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ひつじの犬 その1

ももは、我が家の三代目のわんこだ。

実家で犬を飼ったことはあった。
わたしが中学生の頃、駅前に捨てられていた「ラン」だ。
月に一度程度の頻度で駅前に犬が捨てられていた。当時の実家は田舎の駅前にあり、段ボールに入れられ捨てられた仔犬が、そこからふらふらと出て歩く様はかわいく、小さい頃から親に「飼いたい」と何度お願いしただろう。
駄目の一点張りだった母。それがなぜ急に飼うことになったのか。

最初は、わたしの同級生のお母さん(母の友達)に貰われることになった。しかし、抱いて帰ろうとすると、祖母の家(実家と繋がっているが玄関が別にあった)の階段をのぼり、祖母の足元で尻尾を振ったのだという。
祖母はその前年、交通事故に遭い、ことしは戌年、これも縁だから飼うよと母に言ったらしい。

学校から帰ると「おばあちゃんちに犬がいるよ」と母に言われ、急いで祖母の庭に入ると、それはもう、和犬のかわいさ満載の「ラン」が足にまとわりついてきた。あの日のあの光景は今でも鮮明にやきついている。ランにだけフォーカスが当たっていた。本当に。
ずっと犬が飼いたかった。なんてかわいいこがうちに来たのだろう。

ランはわたしの長女がおなかに入ったのと同時くらいに亡くなった。戌年に来て、戌年にお別れした。切迫流産だった寝たきりのわたしに知らされたのはすこし後だったのだけど(ランの死を知って、ショックでおなかの子が降りてしまわないか皆で相談した結果らしい)

ランは大きな犬で、散歩をしていると「こわいね」と言われることもあったが、わたしにとっては「かわいい仔犬」のままだった。

牛舎の前を散歩した時、牛がランに向かって突進してきて、あわてて大きなランを抱っこして走ったこと、散歩の好きなランは猛スピードで階段を下りわたしは数回階段から落ちたこと、鎖を切って逃走し、雑木林でこうもりの死骸と遊んでいるのをみつけ、泣きながら抱っこして小さな川を渡ったこと。わたしの記憶のあちこちに、ランがいた。

ちょびは、長女が6歳、次女が2歳の時に我が家にきた。
家人と長女で遊びに行った某犬牧場で「お譲りします」というかわいい犬がいたと聞き、慌ててわたしも見に行ったら、くりくりした目のかわいい色違いの子が数匹いた。
すでにさっきいた子のうち貰われた子もいたようだった。飼おう!きょうだいの中で、オスで足が太い(足が太い犬を飼えば健康だと言われていた)一番元気な子を選んだ。。
名前はもちろん、かの有名な漫画「動物のお医者さん」から。

当時、仕事が忙しく、深夜に帰ってきていた家人がケージから出して遊んでいる様子を当時、体調が悪かったわたしは布団のなかから聞いていた。廊下を走るちょびの鳴き声は嬉しそうで、仕事に疲れた家人の声も幸せな音をしていた。

ちょびは半年は室内犬だった。
ある夏の日、うんちをケージの外に大量に撒き散らし、わたしの逆鱗に触れ、お外の子になるまで。ここでお外に出なければ「きゃん」は、やってこなかった。運命って不思議だ。

ある朝、ちょびの餌をあげに外にいた家人の声がした。

「なんかいる!!」

あまりに緊迫した声だったので慌てて近寄ると指差す方向に肌色のモニョモニョしたものが動いている。

「もぐら?」

いや、違う。こ、これは!!ま、まさか?!
ちょびから微量な血が流れていた。
ペロペロとちょびが舐めている。
これはちょびが産んだの?!

えっ!だってオスだって。え???
混乱しながら、ちょび偉かったね、ひとりで産んだんだねと撫で撫でする。

思い当たる節があった。
すこし前に鎖を切って逃亡したことがあった。朝、玄関を開けると、ちょびがしっぽをふりながら近づいてきて、え?あれ?鎖ない?あれ?
あの夜か、、、

獣医に連れていき、ちょびが女の子であったこと、このちいさな生き物は間違いなく「犬の仔」のこと。「一匹しか産まないことはめったにないから子宮破裂しないか気をつけてください」と言われたものの、どう気をつけていいものやらおろおろ。その間にも、ちょびはペロペロペロペロとはだかの仔犬を舐めている。
両家に万が一あと何匹か生まれたら貰って欲しいと連絡。

結局、生まれたのはこの仔だけだった。

発情したちょびは、鎖をちぎり(発情って凄い!)どこかのお犬と愛を語り、朝になったので我が家に戻ってきた、らしい。(見ていないので想像)

一匹しか生まれなかったので、ちょびは一生懸命ペロペロしすぎて仔犬(きゃん)の毛が抜けてしまい、おっぱい以外は仔犬は家の中に入れるように医師から指示された。
おっぱい飲み終わったな、と思うと、ちょびごめんね、と手に載せて、きゃんを家の中へ。
ちょびはちょっと寂しそうな顔をしながらも、抵抗することなくわたしたちに委ねてくれた。(ちょびは賢い犬でした)

*ちょびはその後避妊手術を受けました。
*二匹になり鎖が絡まるので、外構工事をして犬専用エリアをつくり、出ていけないようにしました(本当は鎖をしなければいけないのだと思いますが)

ひつじの犬 その2へ続く

ももと先生(ShenShei)とお父さんの話を書こうとしたら、前段の話で終わってしまった。
推敲もほぼなく書きっぱなしですが。。

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