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敬愛の洗礼

2020.8.14
15:30



湿度が高いこの地は初めから
乗り気では無かったが、回らずに
後悔はしたくない為、降り立った。


歩みと共に鳴る熊除けの鈴を
鳴り響かせながら、目的のポイントに
到着し、ラダーを伸ばした。



洞に潜んでいたのは大型のコクワガタ




簡単に引き摺り出せた。



この時、
確かに羽音が聞こえた。





それは小さな赤い蜂であり、
可愛いものだといつも軽視していた。






羽音が聞こえなくなり、他の洞に
ドルクスが居ないかとフラッシュライトで
探していた所、身体を電気が撃ち抜いた。






何事かと一瞬怯み、次の瞬間右腕に
激痛が走った。





悶え苦しむ声を漏らしながら
ラダーを降りて右腕を確認すると、
さっきまで可愛いと敬愛していた
赤い蜂に攻撃されていた。





急いでその蜂を叩き、





よく顔を確認すると、
スズメバチの顔と重なった。


軽視していた蜂はスズメバチの
種類だったのか。



今更ながら自身の無知さに
反吐が出る思いの中、激痛は時間を
置いてやってくる。



ラダーも仕舞えぬまま、フラついていると、
傍にいたであろう仲間が私に向かって
飛んでくるのが見えた。



これは不味いと、携帯していた
ハチマグナムを取り出し、それに向けて
放つと、それは一目散に退避して行った。


激痛が走る中、何とかラダーを仕舞い、
車まで戻り、右腕を見ると、



一点、血が滲む箇所を毒が抜けないかと
摘むように揉みしだいた。




私は人生に於いて、洗濯物に紛れ込んでいた
アシナガバチに刺された事しか無く、
この痛みは比較にならないものだった。






兎に角この蜂の正体も知りたく、
またポイズンリムーバーを入手したく、
携帯電話の電波が届く場所まで
左腕でハンドルを操作してアクセルを
踏み込んだ。





電波が届く所で、仲間に状況を伝えると、
すぐ様病院に罹るように促された。




しかし、コロナ禍にて
関東の人間が採集でスズメバチに
刺されたからと安易に罹る事は出来ないと
自身を戒め、あれぐらいのボディーなら
死ぬ事はないと判断し、
ポイズンリムーバーを探しに町へと
向かった。




町の大きなドラッグストアにて
入店し、すぐ傍を通った白衣の女性に
ポイズンリムーバーは有るかと尋ねると、
ポイズンリムー辺りで食い気味で
「無いです」と一蹴された。





右腕はジンジンと痛み、時折大きな激痛が
走る中、アナフィラキシーショック状態は
見られなかった為、消毒と塗り薬で凌ぐ
事にした。
 


後程、赤い蜂で検索を続けた結果、
頭部と胸部が茶褐色、腹部が黒褐色の
攻撃性の高いチャイロスズメバチと
判った。



攻撃性が高いとあるが、
今までよく刺されなかったものだと
変な感心をしながら帰宅するか考えた。


18:30


かつやに入り、カツカレーを注文し、
疼く右腕を労りながら食べ終え、
カツを食べたのなら街灯で本命を
探すしかないと決め込み、再び山へと
車を走らせた。



山へと向かうと、真っ白な霧に包まれ、
全く以って視界の悪さに、
これではライトトラップは無理だろうと
車を走らせていると、何と2組が
ライトを霧に照らしていた。



何たる強者なのかと感心しながら、
街灯ポイントに付くも、強風と霧で
諦めざるを得ない状況の中、


21:44



一瞬本命かと見間違えたミヤマ♀と、




ミヤマ♂を確認するだけだった。


右腕は時折の激痛に悩まされ、


2020.8.15
0:51



家路を目指す事にした。

11:49



無事帰宅し、
仲間にメールを送信した。

 

西からの大移動では成果が上がらず、
現在までにオオクワガタは8頭、
目標となる二桁までは2頭となるが、
残り日数と天気予報からとても厳しく
思う中、目標達成に向けて作戦を練る。

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