ショートショート　誘惑銀杏

イチョウの葉で恥部を隠し男性を誘惑する銀杏。
強烈な異臭なはずなのに家に帰ってからあの匂いをまた嗅ぎたいと思う。

仕事中も。
食事中も。
寝る前も。

私も独り身なら快楽に身を委ねることができるのに。

会社も。
家族も。
友達も。

全てを裏切りたい。

いけないとわかっていたのに。
出来心で一度だけ行ってしまった。
あの艶かしい身をまた舐めて味わたい。

あぁ。
落ちる。
落ちていく。

もう一人じゃ満足できない体に変えられてしまったんだ。

私はもう銀杏を手放すことはできない。

仕事終わり、自然と足が向かってう。

ブゥブゥ

今日は何時に帰る??

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ごめん。今日も仕事で遅くなる

貴方が好きな銀杏を料理してみたの
なるべく早く帰ってきてね

妻にLINEで嘘をつく私。

　

「お帰り。貴方は悪い人」
「…」
「皮…剥いてあげる…大きくて綺麗」

あぁ…
抗えない。

冬が近いなんて…知りたくなかった。
私に二度と春は訪れないだろうな。
それでも良い。

(410文字)

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お題　　誘惑銀杏

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