川崎ヘイト街宣へのカウンター - 2021年6月6日(日)/神奈川県川崎市
2021年6月6日(日)、神奈川県川崎市川崎区(JR川崎駅東口)で行なわれたヘイトスピーチ街宣に対する反対行動(カウンター)の記録
罰則付き差別禁止条例が昨年7月に施行された川崎で、排外主義政策を掲げる政治団体「日本第一党」の元党員が立ち上げたヘイトスピーチ団体「日の丸街宣倶楽部」がまた街宣を行った。それに対し、今回も差別を許さない人々が多数集まり激しい抗議や周知行動など、多面的な反ヘイトスピーチのアクションが行われた。
この日、街宣の開始前に主宰者男性と参加者男性の2名が抗議者への暴行容疑等で警察に身柄を拘束され、主宰者不在のまま街宣が行われた。雨の降る中、いつも以上にグダグダな街宣に対してカウンターは抗議の声を上げ続けた。
【動画】
2021.6.6川崎ヘイト街宣へのカウンター(7分17秒)
前回(2021年4月11日)の街宣の時と同じく、今回も街宣やカウンターの位置関係が複雑で伝えるのが非常に難しいフォーメーションだった。前回まったく上手に描写できなかった己の無力さを嘆き、今回の映像では現場の位置関係や取り巻く環境がどうなっているのか可能な限り丁寧に描くことに努めた。
当日は撮影することに忙しくて余裕がなかったのだが、よくよく考えたら映し出されている神奈川県警察の大袈裟でばかげた警備体制はなんなんだろうと思わないでいられない。特に今回はレイシストを駅まで護衛している警察の様子をハイアングルで捉えているので、異常さがよくわかるはずだ。
カメラを新しくしてから2度目の撮影なので、ある程度は操作にも慣れてきて、そこそこクオリティ高い映像作品ができた。新たに望遠ズームを入手し、撮れる画が広がったこともあり、画角の変化や撮り方にメリハリをつけたことで観やすい映像になっていると思う。
カメラの性能が良くて普通に映像がきれいなので、画質の力だけで観られる映像になっているまである。もしかしたら、私の新たな1ページが始まってしまったのかもしれない。川崎の今を見つめつつ、映像の画質のチェックがてら視聴してみてほしい。
【写真】
JR川崎駅東口広場の中央にそびえ立つガラスの大屋根の下にあるガラスの回廊の南西側(川崎ルフロン側)にレイシストは陣取って街宣を行った。
ガラスの回廊に、普段は見かけない「横断幕・ビラの掲出禁止」の貼り紙が掲出されていた。のちに判明するのだが、これは川崎警察署・警備課からの依頼で、施設を管理する川崎アゼリアが貼り紙を掲出したとのこと。
表現の自由を持ち出しレイシストのヘイトスピーチを容認してきた警察が、このような形で表現の自由を脅かすことがあっていいはずがない。川崎駅東口広場を管理しているのは川崎市のはずだが、そこを飛ばして施設の管理者に直接お願いをして貼り紙を掲出させる警察のやり方にも疑問を感じる。
今回も街宣場所の周辺は鉄柵で囲まれ、ガラス回廊の南西側通路は通行止めされていた。これまでレイシストはガラスの大屋根の一番広い部分(ガラスの回廊南東側)で街宣を行っていたが、カウンターの抗議により前回からこの場所に移っている。
これまで街宣が行われてきた場所の場合は通路の一部封鎖で済む時があり、駅利用者の通行が可能であった。カウンターがレイシストを追いやったからこのような形になったとも言えるが、上の写真を見てわかるように、緩衝地帯と思われる無駄に広いスペースが設けられている。一体を封鎖する理由はなく、やろうと思えば人を通すことができる。このような警備を行っているのは神奈川県警察である。
抗議行動は、レイシストに直接対峙して行われた回廊側と緩衝地帯を越えた向こう側の二手にわかれて行われた。
レイシストと緩衝地帯を挟んだ側のカウンターの抗議の様子。上の写真ではほとんど見えないが、背の高い木の向こう側に直接対峙しているカウンターがいる。街宣場所から距離が遠いためか、こちら側は比較的人数が少ない。
この日は雨が降っていて、制服警察官は全員レインコート(雨衣)を着用していた。その中に前ボタンをしていない、開けっぱなしの警察官がいることに気が付いた。最初はイキってる機動隊員がいるのだと思ってしまったが、そんなはずもなく服装の違いには必ず意味がある。
答えからいうと、これらの警察官は機動隊の伝令だ。小隊長以上の警察官(白い指揮棒を持っている指揮官)についていて、隊員に隊長の指示を伝えたり、無線などの連絡を隊長に伝えたりする「お付きの人」だ。
レインコートを着ると階級章をはじめ、所属を表す腕章や記章など服装等の違いで区別していた情報源が隠れてしまうので、部隊運用の要とも言える伝達役である「伝令係」を見つけやすいよう、この日はボタンを留めないという服装にさせていた。その他、中隊長以上の警察官は活動帽ではなく制帽を着用して区別できるようにしていた。
雨天時はこのように細かい服装の違いによって役割等をわからせるように工夫していることがある。縦割り組織である警察にとって指揮統制の確立は重要なのだ。
【令和3年6月15日川崎市長記者会見】
話が少し脇道にそれるが、この街宣の9日後に開かれた市長定例記者会見で、福田紀彦市長は川崎駅前での「騒ぎ」に関して「双方に節度が求められる。一般市民からすると迷惑としか思えない。」という所感を述べた。罰則付き差別禁止条例の全面施行から来月で1年ということで記者から質問があり、川崎駅前で行われている街宣とそれに対する抗議行動について市長はそう答えた。
以下に6月15日の定例会見でのヘイトスピーチ関連のやりとりをすべて掲載する。少し長いが、市長の発言が気になった方は全文に目を通してみてほしい。
定例会見で市長は「双方(両者)に節度が求められる」ということを4回繰り返し述べ、市民という主語を使いながら「迷惑である」と3回主張している。毎月のように川崎駅で行われている対立を厄介に思っているのは市政を運営する側からしたら当然かもしれないが、全国に先駆けて罰則付きの差別禁止条例を制定した者として市長は傍観者であってはならないはずだ。それに「市民の迷惑」の原因が双方にのみあり、行政側には何も問題がないと言えるのか。
しかしながら、一方でカウンターは少し手を抜いてもいいような気もしている。路上でレイシストに罵声を浴びせ中指を突き立てることは必要で続けるべきことだが、執着しすぎる必要はないだろう。もしそこを居心地の良い場所と感じてしまうようだったら少し注意が必要かもしれない。内輪の結束は時に行動の過激化に繋がりかねない。言い切れるようなことではないが、カウンターは組織ではないし友達同士でもない。
レイシストが活動をするからカウンターが現れる。どっちが先かで言ったらレイシストが先でそちらに責任はあるのだが、カウンターの行動を迷惑と感じる往来の市民も存在することは忘れないでいたい。とはいえカウンターの存在がなければレイシストの差別は野放しとなってしまうため、根本的な解決あるいはレイシストへの決定的なダメージを与える方法も同時に考えていく必要がある。
カウンターがうるさいのは掃除機をかけている時にテレビの音が聞こえないくらいのことと思ってくれればいいのだが、現実にはそうもいかない。
もう毎度お馴染みになってしまった、街宣終了後に行われる警察によるVIP待遇の帰宅エスコートである。警察は通路の封鎖も厭わず全力でレイシストの帰り道を確保する。
街宣が終わり、雨も上がったのでレインコートを脱いで手に持って歩いている警察官の腰には新型ホルスターが見えた。現場で警備課の警察官が新型ホルスターを装備しているのを見たことはないので、所轄警察署の応援要員だと思われる。
大抵の場合、警備に携わる制服警察官は拳銃を携帯していない。デモや抗議などの現場でもみ合いになった際、拳銃が脱落したり奪われてしまうことを避けるためだ。ごくまれにこのようにホルスターを装備している警察官が現場にいたりするが、近くの交番のおまわりさんだったり、警備課以外の警察官だったりする。または、警備警察でも警部あるいは警視以上だったり、中隊長や大隊長など上のほうの指揮する立場の警察官は警備の現場でも拳銃を装備していることがある。
上の写真をよく見てみるとホルスターには拳銃が入っておらず、このような空の状態で警備活動をしている警察官もたまにいる。神奈川県警察官服制規程の第9条には「警察官は、けん銃を携帯しない場合は、けん銃入れ及びけん銃つりひもを取り外すものとする。」とあるので、本来はホルスターごと外さなければならない。規程ではけん銃入れごと外せとあるが、所属長が許可すれば拳銃だけ抜くことは可能なはずで、ルール違反というわけでもなさそうだ。
ホルスターを外さない理由は、単純にベルトから外してまた戻すのが面倒だからだろう。装備品の位置は定められているが、ミリ単位で決められるわけでないし、それなりの重量がある拳銃を装備するとなると自分なりにしっくりくる位置にしたいはずだ。そこまで位置を気にしない人でも、外さなくていいなら外したくはないだろう。
KAWASAKI AGAINST RACISM !!!
【映像メモ】
ビデオカメラ(ハンディカム)からミラーレス一眼(SONY α6400)に替えて2回目の映像だったので、メモ程度であるが映像のポイント等を書き記しておく。これを読んでから映像を見返してみたら何か発見があるかもしれない。
[1]やはりセンサーのサイズの大幅な拡大は、著しい画質の向上をもたらしてくれた。レンズもハンディカムのように内蔵式ではなく、交換式の物でレンズの口径が大きくて写りも良くなった。プラカード等の物撮りでもいちいち画になるので編集で捨てるべきか採用すべきか悩むことが増えてしまった。
[2]ビデオカメラはズームレンズが便利で思いのままの画角が撮れて助けられてきたが、α6400には「全画素超解像ズーム」という画質の低下なしにデジタルで約2倍のズームができる機能があり、ビデオカメラに近い使い方ができて便利だ。今回も何度か使う機会があった。
[3]レンズは前回も使っていた「SONY E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS」(SELP1650)に加え、当日の午前中に届いた「SONY E 55-210mm F4.5-6.3 OSS」(SEL55210)の2本体制で臨んだ。それぞれ35mm換算で「24-75mm」「82.5-315mm」という頼もしい画角のカバー力が既にあるのだが、「全画素超解像ズーム」を使用すると「24-150mm」「82.5-630mm」という恐ろしいズームレンズが誕生する。撮影の途中でレンズ交換するのはハードルが高いが不可能ではなく、実際に2回くらいはレンズ交換を行った。
[4]使っているレンズは、どちらもキットレンズなのだが動画撮影用レンズとして使いやすいので、とりあえずはこの2本だけでいいかなと思った。軽量小型のキットレンズでこの程度の映像が撮れれば十分な気がしている。
[5]前回は60pで撮影したが、あえて60pで撮る必要性もないので今回から30pにすることにした。
[6]基本的にはAFで撮っていたのだが、オートだと制御が難しくところどころ意図と違う対象にピントが合ってしまうので、MFやタッチフォーカスも併用して使っていた。
[7]露出に関しては(面倒なので)撮って出しで、撮影時のまま何もいじっていない。その点ではα6400の購入を考えている人の参考になるかもしれない。映像の後処理は、歪みが気にならないレベルで手振れ補正を弱めにかけたくらい。
[8]左右の重量バランスを取るためマイクをカメラ側面に設置していた関係で違和感のあるステレオ音声になってしまい、後処理でモノラルにした。スタビライザーのバランスに大きな影響がなければ、今後は様子を見てカメラの上面にマイクを設置して臨場感のあるステレオ音声で収録したいと思っている。
[9]カメラがミラーレスになり軽量化されたことによって、ハイアングルが撮りやすくなった。カメラ底部にアルカスイス規格のプレートを取り付けていて、スタビライザとブームポール(一脚)にも同規格のクランプを取り付けて換装がすぐに行えるようにしている。
[10]今回も順撮りで撮影をしている。記録映像として時間軸をいじるようなことはしたくないので、編集では時間を前後するような並べ方にはしないようにしている。常にカットの繋がりを考えながら撮影を行なっている。大変ではあるが、順撮りして編集も時間順に繋ぐことは、デモの撮影を始めた時からずっと続けているこだわりである。
[使用機材]
SONY ILCE-6400(α6400)
SONY E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS(SELP1650)
SONY E 55-210mm F4.5-6.3 OSS(SEL55210)
UURig R032
TASCAM TM-2X
クリックリリースプレート・クランプ(アルカスイス規格)
Hague Mini Motion-Cam
DAIWA MB203B
BENRO DJ90
全国各地のデモや抗議などを自腹で記録しています。サポート頂けますと活動資金になります。よろしくお願いします。