これは、恋なんて綺麗なものではないのだと彼は言った。
例えるなら、遅桜。
春の盛りを過ぎてから1つ遅れて咲くように、美しく、どこか寂しげに笑うような人だった。春の情景から取り残されながらも人々はそれを風流だと愛で、慈しむように、彼を皆は遅桜の如く特別なものとして接した。
当人の気持ちなど知る由もなく。
「なんでそんな哀しそうな顔してるの。」
初めて彼に話しかけた言葉がそれだった。驚きながらこちらをまじまじと見る彼は「僕、そんな顔してる?」と微笑みながらそう言った。
「どこが哀しそうな顔なんだよ!」「ちょっと、彼に気に入られた