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映画 『リトル・ダンサー Billy Elliot』

自分が一番愛しているものに対して語れと言われたら どんなことを語ればいいのだろう。嫌いなものに対して語る方が よっぽど容易い。というのも 、一般的に 物事を嫌いになるには理由があるが 物事を好きになるには理由がないのだ。

私の場合 一番愛しているものは「歌」ということになる。「歌」を歌うとどうなるか?「楽しい」とか「幸せ」とかそんな軽いものではないし「自己表現手段」とかもなんか違うし。とても一言では言えない。じゃぁ「歌」が好きじゃないかと言われたら それは絶対にあり得ないので困ったものである。

それでは Billyの場合はどうか。

祖父の肩身のグローブを提げて 近所のボクシングジムに通っている (というか 通わされている)Billy。ある日を境に、ボクシングジムの片隅が バレエレッスンのスタジオとして 提供されることになるのだが、元々 音楽に興味があったBillyは バレエの方が気になって仕方ない。そのうちボクシングそっちのけで どんどんバレエにのめり込むようになる。

そんなBillyは バレエについて質問されてこのように回答する。

「Can you tell us why you first became interested in the ballet? (最初にバレエに興味を持った理由を教えて)」
ー「Don’t know. (わからない)Just was. (ただ興味を持ったから)」

「Well, was there any particular aspect of the ballet which caught your imagination? (じゃぁ バレエには 君のイマジネーションをかき立てるような何かがあったということかい?)
ー「The dancing. (踊ること)」

やはりそうなのだ。Billyにも 理由などわからない。そんなものは永遠の謎だ。

そして質問は続く。

「What does it feel like when you’re dancing? (踊っている時には どんな気持ちになる?)」

どんな気持ち。。。難しすぎる。
しかし Billyはこのように答える。

ー「Don’t know. (わからない) Sort of feels good. (気持ちがいいっていうか) It’s sort of stiff and that, but once I get going, then I forget everything. (難しかったりとかもするけど 乗ってくると 全てを忘れられるんだ) And, sort of disappear.  (そして、消える感じがするんだ) Like I feel a change in me whole body. (自分の身体の全部が変わっていくような感じで) Like there’s fire in me body. (身体の中に炎があるような感じで) I’m just there, flying. (僕はただそこにいて 飛んでいるんだ) Like a bird. (鳥みたいに) Like electricity. (電気みたいに) Yeah. (そう) Like electricity. (電気みたいに)

やられた。
これは 表現をする人にとっては すごく共感できる答えなのだ。表現する立場の人というのは 自分以外の誰かになっている瞬間がある。もちろん 全員ではないと思うが。少なくとも 私にとってはそうで、このBillyの回答は 今後の私の回答にも採用させていただきたいぐらいしっくりくる。自分が消える感じ。それがたまらなく気持ち良かったりする。「歌」の場合は 「鳥」や「電気」ではなく 「その曲の主人公」に姿を変えているのだが。

この映画では 他にも 家族の愛を感じることができる。歳の離れた兄弟の関係性がとてもリアルだ。

それにしても Billyが William のあだ名だということは知らなかった。
イギリスの北部の訛りがたくさん登場するのも面白い。

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