動の決定的な瞬間は、文字で記載するよりも一枚の写真で提示した方が説得力は圧倒的に高いです。また、

タイサル!第11話「誰が誰だかわからない!個体識別の話」

みなさんこんにちは、サルの写真を眺めてはニヤニヤしているヒヨッコ研究員の豊田です。 今日は調査の基本、「サルの個体識別」についてのお話です。 ■個体識別って?私たち動物研究者にとって、個体を識別することは調査の基本中の基本です。行動を記録する際は「誰と」「誰が」「いつ」「どこで」「どういう状況で」「何をしたか」を記録します。 「誰と」「誰が」って、どうやって記録するのでしょうか? 答えは簡単で、全ての動物の顔を覚えて、名前をつけて、区別すればできます。私は調査期間中、

タイサル!第12話「ゲシュタルト崩壊!全頭識別への道」

みなさんこんにちは、調査再開の目処が立たず研究のやる気が激ローのヒヨッコ研究員の豊田です。 前回は個体識別の序盤、写真による識別整理のお話をしました。今日はその続きです。 写真で判断できるだけでは不十分で、実際に実物を見てその場ですぐに識別できるようにならなければなりません。これがまた、大変な作業なのです。 ■毎日同じ個体に会えない私の調査地には、サルの群れが5つ生息しています。その日、どの群れに出会えるかは運次第。今日出会った群れに次会えるのは1週間後、なんてこともザ

タイサル!第14話「タイの仏教文化とサルたちの関係について」

みなさんこんにちは。調査中断が長引いてすっかり写真撮影の腕が鈍っている自称写真家のしがない研究員の豊田です。 今日はタイの仏教文化とサルたちの関係についてのお話です。 以前カニクイザルの回でも書きましたが、タイのお寺にはサルたちが住んでいることが多々あります。タイに限らず東南アジアの仏教国では、サルと仏教寺院の関係は非常に深いです。 今日はそんなサルたちと仏教国ならではの事情のお話です。 仏教国・タイのお寺とサルたちタイは人口の約9割が仏教徒とされています。国内各地に

タイサル!第15話「タンブン行為で私が心配していること」

みなさんこんにちは。来週は第37回日本霊長類学会ですよーってことで、更新のタイミングをどうしようか考えている下っ端研究員の豊田です。 さて、前回の回で仏教文化とサルたちの関係の話を書きました。 今回は、タンブン行為がもたらす研究への影響以上に私が心配していることを書きます。 危険なタンブン行為私の調査地のサルたちの遊動域のど真ん中を、2車線の道路が横切っています。この道は、バンコクや市街地から、王室プロジェクト系列の農業公園に通じる道なので、特に週末は車通りが多いのです