ショートショート 【見たことがないスポーツ:青果ベースボール】


昔々。

野菜の村と果実の村は大変仲が悪かったそうです。

このままでは戦争になりかねないと思った村の村長同士が村の青果を使ったスポーツで互いの感情をぶつけ合うことにしました。

青果ベースボール。

果実の村はトマトをボールに大根をバットに。
野菜の村はリンゴをボールにバナナをバットに。

最初は敵の青果を打ったり、砕けたりする様子が気持ちよかったのですが、段々とお互いの村の住人は元気がなくなってきました。

野菜の村の住人は言いました。

「敵の村だからって、食べ物を粗末にしちゃいけねぇ気がする」

果実の村の住人は言いました。

「私達が愛情を込めて果実を育てているように、彼等の村も真心込めて野菜を作ってるじゃないでしょうか」

「たまにはリンゴも丸かじりしてもいいんじゃねぇか」
「トマトを冷やして食べるのもたまには良いのではないでしょう」

試合は3-3の引き分けだったそうです。
試合後、少しずつ互いの村の青果を食べるようになったそうです。


次の年。

今年も村別対抗ベースボールが行われることになりました。
この時は正式なボールやバットが用意されたそうです。
そして互いの村が村一番の青果を差し入れたそうです。
2つの村は笑顔で互いの村の青果を食べたそうです。

(510文字)

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