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ある夜。ホテルの窓を開けたら、下手くそな「ロマンスの神様」が聞こえてきた。

ある夜。ホテルの窓を開けたら、下手くそな「ロマンスの神様」が聞こえてきた。

下の階のカラオケ付きのスナックからだろう。このホテルは仕事の関係上何回も泊まったことのあるホテルだが、いつも窓は開けない。

いつも開けない窓を開けたのかというと、
それは10分前のこと。

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SNSに流れてくる情報をぼんやりと見ていたら、その中に、みた顔が。

長年押してないツボを急に押されたような、逆に押しすぎて感覚が麻痺したような、具体的にどこか分からない私の部分がぎゅっとなって、
それは、呼吸をしずらくさせた。

見たくないものが、不意打ちでやってくるのがSNSである。
ぶくぶくぶくと湖に沈んでいくような、じわじわとくる息のしずらさ。

私はホテルの部屋を出て、コンビニに行き、煙草を一箱買ってきた。
いつも煙草は吸わない。たまに、飲みの付き合いで吸う程度である。
このホテルでも部屋で禁煙OKなホテルなことは知っていたが、実際吸うのは初めて。

部屋の電気を暗くして、煙草に火をつけ、窓を開けると、
23時過ぎの駅前の街の音が聞こえてくる。

電車の音、人々の笑い声、車の走る音
その中には、スナックの騒ぎ声もある。
歌は、酔っていて音程が合っていない。けれども、一ミリも気にせずに楽しそう。

Fall in Love ロマンスの神様 この人でしょうか 

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久々に吸ったからほろ苦く感じる。
せっかく窓を開けたのに、風向きのせいか逆に煙は部屋に入ってくる。

なんかもうこれでいいやとそのままにして、2本ほど吸った。

私はその間、まぶたの裏に、耳の中に、ずっと消えないけれど、モザイクがかかったように思いだせないものについて少し考えた。

うん、明日も早いしもう寝よう。
煙が漂う部屋で、おやすみなさい。


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