見出し画像

心を揺らす舞台と出会えたら

私は舞台鑑賞が好きだ。劇団四季のような有名どころから、200席ほどしかない小さな会場で上演しているものまで、月に一度か二度は観に出かけている。

舞台鑑賞を趣味とする人は私の周りにも数人いるけれど、やはり好みはそれぞれだ。
かく言う私は、演目や役者さんの好みはそれほどなく、「なんでもこい」タイプだ。と、思っていた。

人生で一番衝撃を受けた舞台がある。それは、昨年秋に東京芸術劇場で上演された、「スリルミー」だ。

実際に起こされた事件をもとにした演目で、主演二名とピアノのみで進行する、舞台装置も演出も至ってシンプルな舞台だった。

それなのに、信じられないほど心が揺れた。心が揺れるって、こういうことなんだと初めて思い知った感じだった。

私の中にはあのときの景色と、役者の息遣いと、苦しいくらいに張り詰めた空気と、涙でツンとする鼻の痛みが確かに残っているのに、あの時感じたことをどんな言葉で表現したらいいのか分からない。

いつか的確な言葉で外に出せるようになるまで、私はこの気持ちを何度も反芻し続けるんだろうと思っている。それは時に苦しいけれど、ここまでの舞台にはなかなか出会えない。

「スリルミー」を観ることができたのは、本当に幸運だった。きっとそんな出会いがまたあると思ってしまうから、私は舞台鑑賞をやめられない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?