ショートショート 非情怪談



「皆さん、火事です !!こちらの非常階段をお使いください」
「誰かデパートで火事が起きるって予想するんだよ」
「最近、多発している無差別放火魔の仕業らしいぞ」
「助けて〜〜!!私の子供が。私の子供が!!あの火の中に」
「お母さん。あなたも死んでしまいます。早く逃げてください」
「いやっ!!あの子のいない世界なんて!!」
「お母さん!!」

ここは地獄なのか…


「危機一髪だぜ。一歩間違えたらあのお母さん死んでたぜ」
「木綿さんは本当にギリギリだよな」
「傘のお化けが瓦礫を避けてくれたお陰ですよ」
「あっ天狗さん」
「はいっ!!赤ん坊!!連れてきた。座敷童子のお陰でずっと赤ちゃん笑ってる」
「てか、砂かけ婆さんがデパートの品物持って帰ろうとしてる(笑)」
「うるさいわね。ろくろ。まだ助けを待っている人はいるかい」
「いや。もういないです。これで全員助かります」
「一つ目の野郎が見えないけれど」
「あぁ。なんか火をつけた野郎を驚かせて、腰を抜かしてやったらしい」
「ギャハッハッハギャハッハッハ」
「警察に捕まるのも時間の問題だとよ」
「ところで青年。ここは地獄かと聞いたな。行ってみるか??(笑)」

鬼に話しかけられた俺。

「遠慮しまーす」

俺は走ってその場から逃走した。
この火事で誰一人、怪我をするものはおらず、容疑者は無事捕まったらしい。

(551文字)

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お題 非情怪談


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