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第1回: スタートアップにおける経理業務の重要性と課題(1/6)


1.はじめに


壮大なビジョンを持って会社を創業しこれから仲間と共に世界を作っていく、スタートアップの初期段階はそんな夢や情熱の詰まった時間です。そこでは、製品開発やマーケティングといった売り上げを立てるための仕事に多くのリソースを注ぎ込みますが、一方で経理業務などのバックオフィス業務は後回しにされることも少なくありません。しかし、経理業務を軽視することで発生する問題は、事業全体に深刻な影響を及ぼす影響があるということを理解しておく必要があります。

このシリーズではスタートアップが経理業務をどのように捉え、どのように整備していくかを解説していきます。シリーズ連載第1回目となる今回の記事では、経理業務がスタートアップにとってどれほど重要であり、初期段階でどのような課題に直面するかに焦点を当てます。

2.スタートアップが直面しがちな課題

①資金繰り


スタートアップにとって、資金繰りの管理は死活問題です。多くのスタートアップは、限られた資金を効果的に活用するため、収益化や資金調達に向けた計画を立てますが、資金繰りが適切に管理されていないと、計画通りに進まないことが多々あります。資金繰りの管理不足は、キャッシュフローの悪化を引き起こし、最悪の場合、事業の継続が困難になる可能性もあります。

②源泉徴収税


さらに、税金の未納も特にスタートアップにとって大きなリスクとなります。年に一度の税務申告については多くの経営者がその必要性や期限を認識していると思いますが、源泉徴収税には注意が必要です。源泉徴収は給与や報酬を支払う事業者が、支払うときに所得税を差し引いて徴収することで、事業者は徴収した税金を代わりに納付する必要があります。源泉徴収の対象となる支払いには複数あり、例えば従業員への給与といった定常的に発生する支払いでは抜け漏れのリスクは小さいものの、デザイナーなどとのスポットの取引にかかる支払いなどでは、源泉徴収の必要があると気づかず、徴収・納付漏れということが発生してしまうことがあります。その場合、不納付加算税と延滞税、2つのペナルティが課せられることがあり(条件によります)、結果として本来必要のない出費を招いてしまいます。

③法定調書


また、法定調書の提出漏れもスタートアップが直面しやすい課題です。毎年1月31日までに前年の支払いに係る法定調書を提出することが企業に義務付けられています。こちらは提出期限に遅れても追徴課税のようなペナルティはないものの、未提出の場合や虚偽の記載に対しては、「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」に処されることが、所得税法上において明確に規定されています。法定調書の作成に関しても、支払先の個人のマイナンバーの記載が求められており、期限ぎりぎりになって慌てて作成しても必要な情報の取得が間に合わないということもあり得ますので、普段の経理業務においてこれらの情報取得のフローも組み込んでおくことをお勧めします。

3.経理業務の重要性


経理業務は、単に数字を管理するだけの作業ではありません。正確な財務情報を提供することは、経営者が適切な意思決定を行うために不可欠です。例えば、資金繰りの悪化が早期に把握できれば、迅速な対策を講じることが可能になります。また、投資家や金融機関に対して信頼性のある財務情報を提供することで、追加の資金調達やパートナーシップの機会を得ることができます。
さらに、経理業務を適切に行うことで、法的リスクを回避することができます。税務申告や法定調書の作成において、法律に則った処理が行われていれば、罰金やペナルティのリスクを最小限に抑えることができます。これにより、企業の信頼性を維持し、長期的な成長を支える基盤を築くことができるのです。
最後に、投資家やステークホルダーからの信頼を獲得するためには、経理業務が不可欠です。スタートアップは、事業の進捗や財務状況を適時に報告することで、投資家の信頼を得ることができます。これにより、追加の投資や支援を受ける可能性が高まり、企業の成長を加速させることができます。

4.さいごに


スタートアップが成功するためには、初期段階から経理業務を適切に整備することが不可欠です。資金繰りの管理、税務申告、法定調書の作成など、経理業務は企業の存続や成長に直結する重要な要素です。これらの業務をおろそかにすると、法的リスクや信頼性の低下といった深刻な問題に直面する可能性があります。
次回の記事では、スタートアップが業務委託を活用して経理業務を整備する方法について詳しく解説します。経理業務を外部の専門家に任せることで、スタートアップが直面する課題をどのように解決できるのか、一緒に見ていきましょう。

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