ショートショート リベンジトリートメント
会議室が沈黙に制圧された瞬間だった。
「今回の商品も赤字です。次の商品開発が失敗すれば我が社は…」
部下の話を理解するのに時間がかかった。
「次の商品は何を開発しましょう。社長」
医薬品を開発してきた我が社はどの商品も時代の流れに中々苦戦していた。
高度経済成長期に売上を伸ばしてきたこともあり、現在の若者の消費者ニーズを全く掴むことができなかった。
「夢叶君、何かいい案はないかね」
夢叶は唯一20代の女性社員だった。
「う〜ん。なんかうちの医薬品ってやっぱ安心安定が売りじゃないですか。逆にトリートメントとか売ってみたらどうですかね」
「若者ってネームバリューに弱いし、女性は綺麗になりたいんですし」
ネイルを見つめながら答える夢叶は自分の意見に自信があるようだった。
トリートメントか。
男の私には一生思い付かない発想だった。
「社長だって、奥さんの髪の毛が綺麗だったら嬉しいでしょ」
反論することもできず、こんなあやふやな理由で社の命運を決めてしまった。
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お題 リベンジトリートメント
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