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新刊本と古本

私のよく乗り降りしていた駅改札の中に書店があり、手前に話題の本、売れそうな本を並べてある。お蔭でいろいろな本に出会った。

父の生前は、ヘンな本を持っていると怒られるし、私個人としてもベストセラーは皆が買うから、人の読まない本こそ募金をかねて買うぞ、と少々意地を張っていた。でもいまでは力みも取れ、在宅死とか、スマホの功罪とか、夫の扱い方といった内容の本を興味深く読んでいる。

引っ越しで思い切り本の数を減らし、残しておく必要のない本は人に譲ることにしている。ざんねんな生き物事典は本当におもしろく、続けて買っては、子供のいる人に差し上げた。

大きな書店をのぞくと、本があまりにたくさんあって、クラクラする。文庫や新書のコーナーは気になるが、単行本の特集コーナーでは今週のおすすめといって、売れている順にならべてあり,表紙も紙も派手で読みやすく、題名がなぜか長かったりする。ネットで検索するとヒットするからとか。ミステリーなども確かに面白いが、2度読むことはない。私はかみしめるような味わいのあるものが好みである。

また、○○する方法という本が非常に多い。テーマは、長生き、人に好かれる、出世する、運をよくする、教養ある人になる、など。私は運をよくする方法というテーマは結構好きで、かつてはさまざま読んだが、結局なるようにしかならない。ラッコのようにゆったりと大気の中に身を置いて、自分の感性をみがき、ピンときた方向に進むしかないのだ。

というわけで、最近では古本の愛好家となっている。時々古書店街を歩くと中高年の男性が多く、女性は極めて少ない。特に店内を覗かなくても、200~500円位の本を並べてあるワゴンの前を通るだけでワクワクする。おいてあるのは小説はもちろんだが、○○の研究とか、○○論とか、テーマがはっきりしている。表紙のデザインもなかなか凝っていたり、作者も出版社も是非これを本にして、少部数でも世に出したいという熱意が感じられる。

ぶらぶらしながらワゴンの中を見ると、ふと本と“目が合う”。待っていてくれたのかな。最近求めたのは、ドイツ中世の笑い話(少々きたないエピソードも多いが)、プエブロ・イディアンと親交のあった女性詩人の本など。おもしろい。

確か仏文科の学生だった頃、洋書のT書店を訪ね、作家Sのlivre de poche(ポケットブック)はありますか、と店主に聞いた。小さくて安いから。何と、そんなのは本と認めませんから、置いてありません!ギャフンとなったが、すごい。古書店万歳!

木蔭のつぶやき ③