リリス

リリスと申します。 タロット占いをしており、それにまつわる短編小説を書いています。 …

リリス

リリスと申します。 タロット占いをしており、それにまつわる短編小説を書いています。 ご興味がある方は是非交流させてください。

最近の記事

照らす対象(太陽の正位置)

 朝目覚めたとき……窓から射し込む暖かくて眩しい光を見ると、一日の始まりを改めて実感する。 「もう朝か、ふぁ……」 「あら、おはよう主。目覚めが宜しいことで何よりね」  大きな欠伸をした私に、彼女は眩しく感じる笑顔を見せながら微笑んでくれた。  彼女の名前は、『太陽』の正位置。カード番号は19で、主な意味は『ポジティブ・エネルギーに満ち溢れる・健康的な生活』など。太陽の名に相応しい輝かしい人物である。 「おはよう太陽さん、今日も無事に朝を迎えられたわね……良かった」

    • 月に映し出す心(月の正位置)

       月……太陽からの光を浴びて輝き、夜を知らせるもの。それは時に儚く見え、時に大きく見える。まるで人の心のように。 「……お月様、今日も綺麗だな」  私は雲一つない満天の星空に浮かぶ、満月を見上げていた。昔月には兎が居て、餅をついていると言う話を聞き、望遠鏡で兎を探していた事を思い出す。本当は月には酸素が極端に少なく、生物が住める環境では到底無いため、うさぎなど居るはずが無いのだけれど。 「……今日の満月、何だか悲しそう……」 「……それは、貴女の心が悲しんでいるからです

      • 名に相応しき輝き(星の正位置)

         幼い頃、よく星座早見表を片手に星空を眺めていた。夏の大三角形・冬の大三角形……季節ごとに様々な名前の星達が、夜空に広がりそれぞれの輝きを見せる。そんな星達を見ていると、不思議と前向きな気持ちになれたりもする。特別な人と見上げたりすれば尚のことロマンチックだろう。 「綺麗……晴れて本当によかったね」  満天の星空を見上げ、隣で嬉しそうにはしゃぐ女の子に声をかけた。こちらを振り返り、心底嬉しそうに笑う彼女を見ていると、名にふさわしいと改めて感じる。 「ほら見てあれ、オリオ

        • 引っ込み思案な彼の警告(塔の正位置)

          引っ込み思案な彼の警告(塔の正位置) 「ごめんなさい……ごめんなさい……」 「よしよし、もう大丈夫だよ……」  ある日の夕方、私は泣き虫な彼を慰めていた。泣いている理由は些細なもので、今日の天気が雨だったから。彼は自分のせいで晴れにならなかったと言って泣いているのだ。  彼は『塔』の正位置。カード番号は16で、主な意味は『崩壊・絶望・失意に陥る』など。別名『暗示カード』とも呼ばれており、彼が出ることで先に待っている試練を知ることができるのである。  しかし、彼は勘違いをさ

        照らす対象(太陽の正位置)

          優しい悪魔(悪魔の正位置)

          「おいブス、何してんだ?」  カード達は基本的に主を尊敬し、主を慕っている。それは彼らと生活をしていく中で実感することだった。  しかし……彼だけは私を貶す。それがいいのか悪いのかは分からないが、少なくともいい気分はしない。 「何、ナルシスト……」 「んだよナルシストって……俺がイケメンなのは決定事項だ、だからナルシストとは言わねえだろ!」 「自分でイケメンって言っている時点でもうナルシスト決定だよ。いい加減認めたら? まず性格の時点で大抵の女の子はドン引きだね、ご愁傷さ

          優しい悪魔(悪魔の正位置)

          調和の難しさ(節制の正位置)

           節制と聞くと、何を思い浮かべるだろうか。某サイトによると、欲望におぼれて度を越すことがないように、適度につつしむことを示すという。  しかしながら、私の身近にいる節制は、こんな生易しいものでは決してない。 「今日の講義は『欲』について」 「また講義……?」 「これしきの事で自分のことはおろか、他人の事を理解したつもりでいるというの?」 「いえ、失言でした申し訳ございません」 「わかればよろしい」  辞書に書かれているような言葉の意味よりも、かなりスパルタな気がするのはき

          調和の難しさ(節制の正位置)

          生きるという定め(死神の正位置)

           小さい頃、よく人の『死』について考えていた。幼いながらも、死に対する興味と恐怖を感じていたのだろう。 「主、朝ごはんはしっかり食べなければならない。抜くと健康に害が及ぶ、気を付けろ。それが終わったら適度な運動をしろ、体を動かすことは健康にいいからな」 「毎日言わなくても分かってるってば!」  人が死んだあと、体から魂が抜けて天に昇っていくという話は、昔聞いたことがあった。同時にその魂を管理する者がいるという話も。  人が死ぬ前に姿を見せるという、死の神様……通称死神。物

          生きるという定め(死神の正位置)

          彼の見ている世界(吊るされた男の正位置)

          彼の見ている世界(吊るされた男の正位置) 「主ちゃん、相変わらずだね」 「こんにちは、ふんぬ~……」 「ははは、僕に合わせてくれてるのかい? 面白い子だね。でもその体勢……辛くないかい?」 「ふんぬ~……ごめん首が痛い」  そう言うと彼はおかしそうにお腹を抱えて笑った、吊るされた状態で。  彼の名前は『吊るされた男』の正位置。カード番号は12で、主な意味は『試練・戦い・壁にぶちあたる』など。  彼は名前の通り、吊るされている。四六時中吊るされた体勢だ。そんな彼と話す時、そ

          彼の見ている世界(吊るされた男の正位置)

          彼女なりの正義(正義の正位置)

          「して、主よ。以下の点から察するに、主はこのことをどう捉える?」 「えっと……本来の意味を考慮するとこうなるけど……」  彼女の声を聴くと、倫理的に物事を考えられるのは気のせいではないのだろう。  彼女の名は『正義』の正位置。カード番号は11で、主な意味は『正しい判断・誠実な相手・律儀』である。  彼女には時々、占いをした際のそれぞれのカードの解釈について意見を求める時がある。常に倫理的に物事を考え、意見を述べてくれる彼女は嫌な顔一つせずにいつも教えてくれるのだ。 「今

          彼女なりの正義(正義の正位置)

          司る意味(運命の輪の正位置)

          「こんにちは運命の輪さん、今日もいい天気ね」  そう声をかけた私に、彼女は少し驚き深々と頭を下げた。さらさらと絹のような長い髪が、彼女の顔を覆い隠す。 「相変わらず丁寧なのね。顔を上げて?」  私がそういうと、彼女はゆっくり顔を上げ、持っていたスケッチブックに、鉛筆を走らせる。暫くして、書きあがったらしいスケッチブックを私に見せてきた。 『こんにちは、主様。ご挨拶に来てくださりありがとうございます』  彼女の名は『運命の輪』の正位置。カード番号は10で、主な意味は『

          司る意味(運命の輪の正位置)

          見えない案内人(隠者の正位置)

          「おじいちゃん、いる?」 「おぉ孫か、わしに何か用じゃったか?」 「用じゃないんだけど……何となく会いたくなっちゃって」 「おぉーそうであったか! 今お菓子を持ってきてやろう。どっこいしょ……」  ここに来ると、両親の実家に帰ってきた孫のような気分になる。それは彼が繰り出す雰囲気が大いに関係しているのだと分かる。  彼の名は『隠者』の正位置。カード番号は9で、見た目もそうだがかなりの初老である。主な意味は『導き・助け合い・真実に目を向ける』で、人柄の良いおじいちゃんだ。

          見えない案内人(隠者の正位置)

          我慢の使い方(力の正位置)

          「うぅ~……!」  この日の私は、あらゆる事に対して相当我慢していた。それが遂に限界を迎えたようで、今猛烈にむしゃくしゃしている。 「主様、どうかしたの? 私で良ければ聞くから、落ち着いたら話して欲しいな」  そんな私を優しく宥め、背中まで摩ってくれる彼女は、何処までも寛大な心を持ち合わせているに違いない。  彼女の名は『力』の正位置。カード番号は8で、主な意味は『忍耐力・思いやり・コントロール』など。  『力』と聞くと筋肉質な人物であったり、権力者などを想像するが、彼

          我慢の使い方(力の正位置)

          先頭に立つ者の覚悟(戦車の正位置)

           思えば、彼には何時も迷いがなかった。その姿をかっこいいと、ただ単に尊敬していた私は知らなかった。彼のその迷いのなさに隠された、覚悟を…… 「主ではないか! こんなところでどうした?」 「あ、お兄さん! 久しぶり!」  その日、ある発表のリーダーに選ばれ、緊張でいっぱいになっていた私の前に、彼は現れた。思わず歓喜の声を上げる私に、彼は爽やかな笑顔を浮かべた。  彼の名は『戦車』の正位置、カード番号は7、意味は『積極性・リーダーシップ・頼りがいのある人望』などで、彼自身の

          先頭に立つ者の覚悟(戦車の正位置)

          自分の原点(恋人の正位置)

           目があったら最後、地獄の授業の開始。目を合わせなくとも話しかけられたら最後。恋愛のエキスパートでもある彼女からは逃れられない。 「さぁ、レッスンの時間よ主!」 「スパルタ授業の始ま……いえ何も申しておりません失言です」 「今日のレッスンのお題は『茶葉』よ!」  彼女の名は『恋人』の正位置、場合によっては『恋人達』と複数形で呼ばれることもある。カード番号は6、彼女は恋愛のエキスパートで、自身の経験から恋愛に対するアドバイスをくれる。  主な意味は『居心地の良い関係・運命の

          自分の原点(恋人の正位置)

          無言の圧力(法王の正位置)

          「……」  まただ、また彼は目で何かを語っている。彼は必要最低限の事しか話さない、代わりに目で語るのである。  終始無言の彼の名は『法王』の正位置。カード番号は5で、主な意味は『正しさ・秘密主義・計画的』など。この正しさは精神的なものを表す。 「……」 「あの…何? いやね、流石に言ってくれないと分からないから!」 「……」  必死に懇願するも、やはり変わらず無言のまま。仕方なく私は、じっと彼の目を見た。 「……」 (しなければならないことを放置して一体何になると

          無言の圧力(法王の正位置)

          ダメダメな父(皇帝の正位置)

          『皇帝』と聞くと、どんなイメージを抱くだろうか。国の父と考えられているが故に、威厳を持ち民を従える…そんなイメージが妥当ではないだろうか。  だが、私の近くにいる『皇帝』は…… 「あぁ……娘よ、来てくれたのか! 待っていたぞ!」 「女帝さんが様子を見に行ってくれって言ってたから……って何よこの散らかった資料は!」  ダメダメな人物です。  彼の名は『皇帝』の正位置。カード番号は4で、『女帝』の正位置と共に、一国の王として君臨している。意味は『威厳・偉大・責任感』、正に皇

          ダメダメな父(皇帝の正位置)