師匠へ(終演挨拶に代えて)


師匠
初めてお会いしてから11年が立とうとしています

演技の基礎のほとんどを教わって
大声を出すことばかりでいっぱいいっぱいだった頃から
行間、リアクション、足取り、目線、そんなことまで

私の演劇、趣味でもライフワークでもストレスの発散でもなく、じゃあなんだったっけって思ったとき、
いつも言っていた、自分を頑張るということ、それだったなぁと
私の演劇はいつも自己実現でした

なりたい自分になるということ、
舞台上にいる時が、一番自分らしくいれること

自分を操れて、喋りたいように喋って、生きたいように生きれること、日常ではうまくできないことの方が多いから、生きるために続けました

芝居で泣けるようになるまで続けます、と宣言してから10年来の目標を、去年初めて達成しました
自分をがんばるって、こういうことであってるんでしょうか。まだまだ分かりません。

人を笑わせるお芝居、たくさん教えてもらいました
今日もお客さんが笑ってくれました

「もうこの人から私が吸収出来ることは、多分吸収し尽くしたな」と思ったとき、もう既に、なんでもいいから舞台に立ちたいんじゃなく、何らかのやりたい演劇があったんだと記憶しています
折しも、それが劇団畝傍座にあって、怪奇月蝕キヲテラエにあって、今ここにいれていて
わたし今小劇場にいるんですよ、って
たまたまミラクルで見た、聞き覚えのある劇団名のフライヤーにあなたの名前を見つけて、
いつか、そのうちいつか挨拶にいこう
そうぼんやり思っていました

時間のかかった目標を達成しちゃったいま、次は何を目標にしたらいいでしょうか
何を支柱に自分をがんばったらいいでしょうか
次のオファーが来るまでに考えておかねばなりません

好きだけど、もう好きなだけでは続けられません
大きいステージには本当は立ちたいけど、芸能人になりたいわけでもなくなってしまったし、これでお金を稼げるようになりたいわけでもないし、やりたいお芝居以外やりたくないし、気づいたら随分我儘になってたみたいです

折しも、この目標達成した後という節目と、師匠の訃報の知らせと、久しぶりの劇団出演復帰とが重なって、こんな個人的な感情すら役づくりの肥やしにさせてもらった訳です。

怪奇月蝕キヲテラエdevice03
「好きな子として、生きていく」全公演終演いたしました。
ご来場いただいた皆様、誠にありがとうございます。

最後に
近田佳明氏のご冥福を心よりお祈りいたします。


2020/2/12 御上段戯 役 木山りお

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