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人は見かけによらぬもの

地元の商店街には、時として不思議なオジサンが出没する。

数年前には「マジックオジサン」と呼ばれるおじさんがいた。
ごく普通のサラリーマン風で、きちんとしたスーツに身を包みネクタイも締めて。

なのに…
頭をマジックで隙間なく塗りつぶしてる。(多分、油性)

何故そうなってるのか?
誰も本人に聞いた人はいないだろうから、誰も訳なんて知らないに違いない。
平日の商店街にどこからともなく現れて、普通に歩き過ぎていく。
行き先に興味があったが、ついていくのもそれはそれで怪しすぎる。

最初に見かけた時、頭の中は「?」ばかりで何が何だかわからなかった。
笑って良いのか?(いいわけない)
誰かに話して良いのか?(誰が信じる?)


その後、思い切って友人にその時の事を話したら
「あーマジックオジサンね。みんな知ってるよ!」
とあっさり言われてしまった。

友人曰く「カツラを買うお金が勿体ないけん、マジックで良かろうって描いてるんだってよ。面白い人よね。」と明るく笑った。

えっ…そんなお茶目な理由だったの?
見てはいけないものを見てしまったようで、ドギマギしていた自分がものすごく滑稽に思えた。


ここ数年、マジックオジサンの姿を見かけなくなったと思っていたら、更なる不思議なオジサンが登場していた。


お顔は、間違いなく「オジサン」
なのに…
花柄のワンピースを着て、その上にピンクのトレンチコートを羽織ってる。
縦ロールのウイッグに、つばの広い帽子をかぶり
お髭があるのに、口紅つけてる。

で、そのいで立ちで、キューピーちゃんを座らせたベビーカーを押しながら歩く。

そのオジサンを初めて見たのは、アーケードの中のおもちゃ屋さんの前だった。
私の頭の中は再び「?」でいっぱいに。

このオジサン、もしかして…
子どもさんをなくしたショックでこうなってしまったのかもしれない。
何故だかそういうイメージが浮かんで来てしまい、笑うどころか気の毒になって、足早にその場を去った。


その後、手作りの教室で、ふと誰かが
「そう言えば、この前、あの人見たよ!ほら、女装してベビーカー押してるオジサン」と言った。

「ああ~知ってる!知ってる!あの人ね」
生徒さんたち全員が頷く。

えっ?何?みんな知ってたの?

「それにしてもさあ~パフォーマーって大変だよね。あんな恰好までしてさ。」

ちょっと待て!パフォーマーって何?

「いやーだ。先生、知らないんですか?あのオジサン、女装してあちこちで踊ったりしてお金稼いでるんですよ~。特に、女子高生に人気なんだって!」

えー!ウソでしょー!
なんだそりゃ~と言いたい気分。

見ず知らずのオジサンの身の上を勝手に案じてたけど
しっかりお金稼いでる元気なオジサンだったんだ。
しかも女子高生に人気なんて…
実は、YouTubeとかTikTokとかやってたりして!
今の時代、あり得なくもない。


わが故郷は、取りあえず平和ということで。
良かったー

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