その会社の営業利益率、高いか低いか?

営業利益率とは、株式投資を行う投資家が会社を評価する時の重要な指標の一つです。

これ、高いか低いかの基準は何パーセントでしょう?

筆者は過去の経験から感覚的に
「8%程度ならまあ標準、10%超は結構OK、5%未満はちょっとダメ」
というイメージを持っています。

実際の上場企業の平均値はどんなものか、調べてみました。


具体的な数字を述べる前に、そもそも「営業利益」とは何か?を
初心者の方の為に説明します(詳しい方は(1)(2)はとばして下さい)


(1)営業利益とは何か?

会社は色んな活動を行い、利益を稼いだり損をしたりしてます。
その損益は、日本の会計基準では次の3つの損益に分類されます:

①営業損益
②営業外損益
③特別損益

この3つの損益を合計し、そこから法人税を引いて、最終損益「いくら儲かったか(或いは損したか)」が算出されます。
その最終損益が黒字の場合、その一部が株主の取り分「配当」となる訳です。→ 最終利益に対する配当の比率を「配当性向」と言います。
  (株価に対する配当の比率「配当利回り」とは別物です)
→ 赤字なのに配当する会社や、黒字でも利益の額を超えて
  配当する会社も時々いますが、ここでは割愛。

上記の3つの損益を簡単に説明すると;

① 営業損益; 
 その会社の営業活動を行う事により得られた損益。
 例えば、製造メーカーなら、モノを作って売って得た収入から
 そのモノを作って売る為にかかった費用、工場の家賃や物流費、
 広告宣伝費、営業部門のみならず管理部門の人件費など
 全ての費用を引いて、得られた損益です。
 → 黒字の場合を「営業利益」と言います。

② 営業外損益;
 文字通り、営業活動以外の事で得られた損益です。
 主に預貯金/借金の利息や財テクなどの金融活動による損益、
 為替による損益、関係会社の利益の取り分、などが含まれます。

上記①と②の合計を「経常損益」と言います。

③ 特別損益;
 普段はやらないけど、その年はやった特別な事項に
 よって得た損益を「特別利益」と言います。
 本社を移転して元の土地を売ったら儲かった/損した、
 取引先の株を政策的に保有していたが、思い切って売ったら
 儲かった/損した、などが含まれます。

上記の内、その会社が普段通りに活動しそこから得た利益、つまり、その会社の本質的な「儲ける力」それが、営業利益で、企業を判断する上で重視される訳です。


(2)営業キャッシュフローとは何が違う?

投資家が重視する数値に「営業キャッシュフロー」というのもあります。
これは「営業活動をして実際に入金した金額から、実際に支払った金額を引いて得られた現預金」です。

営業利益とどう違うのでしょうか?

個人の生活で考えると分かりやすいです。

毎月給料をもらい、そこから生活費を支払って生活しているとします。
普段は給料は現金で受け取り、生活費も現金で支払っていました。
→ この場合、営業利益と営業キャッシュフローとは一致します。

でもその月は、生活費を全てカードで払いました。
カードの引き落としは翌月です。
この場合のその月の営業利益とキャッシュフロー(現金収入)とは、下図のように大きく食い違います。

筆者も若くて安月給なのに遊び好きだった頃に覚えがあります。
月末になると資金繰りが苦しくなり、飲み会をアレンジして幹事としてカードで払い、皆から会費を現金で受け取って取り合えず凌いだりしたものでした。
→ 翌月、もっと苦しくなるのに...

つまり、その時点での資金繰りが上手く回っているかどうかを見るには、営業キャッシュフローは非常に重要です。

しかし、収入と支出のバランスとを改善せねば本質的な問題は解決しません。

この、本質的な儲ける力を示すのが「営業利益」で、売上に対する営業利益の比率が「営業利益率」です。

(3)営業利益率の平均値は?

本日、6月14日時点で東証のプライム、スタンダード、グロースに上場している企業の総数は、3,831銘柄です。

一方、筆者が証券会社の検索サイトでチェックしたところ、検索できたのは全部で 3,804銘柄でした。

この 3,804銘柄の、現在進行中の年度の通期見通しの営業利益率を調べました。通期見通しを公表していない所は直近の通期実績値を代用しました。

その結果;

①売上がゼロで営業利益率を算出できない所; 7銘柄
 → 主にバイオ創薬系です。
②営業赤字の所;    179銘柄
③営業利益がゼロの所; 123銘柄
 → 営業利益の概念がない「銀行」なども含みます。 

これらを除いた残り 3,495銘柄が営業黒字の銘柄です。

この 3,495銘柄の平均値は; 8.3% でした。
→ 冒頭で述べた感覚的に思っていた数値とほぼ一致しました!

営業利益率は、その会社の業種によっても大きく異なるようです。
東証の上場企業は全て東証が決めた 33種類の業種に分類されます。
この業種毎も平均値は次の通りでした。

・金融系(水色)の営業利益率が高いのが目立ちます。
・製造業(緑)は医薬品や精密機械などは高いですが、
 全般的には低めのが多いようです。

単純に「平均値8%を超えれば良い」と判断するだけではなく、その業種の中で高いか低いかも見た方が良さそうです。

一方、全業種(銀行除く)を平均値の高い順番に並べ直すと次の通りです;

・証券・商品・先物と鉱業が 20%超。
・緑色が10%以上で、上述の金融、医薬品、精密機器の他に、
 情報通信や不動産が食い込んでいます。
・水色が平均値である 8.3%より高い業種です。

尚、営業利益率は業種だけでなく、ビジネスモデルによっても異なってきます。

例えば、80円のものを買って 100円で売ると、利益は20円です。
この場合、この20円から経費を引いた残りが営業利益で、営業利益率はこの営業利益を売上 100円で割って算出されます。

ところが、同じ80円のものを自分では買わず、買い手と売り手とを仲介し、20円を仲介手数料として受け取った場合、売上は20円になり、ここから経費を引いた残りが営業利益です。
この場合は、営業利益率は営業利益を売上 20円で割って算出されます。

つまり、同じ商品を扱い、同じような営業活動を行なってたとしても、商品を自分で仕入れて販売する販売業者より仲介業者の方が営業利益率は高くなります。→ 証券・商品・先物の営業利益率が高いのは、仲介がメイン
  だからかもしれません。

従い、単純に営業利益率の多寡を見るだけでなく、ビジネスモデルも見た方がいいかもしれません。

尚、各業種毎の営業利益率トップ3の企業を選びリストにしました。
PER、PBR、配当利回りも付記しています。
良かったらスクリーニングの際の参考資料としてお使い下さい。

「 - 」とあるのは、通期決算見通しや配当見通しを公表していないところです。

以上です。

尚、データには計算間違いや記載間違いはないように努力はしていますが、あるかもしれません。その点は予めご了承下さい。

また、これは投資推奨ではありません。
投資は自己責任で!


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