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私の歴史~~武術に憑りつかれた男25

社長さんは言いたいこと言って、またどこかに行ってしまった。

それを見計らうかのように部長さんがひとこと。

「Hさん、前の発注書のとおりでいいよ。」

Hさん 「え、部長、だいじょぶですか?」

部長 「だいじょぶ、だいじょぶ。どうせそこまで細かいとこみてないんだから。」

Hさん 「わかりました。じゃあよろしくお願いします。」と言って前書いた注文書を渡した。

部長 「石月君だっけ。うちの社長を見てびっくりしただろ?厳しすぎてさ、下がついて行かなんだよ。
    このまえも新入社員の営業成績が悪いっていって、みんなの前でどなりつけてさ。そいつ、翌日から来なくなったんだ。」

私 「あ、そうなんですか。」

部長 「まあ、社長には言わせるだけ言わせておけばいいと思っているよ。君もそんな感じでつきあえばいい。」

社長と部長が親子でなければ、こんな変な事言わないんだろうなと思った。
しかし、ほんとに前の注文書通りで大丈夫なんだろうか?
不安になった。

しばらく世間話をして会社を出た。

私はHさんに訊いた。

「Hさん、ほんとに大丈夫ですかね。あとで社長がだめだと言ったから返品なんてなりませんよね。」

Hさん 「まあ、いつもあんな調子だから、大丈夫らろ。あの部長、プライド高いから自分の言ったことには責任もつと思うよ。」

次は浜松の卸団地に向かった。
海風がとても強く、青空がきれいだったことを憶えている。

団地の中にあるMA社に到着した。

Hさん 「まいど~。お久しぶりです。」

すると中年の女性が出てきて「あれ、だれやったかな?こんな人知らんけど・・・・。」

Hさん 「専務、冗談きついわ~。」

専務 「Hさん、大きい取引先持ってるから、うちらみたいな小さいとこ相手にせんだら。」

Hさん 「いや、そんなことないない。まあ貧乏暇なしで、ばたばたしていて、つい・・・・。」

専務 「でも、秋物も発注したし、今日はな~んも用ないんちゃう?」

Hさん 「今日は新入社員の紹介もかねて寄らしてもらいました。」

専務 「ええなあ、あんたとこ新入社員なんて入れる余裕あって。」

Hさん 「いや、うち、かなり人手不足で大変だったんですわ。だから専務さんにも迷惑かけて・・・。」

専務さん 「いや、別に迷惑なんてないけど・・・・。そんでHさん、いつ会社辞めんの?」

Hさん 「専務、そら、ひどいわ。やめるなんて言うてません。」

専務 「引継ぎに来たんとちゃうの?」

Hさん 「違いますよ。でも、時々一緒に来ますんで、出荷のこととか、追加とか、彼になんでも言ってください。」

専務 「ほなら、返品のこととか、値引きのこととか彼氏に言うわ。」

Hさん 「そら冗談きついわ。」

専務 「ちょっとお、私、こう見えても忙しいんや。なんかサンプル持ってきたなら、はよ見せて、とっとと帰ってや。」

Hさん 「今日はお値打ち品、いいもんみつくろって持ってきました。」

専務 「お~い!全員集合!」

お店にいた中年女性2人が集まってきた。

専務 「安いもんには目がない、うちの美女軍団が集まってきたで。」

Hさん 「なんかハイエナのようですな。」

専務 「ちょっと、あんたら聞いた?このHさんが、あんたらのことハイエナやて。」

店員さん 「おいしいもん食い過ぎて太ってしもたハイエナです。安くておいしいもんしかいりません。」

忙しいと言ったわりには、このような掛け合い漫才みたいな会話が延々と続き、いつ商談が始まるんだろう?と心配になってきた。

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