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ポイントは何%まで還元できるのか

宿泊予約サイトのポイントの不正取得のニュースが話題ですね。報道によれば、2,200回(金額にして8,000万円程度)以上の予約と無断キャンセルを繰り返し、500回程度の予約に相当する200万円以上のポイントを不正取得したとのことです。単純計算すると、一回あたりの平均予約金額が約3.6万円で、不正取得したポイントが約4,000ポイント、還元率は約11%です。

ところで、ポイントは何%まで還元することができるのでしょうか?

景品表示法上は、商品または役務の購入者に対して提供されるポイントは「取引通念上妥当と認められる基準に従い、取引の相手方に対し、支払うべき対価を減額すること」、つまり、「値引」と認められる経済上の利益に該当するとされています(「景品類等の指定の告示の運用基準について」平成26年12月1日消費者庁長官決定)。

「値引」に該当する場合、原則として、景品表示法上の景品類には該当しません。したがって、たとえば自社の商品または役務の購入者全員にポイント提供する場合(通常であれば総付景品に該当する場合)であっても、総付景品規制(最低取引価額の10分の2若しくは200円のいずれか高い額が上限)は適用されません。このようなポイントを本稿では以下「自社ポイント」といいます。

しかし、消費者庁のQ&Aによれば、「自店だけでなく他店でも共通して支払いの一部に充当できるポイントを提供すること」(このようなポイントを以下「共通ポイント」といいます)は景品類の提供に該当するとされています。

ただし、ここからが非常に複雑なのですが、共通ポイントであっても、正常な商慣習に照らして適当と認められる範囲であれば、総付景品規制は適用されません。したがって、最低取引価額の20%を超える還元率のポイントを付与することも可能です。

Q25 当店では、ポイントカードを発行し、商品の購入者に対し、次回以降の買い物の際に、当店だけでなく他店でも支払いの一部に充当できるポイントを提供することを考えているのですが、景品規制は適用されるのでしょうか。

…(略)…自店及び他店で共通して使用できる同額の割引を約する証票は、正常な商慣習に照らして適当と認められるものであれば、景品類に該当する場合であっても総付景品規制は適用されないこととされています。

まとめると、

1.自社ポイントは「値引」に該当し、原則、景品規制は適用されない。
 =20%超の還元率が可能

2.共通ポイントは景品類の提供に該当し、景品規制が適用される。

3.共通ポイントであっても、正常な商慣習に照らして適当と認められる範囲であれば、総付景品規制は適用されない。
 =20%超の還元率が可能

ということになります。

それでは、共通ポイントに総付景品規制が適用されるか否かの判断基準となる「正常な商慣習に照らして適当と認められる範囲」とは具体的にはどう判断すればよいのでしょうか?上記の運用基準や消費者庁のQ&Aには具体的な基準が明示されていないので、判断に苦慮します。

ここで参考にすることができそうなのが、公正取引委員会のガイドライン「家庭用電気製品の流通における不当廉売,差別対価等への対応について」です。

同ガイドラインは、ポイントを「一般的に値引きと同等の機能を有する」としたうえで、「正当な理由がないのに,供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給」する場合(独占禁止法第2条第9項第3号)と、「不当に低い対価で供給」する場合(不公正な取引方法第6項)であって、「他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれ」がある場合には、独占禁止法によって禁止される「不当廉売」に該当すると整理しています。

ここでいう「供給に要する費用」とは、総販売原価(仕入原価に販売費及び一般管理費を加えたもの)とされています。とすると、仮に総販売原価が販売価格の60%だとすると、40%のポイント還元率(=総販売原価相当額で供給)であれば、「総販売原価を著しく下回る対価」とは言えないのではないかと考えます。

つまり、「販売価格(100%)-総販売原価率(%)」のポイント還元率であれば、景品表示法の観点からも、独占禁止法の観点からも、ある程度安全であるように思います。

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