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「靴にはお金をかけるべき」は呪いか否か【おしゃ呪解vol.7】

こんにちは。服装心理カウンセラー・スタイリストの久野梨沙です。
あなたに巻き付くファッションへの思い込み・・・「おしゃれの呪い」をばっさばさと解いていくこの企画、略して「おしゃ呪解」。
企画趣旨はこちら

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今回は、Twitter でちょっと気になる話題にが上がっていたので、そのお話を。
ファッションコンサルって皆さん聞いたことありますかね? ファッションコンサルタントの略だと思うんですけども、界隈でファッションコンサルという言葉は、このところ「婚活男性にモテるためのファッションアドバイスをする人たち」のことを指すようになってきたらしいんですよね。
なので私がやっているパーソナルスタイリストという職種とはかなり近いんですが、「ファッションコンサル」はターゲットがかなり絞られているっていうことのようで。

で、とあるファッションコンサルさんが男性をスタイリングして、そのビフォー→アフターの画像をTwitterで投稿してたんですが、それに対して、賛否というか・・・・・・否のほうが多いかな・・・・・・が、かなり巻き起こっていました。

さらに、おそらく雑誌などで仕事をしているプロのスタイリストさんが、このファッションコンサルさんのスタイリングが全然ダメだ、とコメントしていまして。それには主に、

・某有名なセレクトショップの洋服(値段がそこそこする)に、某有名プチプラショップの靴を合わせるのはあり得ない
・靴と洋服、お金のかけ方が逆だ

という理由を挙げていました。

これに対して、ファッション業界からは賛同の声が上がり、しかし、元々のファッションコンサルさんのツイートに「かっこよくなりましたね」みたいなリプもついていたりして、これ、一般の人が見たら「どっちが正しいの?」って、本当にわからなくなると思ったんですよね。

「まずは靴にお金をかけるべきだ」。

これはよく聞くことだと思うんですが、果たして本当なんでしょうか? それともただの呪い?

本件、ラジオでも解説しておりますので音声で聞きたい方は以下から。

「靴で人となりを判断されるから」という理由であれば、現代ではもはや呪いに近い。けど、理由によっては・・・・・・

この話をする前にですね、「そもそもあなた誰?」っていう、私の立ち位置をはっきりさせておいたほうが読む心づもりもできるだろうと思うのですが、私は元々20ウン年前にオンワード樫山という日本のアパレルメーカーに入社してマーチャンダイザーという企画職をやってから、その後リーバイスというジーンズのメーカーの本社でも働いていました。そこからパーソナルスタイリストに転身して、早14年目。

アパレルの前はっていうと中央大学で心理学を学んでいたので、服飾専門学校卒ではありません。なので普通の四大出て、バリバリのどっぷりアパレル業界で働いて、そして今はそのアパレルと一般の人をつなぐ仕事・・・・・・ということで、経歴的には、アパレル業界とそうでない業界のちょうどの中間にいるんじゃないかな、と自分では思っています。

ですから本件も、その両方の視点から解説してみようと思うんですが。

冒頭のファッションコンサルさんのスタイリングの話で言うと、まず、靴がどうかっていう前に、スタイリングとしてはファッションの理論に添ったものではなく、体に対して服のサイズが合っていなかったり、合わせているアイテム同士のアイテムが悪かったりして、そうなると、やっぱり「賛否両論巻き起こるスタイリング」ということになるので、幅広く好感度を上げていきたいと考えるであろう婚活スタイリングとしては、やはりあまり適していないのではないかと思います。

では、「靴にお金をかけなかった」ことはどうか。
まず、靴にお金をかけた方が良い理由を明らかにしたほうがよいですよね。

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よく理由として挙げられがちなのが、「靴は人に見られるから」。良い靴履いてるかどうかでその人を量る人もいるよ、ということですね。でもこれはちょっと古い考えかな・・・・・・という気がします。企業へ身だしなみ研修を提供している実感としても。決裁権のあるような年代の人が靴を見るような世代だった時代はこの理由も有効だったんですが、既にそういう世代は引退済みで、今の40〜50代は、それほど靴は見ていない印象です(もちろん、元々の靴好きという人はどの世代にもいますが)。

また、「人から自分の能力や人となりを量られる世界に生きていない人」にとっては、「靴は人に見られるから」と知ったところで、お金をかける理由にはなり得ないんですよね。

じゃあ靴にはお金かけなくても良いか。大きい面積を占める服にその分回した方がいいか・・・・・・っていうと、そういうことではありません。

体に与える影響と、「予算を上げたときのリターン」を考えると靴にはやはりお金をかけた方が得

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靴は、体を支えるもの。ですから体調に大きく影響します。悪い靴を履くと本当に姿勢が悪くなったり、足が痛くて長距離歩けなくなったりっていう経験を持つ人も多いのではないでしょうか。体調に与える影響は服よりやはり靴の方が大きいです。そして、一般的には、お金をかけて作られた靴の方が、足形の作成にもお金がかかっていたり、素材もよかったりするため、体に良い可能性は高い。

さらに、コスパの面も考慮に入れたいところです。
靴って、手入れするとかなり長く使えます。特に作りと素材が良い靴というのは、10年、20年はざらに持ちます。靴は、少しランクを上げただけで耐用年数がぐぐぐっと上がります。もちろん、服も良いものを買えば耐用年数は上がりますが、そのためには価格帯を結構上げる必要があります。そういう意味で、「お金をかけたリターンがわかりやすい」というところが、靴には確かにあるわけです。

さらにさらに、靴の原価率を考えましょう。その定価に対して原価がどれくらい占めてるかっていう「原価率」。これ、靴の場合にはあまり大きく変わらないんです、どんなブランドでも。だいたい45%〜50%くらい。靴の原価率って高いんですよね。
それに対して洋服の原価率って、かなりブランドによって違います。例えばユニクロとかZARAといったファストファッションは原価率40%くらい。物によっては50%のものもある。しかし、それが百貨店に並ぶようなブランドとか、あとは冒頭のファッションコンサルが服を提案したような有名なセレクトショップになると、30%くらいに下がってしまいます。なのでその範囲内での話をすると、ユニクロで買ったものと、少し予算を上げて百貨店やセレクトショップで買ったものと。購入価格は違うのに、原価で考えると実は変わらなかったりするんです。
しかし靴は、洋服のようにブランドによってそれほど原価率が変動するわけではないですから、購入価格をあげたらそのまま質に比例しやすいというわかりやすさがあるわけです。もちろん例外はありますが・・・・・・。

いくらよい提案でも、伝える努力なしには伝わらない

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ですから、服と靴を一緒に買う際、靴の予算配分を多めにするっていうのは、これらの理由から非常に理に叶っているということになりますね。だからこそ、アパレル業界の人は「やっぱり靴にはお金をかけたほうがいいよ」って言うんです。

しかし、この予算配分が、冒頭のファッションコンサルの人に関しては逆転してしまっている。見た目を良くすることももちろんだが、お金を頂いてスタイリングする以上、予算を適正に使って上げるべきでは? というファッション業界からの意見も、至極最もな内容です。

でも、その一方で、このファッションコンサルを選び、お金を払って、満足しているお客様もいるということにも目を向けないといけませんよね。

私も含めて、アパレルのことをより深く知っている人間からすると「靴にお金をかけると良い」は常識ですが、ひとたびこの世界を出るとそうではありません。そこでしっかりと伝える努力をしてきたか?

医療の世界でも、まともな治療をやってくれるけど何も説明してくれない医者より、トンデモ医療だけどとにかく話を聞いてくれて説明してくれる(その中身に例えエビデンスがなくとも)医者のほうが支持を集めているというのはよくあることで。

その分野の知識がない人にビジネスをするのであれば、やはり「正しいことをやっていればそれでよい」というのではなく、何が正しいのかを伝える努力を惜しんではいけないんだな、と、本件で改めて自戒しています。

もっと語ります。ファッションを。

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