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映画 『リップヴァンウィンクルの花嫁』

岩井俊二監督の作品。

岩井俊二監督の作品は 『PiCNiC』『スワロウテイル』『リリイ・シュシュのすべて』など 見た後の余韻が何年も抜けない作品ばかり。
なので、いざ見ようと思ってもなかなか覚悟が必要だったりする。

『リップヴァンウィンクルの花嫁』というタイトルが とても覚えづらくて 馴染みがなかったのだが、映画を見てからは もう忘れられないタイトルになった。

主人公は 教育学部を卒業しているらしく、元々教師になるつもりで勉強をしてきていたようだ。教職免許は 教育学部卒ではなくても取得できたりするので、教育学部卒というと 教師になることへの本気度合いが違うように感じる。
それなのに 「声が小さい」という致命的な弱点のせいで 常勤教師になれなかったばかりか 非常勤教師の仕事すらクビになってしまう。

実生活ではうまくいかなくても オンラインでは 家庭教師的なことをしていて、数学を教えている時もあれば英語を教えている時もある。その生徒とのやり取りが この映画の移り変わりを示している。とにかく主人公が引っ越す。大きなスーツケースを引きながら移動していき、その移動した先でも しっかりオンライン授業をしている。壁だけが変わる。

この映画の中で 私が好きなのはなんだかんだで冒頭のセクションである。
「お見合いサイトで彼氏を見つけた。」
「ネットで買い物するみたいに、あまりにもあっさりと手に入ってしまった。」
「なんかあっさり手に入ってしまった彼氏だけど、彼にとっても、あたしはあっさり手に入ってしまった女・・・・ってことになるのかな。」
「ネットで買い物するみたいに、あっさりと・・・・・・・・ワンクリックで」
匿名の世界では 割と大胆な主人公。学校では 生徒にからかわれてもぐっと堪える主人公。

あっさり手に入れた彼氏と結婚式の準備。
「結婚式って色々憂鬱。まず親戚が足りない。むこうは20人ぐらい来るのに」
ここから 何でも屋の「安室行舛」と出会うことになる。

「解雇されたのを寿退職ってことにしてしまった。それぐらいの嘘はアリでしょうか?」
主人公は そんな子。

それにしても 「安室」が 果てしなく胡散臭い。心が一切ない感じの マニュアルっぽい話し方。カフェに行くと こんな感じで話している人を時折見かける。彼らが何者なのかは 正直よくわからないが、決まって3人組で セミナーがどうとか言っているので そういう人たちなのだろう。それがやたら胡散臭くて この映画の「安室」そのものである。

そこから「リップヴァンウィンクル」との出会いがあったりするのだが、とにかく この冒頭がとてもリアルで印象に残った。

ネットでの出会いから結婚する人はたくさんいるし、それに対して否定的な意見はないが、ネットでの出会いは結婚相手だけではなく、家庭教師の生徒だけではなく、何でも屋にまで至るのだ。彼は結婚式の参列から 浮気調査から 別れさせ屋から なんだってする。

「ランバランの友だちなんで」

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