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リビエールがクリスマスの営業を辞めた理由。

ボクはお菓子屋さんに産まれて子供の頃からクリスマス時期おばあちゃんが家に来てくれてしばらく両親に会わないのが毎年の事でした。その時期家がいつもと少し違って妹たちと楽しんでいた記憶があります。

そして父と同じお菓子屋さんになり毎年クリスマス時期夜遅くまで仕事して23日の夜は明け方まで仕事するのが普通になりました。もちろんしんどかったんですけどそれが普通だと思ってました。一回だけ24日の朝遅刻した事があります。それはそれは会社に行くのが怖かったです、、、(笑)←今だから笑える。お菓子屋さんは毎年クリスマスに向けての膨大な量の準備が秋頃から始まります。日々の仕事に加えてクリスマスの準備が始まると仕事量が一気に増えて段々と帰る時間が遅くなっていきます。だから夏の終わりが毎年とても憂鬱でした。また今年もあの時期が来るのかと、、。そんな感じで何年も過ごしました。

国内やフランスで働いたのち2011年ボクは父の経営するリビエールに入りました。そして待っていたのは勤めていた時と変わらないクリスマスでした。毎年少しずつ早く終わるようになっていったけどいつもより仕事が終わるのは遅かったし、いつもよりずっと多い量を作るので雑になってしまったり、ごく簡単な事しかできなかったり。そして社員の疲れた顔を見ては申し訳ない気持ちになりました。クリスマス時期は果物屋さんからイチゴの入荷が不安定になり足りなくてスーパーに買いにいったことも。ボク自身もうクリスマスが嫌いでした。毎年クリスマスが早く終わってほしかった。それでも「お菓子屋さんはしょうがない。」と思いながら同じ事を毎年繰り返していました。 

自分がリビエールの社長になる少し前の2年前のクリスマス。24日の夜は毎年のようにケーキを買うためのお客さんがお店の外まで溢れるほど並んでいました。そのタイミングで予約無しだと並び始めてケーキを注文してもらうまで1時間以上待ってもらう事が普通でした。たまたまボクが店内にいた時ある男性のお客さんが注文を聞いていた女性スタッフに怒鳴る声が聞こえてきました。「なんでケーキ買うためにこんなに待たなあかんねん!」ボクはすぐに出て行って「ご予約いただけていればほとんどお待ちいただかなくてもお渡しできたのですが、、、」とお伝えしました。 どうして自分のクリスマスをリビエールで仕事してくれている社員が怒られなければいけなかったのだろう。自分に腹が立ちました。この時に翌年からクリスマスの当日販売を辞めて少量の予約注文だけお受けする事を決めました。 お客さんと同じように自社の社員にもそれぞれのクリスマスを楽しんでもらえる会社を目指そうと。

よくクリスマスはお菓子屋さんにとって稼ぎ時と言われます。それだけ注文が集中するので確かにそうだと思います。うちの会社に関しては他の時期利益が薄くクリスマス頼みみたいなところがあるなと感じていたのでまずは一年間通してしっかりと利益を出せるようにしたらクリスマスの売り上げを少なくしても十分やっていけるのではないかと考えました。税理士さんから教わったり本を読んで自分なりに勉強していきました。

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そして去年はリビエールが38年目にして初めてクリスマスケーキを少量の予約だけで当日販売を辞めました。毎年1年で1番売り上げが多い12月23日から25日の売り上げが0円でした。予約のケーキを準備してお渡しするだけなので1年で1番帰るのが遅くなるクリスマスに社員たちは交代でお昼に帰っていきました。もちろん例年通り当日販売を目当てに来られたお客さんも沢山いましたが静かなお店の中でボクはやってよかった間違ってないと思いました。

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何よりもボク自身生まれてはじめてクリスマスを家族皆で過ごす事ができました。子供たちとクリスマスケーキを作った事は大切な思い出です。

そして今年。

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今年も当日販売は無しで社員たちにはそれぞれのクリスマスを楽しんでもらうつもりです。でも一つ新しい考えが入りました。数を沢山つくらないのであれば少し高額でも時間をかけたクリスマスケーキも作ってみようと思いました。

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この2種類です。チョコレートでパーツを作って組み上げたサンタさんや機関車。他のケーキより高いけどどちらも一台作る時間でショートケーキなら何十台も作れます。それでも喜んでくれる人がきっといるのではないかと思った。 

ボクの考えですが、日本中のコンビニがクリスマスケーキを販売している時点でそこで需要に対しての量はきっと足りるのではないかと思うんです。では専門店はなにをしていくか。クリスマスケーキは専門店のケーキが欲しいと思ってくださるお客さんにコンビニのケーキよりは高額だけどクオリティの高いものを用意する事だと思うんです。きちんと料金をいただくことでそこまで膨大な量を作る必要も無くなり関わる社員たちにそこまで無理をさせる必要が無くなるのではないかと思うんです。機関車やサンタはちょっと極端だとは思いますがそんな気持ちで作りました。

長々と書きましたがボクがクリスマスの当日販売を辞めたのは予約してくれたお客さんにできるだけいいものを届けたいという気持ちと社員にもクリスマスを楽しんでもらいたい嫌いになってほしくないと言う気持ちです。当日買いに来られるお客さんを切り捨てる事になってしまったのはわかっているのですが、限られた人員や資本の街のお菓子屋さんが全てに応えようとしてきた事がこれまでのお菓子屋さんの働き方に繋がっていると思うんです。ボクなりにお客さんに喜んでもらいながら社員を豊かにできるような経営がしていきたい。いつもありがとうございます。

あと少しだけ。誰の事も悪く言いたい訳じゃない。いつもクリスマス忙しそうだった両親も、この業界の事も。強いて言うなら、、、自分です。リビエールに帰ってきてからすぐに今みたいにできていたらといつも思います。知識や経験が足りなくて嫌いだった「お菓子屋さんはしょうがない」と言う言葉そのままのような経営をしていた時期があります。社長になる前とは言え自分の事だからいつまで経っても中々許せない。だからこそ頑張り続けたい。


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