RitsukaNakazaki.

日常に基づいたエッセイ・短編小説

RitsukaNakazaki.

日常に基づいたエッセイ・短編小説

最近の記事

「どうにもならなくなったら、その時は」と私は言った。

「死ぬの?」 「生きる方法がなかったら死ぬよ。足掻ける内は生きるって決めてる。」 とあるバーでそんな会話をしてた。 相手は初めて会った女の子。ナンパ目的で近づいてきたらしかった。お互いお酒も入っていたのでなぜこんな重い話になったのかは詳しく覚えてない。 多分最初は好きなお酒の話をしてた。確か。 その女の子は好きな女の子がいるけど、その子は自分の幼なじみが好きらしい。と、何とも漫画みたいな話を惚気まじりに永遠と聞かされていた。 「昔よりはさ、LGBTも理解されてきたらし

    • これは、恋なんて綺麗なものではないのだと彼は言った。

      例えるなら、遅桜。 春の盛りを過ぎてから1つ遅れて咲くように、美しく、どこか寂しげに笑うような人だった。春の情景から取り残されながらも人々はそれを風流だと愛で、慈しむように、彼を皆は遅桜の如く特別なものとして接した。 当人の気持ちなど知る由もなく。 「なんでそんな哀しそうな顔してるの。」 初めて彼に話しかけた言葉がそれだった。驚きながらこちらをまじまじと見る彼は「僕、そんな顔してる?」と微笑みながらそう言った。 「どこが哀しそうな顔なんだよ!」「ちょっと、彼に気に入られた

      • 結局、僕らはこの世界でしか生きられないのだと彼は言った。

        「不幸の後には幸せになるって誰が言ったの」 「知りませんよ。そんな事、まだ信じていたんですか?」 夏のベランダ、夜になり日光にジリジリと照らされた地面が少しずつ冷めていっているのだろうか、生ぬるい風が頰や髪を掠めていく。 足元にはビールの空き缶、ベランダの壁に背中を預けながら、私は彼の手に持つ煙草の煙を浴びていた。 「不幸の後に幸せが来るって言うのは、ただ人がそう信じたいから、 そうあって欲しいから人から人に励まし言葉のように伝わるんです。 幸も不幸もその人の考え方次第で

      「どうにもならなくなったら、その時は」と私は言った。