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【魔法少女】【感想】アニメ『デリシャスパーティ♡プリキュア』〜自分で咀嚼した言葉の大切さ〜

こんにちは、唐梨です。
今日は『デリシャスパーティ♡プリキュア』の感想について書こうと思います。
それでは早速いってみましょう。

なんとか次回作『ひろがるスカイ!プリキュア』が始まる前に書き終えたいと思っていたので、間に合って良かった…!



『デリシャスパーティ♡プリキュア』とは?

プリキュアシリーズ第19作目。通称デパプリ。
2022年2月〜2023年1月にかけて放送されました。
つまり、終わりたてホヤホヤ!
改めて、スタッフの皆様、毎週の楽しみを供給してくださり、本当にありがとうございました!



本編の前に

菱川花菜さんの名演技

本編の感想の前に、まず最初に伝えたいのがこちら!主人公の和実ゆい役の声優さん、菱川花菜さんです!

菱川さんはオーディションの時点で現役女子高生だったという、現在19歳の若手声優さん。恥ずかしながら、私はデパプリを視聴するまで存じ上げなかったのですが、とても素晴らしい名演技でした!

10代にしてこのお芝居、という「年齢のわりに技量や胆力がすごい」というすごさもありますが、年齢関係なしに、ゆいちゃんの声は菱川さんがぴったりだな、というイメージがものすごくあるのです。

ゆいちゃんの元気いっぱいなところ、天然なところ、時に迷ったときの心のゆらぎ、信念をもって相手を鼓舞するときの力強さ、物理的な怪力の力強さ(笑)、もろもろ菱川さんが声を吹き込んでくれて本当に良かったな~と素人ながら思いました。改めて、菱川さんお疲れ様でした(もちろんほかの全声優さんが素晴らしかったことも言わずもがなです!)。



油布京子さんの可愛くてカッコいいキャラデザ

今回のキャラデザは油布京子さんという方が担当されています。この油布さんのキャラデザがすごく良かった!

基本ベースは女児向けアニメらしい、目が大きくて可愛らしいデザインで。でもそれでいて男性キャラのカッコよさもあって。すごく感覚的ですが、なんか『ちゃお』っぽい持ち味の絵柄だなと思いました。

何より、プリキュアの衣装のディテールが細かくて可愛い!!!いえね、プリキュアの衣装は毎年どれもこれも可愛いので、結局ぜんぶ可愛いのですが(笑)

なかでも特に、今回変身するプリキュアは「和食」「洋食」「中華」「デザート」とテーマが独特のため、よりデザインの注目ポイントが際立っておもしろいなぁと思いました。

ゆいぴょんの足袋を模した靴とか、ここぴーのキャンディみたいな髪飾りとか、らんらんのチャイナ服とか、あまねんの金平糖みたいな髪に散りばめられたやつとか、可愛いのですよ!!!



癖になる変身バンク

上記に関連して、変身バンクも癖になります。

おにぎりやパンを食べながらというのもびっくりしましたが、まさかの麺をすすりながら変身するのも、初見時は衝撃でした(笑)しかもこのときの表情もまた可愛い。

追加キュアも、2年ぶりに追加キュア用の専用BGMがあって、変身のセリフ通りにトッピングもりもりのゴージャスさで。「デザート」というキーワードからここまで連想ゲームでイメージを膨らませられるって、クリエイターさんってすごいなぁと毎回思います。



本編について①~主人公~

あえて終盤に描かれた主人公の成長

さて、ようやく本編の感想へ。デパプリで最終フェーズに進むまで、ずっと言われていたことの一つに「主人公の掘り下げが少なすぎる」がありました。

私も中盤くらいまでは「あれ?なんで主人公以外の掘り下げ回ばっかりなんだろう?」と思っていたのですが、やっとその理由が腑に落ちたのが第39話。そして確信に変わったのが第44話でした。その時のツイートはこちら。

言いたいことは上記のツイートに集約したので、同じことの繰り返しになってしまうのですが、私の超個人的な解釈として、ゆいちゃんの掘り下げ回が少なかったのは意図的なのではないかと

物語初期のゆいちゃんは、これでもかと言うほど「おばあちゃん言ってた!」を連発しています。もちろん悪気はなくて、むしろその言葉のおかげで誰かを鼓舞しているのですが、これって主語がゆいちゃんじゃないんですよね。良くも悪くも、おばあちゃんの言葉をまるごと鵜呑みにしている。

もちろん「誰かの言葉をそのまま受け止めて、他者に伝えることができること」自体は、強みでもあります。ひねくれたり、曲解する人もいる中で、まっすぐ受け止めて正しく伝えられるって素敵なことです。

なので、問題なのは「誰かの言葉を伝えること」ではなくて「誰かの言葉に対して『自分はどう思うかを挟むことなく』伝えること」だと思うのです。

物語が最終フェーズに進むまで、ゆいちゃんに人間臭さがなかったり、超人のように見えたりしたのは、これが原因ではないかと。

そして、これにメスが入れられたのが第39話でした。初めておばあちゃんの言葉が通じないケースが出てきたのです。

そして、この第39話を布石に、ゆいちゃんの成長がはっきり描かれたのが第44話。ここでゆいちゃんは、ラスボスのゴーダッツからの煽りに対して、力強く「これはあたしが感じて考えた事、あたし自身の言葉」と返答しています。

これがデパプリのテーマの象徴ではないでしょうか。分け合うこと、受け継ぐこと、次の世に伝えること、時代に見合ったものに改変していくこと。どれも「ごはん」「料理」とおんなじです。

よくよく注意して見直してみると、デパプリって価値観の押しつけは何もしてないんですよね。ここねちゃんは、ともすると一人ぼっちに見えかねない個食でも、本人は楽しんでおいしく食べていたし。らんちゃんは、できたてのごはんを食べるよりも、最初にSNS用の写真を撮ることを良しとしているし。ゆいちゃん、ここねちゃん、拓海の親は不在がちなのでZOOM越しで食事をしたり、親抜きで食事をしていたり。

「ますます多様化していく今のご時世、いろんな正解があるけど、あなたはどう思う?どれを選択したい?」って問いかけてくれてるイメージです。



ゆいちゃんのまるごと飲みこむ性格あってこその繋がり

さらに言うなれば、物語初期のゆいちゃんには人間臭さがなかったり、超人のように見えると書きましたが、この「ありのままにそのまままるごと飲みこむ器」があってこそ、デパプリチームは作ることができたのではないかと思うのです。

ゆいちゃんの大らかさがなければ、まずここねちゃんが友達になることはなかったですし、ゆいちゃんなしに、ここねちゃんが自発的にらんちゃんやあまねちゃんと仲良くなることもなかったでしょう。

ゆいちゃんの、いい意味で相手の状況を気にせずそのまままっすぐ伝える力があったから、気持ちがあまねちゃんの心に届いて、プリキュアに覚醒することができた。

らんちゃんは………らんちゃんは自らのお料理への情熱で、わりかし自発的にプリキュアに変身して、社交力の高さでグイグイ仲良くなりましたが(笑)らんちゃんの場合、克服するテーマが、内側のメンバーに対してというより、外側の人に対して自分の情熱をどう貫くか、だったからかもしれません。



本編について②~主人公以外~

キャラがたっていて魅力的

と、ここまで主にゆいちゃんの魅力について書きましたが、デパプリの魅力の一つに、登場するキャラがたっている点が挙げられます。敵味方問わず、どれもキャラの持ち味がある。ほんとうにお料理さながらに、みんな良い味出しているのです。



欲を言えばもっと掘り下げた彼らを見たかった

と同時に、それだけに、もっと掘り下げたところを見たかった、という嬉しい悲鳴がありました。たとえば思いつくだけでも以下。

・なぜナルシストルーは食事が嫌いになったのか?
・なぜセクレトルーは料理が嫌いになったのか?
・ローズマリー、フェンネル、シナモンの弟子時代の想い出は?
・スピリットルー、セルフィーユ、ゆあん、みつきの掘り下げは?

キャラが魅力的なだけに、「なぜ彼らは今の彼らになったのか?」という人格形成の背景エピソードが描かれていれば、とつい思ってしまいます。

とはいえ、忘れてはならないのが、デパプリは東映不正アクセス事件で5週に渡って放映中止になったこと。この5週があれば、たぶん上記も掘り下げられたと思うので、スタッフの方々が限られた話数の中で、どうにか工夫調整してくれたのだろうと思うと、仕方ないのかもしれません。いちファンのただの戯れ言ということで。



すごく意欲的だし挑戦的な、レギュラー陣の「大人ポジション」「男性ヒーローポジション」

デパプリで様々な意見が湧いていたのが、シリーズ初のレギュラー陣における「大人ポジション」「男性ヒーローポジション」キャラクターの存在です。つまりは、ローズマリーとブラックペッパーこと拓海ですね。

これまでのプリキュアシリーズで、ここまで直接的にプリキュアに助言をしたり共闘したりするキャラクターはいませんでした。それもそのはずで、そもそものプリキュアのコンセプトが「女の子だって暴れたい」だからです。意図的に「男の子が女の子を助ける」構図は避けられていました。

そんな背景があるので、賛否両論なのも分かります。というか、そもそもは異端児的ポジションで始まったのに、シリーズが長く繁栄するにつれて、いつのまにかそれがスタンダードになり、正統派ポジションになってしまうというパラドックスは、長寿作品にはつきものでしょう。

デパプリはシリーズ19作品目ですから、19年も経てば、そりゃ世の中の価値観も変わります。そういう意味で、私はデパプリのマリちゃんとブラぺの存在は、すごく意欲的な挑戦だと思いました。


⚠️そうこう言っているうちに、次回作ひろプリのキュアウィングが史上初の男性変身者なことが発表されましたね!また新たなプリキュアの歴史が動きました!



対象年齢を忘れてはならない

そしてそもそもですが、対象年齢を忘れてはならないなと思います。当たり前ながら、プリキュアの世間一般的な対象年齢は年齢1桁代の女の子です。もちろん大人が見ても本当に感動する素晴らしいアニメだと心から思いますが、

「良作な子ども向けアニメは、結果的に大人の鑑賞に堪えうる」

ことと、

「最初から大人をターゲットにして、良作な子ども向けアニメをつくる」

ことは異なります。今回で言えば、デパプリのおかげで子どもが楽しくご飯を食べるようになった、などの感謝の声も上がっていますし、良い面もたくさんあるのではないでしょうか。

前述のマリちゃんやブラペにしても、「適切な大人との距離感」「溜め込みすぎず、適度に誰かに頼ること、そこには信頼があり、依存ではないこと」「男尊女卑でも女尊男卑でもない、真に対等なジェンダーフリーさ」という面があることも見逃せません。

これらについては、デパプリのシリーズディレクターである深澤敏則さんがインタビューで語ってくれているので、そちらをぜひご一読ください!制作の裏話としても普通におもしろいので!



コロナ禍だからこその想い

もう一つ社会情勢で付け加えるならば、デパプリが企画された時はコロナ禍真っ只中だったことも、特筆すべき点でしょう。

喉元過ぎれば熱さを忘れると言いますが、あの頃は緊急事態宣言やマンボウで、飲食店も20時までには閉まっちゃってて、マスクなしで誰かと一緒に何かを食べることすら、当たり前ではない時代が確かにありました。

仮に食卓を囲めても、間にアクリル板があって喋りづらかったり、まして直箸で大皿料理を分け合うなんてとんでもなかったり。

それを踏まえると、デパプリでおなじみの和実家の縁側の食卓のシーンは、当たり前の尊さを伝えてくれるな~と思います。

そんな食卓を囲むシーンへのこだわりは、前述の深澤敏則さんのインタビューもぜひご覧ください!コロナ禍だからと書かれているわけではないのですが、コロナ禍関係なしに、食卓への熱い想いがすごく伝わります。



最後に

デパプリは、時代に合わせた新たなプリキュア像への過渡期の作品なんじゃないかな、と思いました。

もちろん「プリキュアとは何なのか」という問いは哲学のようなもので、正解なんてありません。

ただ一つ言えるのは、プリキュアに「こうでなければならない」はなくて、「それって本当にそうなの?」「もしそうじゃないとしたら、こういうのはどうだろう?」というまっすぐな文化が根っこにあるということ。

もちろん、そんな私のこまっしゃくれた考察なんて関係なしに、デパプリはシンプルに素敵な作品です。そんな19作品目を制作し終えてくださった全てのスタッフの方々に、本当にありがとうございました!

次回作のひろプリも明日が楽しみです!

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