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無口なことり

口を開けているもの、
胸がはだけている者、
一枚の絵にはおさまらない
多層式に物語りが動く

雲の語り手は長文を好まない
なるべく丁寧に言葉を
ふっと耳に押し当てて
消えていくことが目的だから

今朝、虹が出ていたらしい
見たものと見ていないものの差は
意外にちいさく
その事実が鼓膜を揺らし
脳の奥に映し出されたら
わたしは、みたのだから

見えない、のつま先立ちを
いくら真似てもトーシューズで
踊れるようにはならない

指先でくるくる回す
もしも、物語りも
蓄音機のように再生されない

今日は、虹が出る日だ
13日の金曜日みたいに
カレンダーに書き込めない予定は
見えることの影で
ひっそり膝をかかえて
しずかに揺れて
夢の中の虹がいちばん鮮やかな
ことを知っている

大きな虹をみたよ
空を見上げた君の背中をみたよ
君も同じ虹をみていたね

語られる者からの視線が届くとき
たいてい短い針は2を指す

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