度数の数え方:下から数える?上から数える?
前回で予告したとおり、音と音の人間関係の話をします。
繰り返すようですが、「かしこい音楽理論」では音のことをまるで人間のように扱っています。
今日覚えて帰ってもらうこと
・度数の数え方
インターバル(interval)
二人の厳密な距離のことをインターバル(interval)といいます。音程(おんてい)ともいいます。インターバルは、前回説明した半音の数で表されることも多いですが、土地と土地の距離(住所の数)について考えるよりも、むしろ人と人の関係に寄り添うような生々しい表現について考える場合には、半音数や全音数とは違い、度数というかしこい呼び表し方をします。ディグリー(degree)とも呼ばれます。
その生々しさのせいで、半音数や全音数の数え方よりも、ちょっとだけかしこさが必要になってきます。でも、それなりに生々しい人生を送っている人にはその気持ちがわかると思います。
実は、音楽理論のうち表現の方法論について扱う分野では、半音数や全音数などではなく、むしろ度数によるインターバルの表し方の方が主流となってきます。
度数の数え方
度数とは、片方の人から見てもう片方の人が何人目か、を数えるようなインターバルの表し方です。「何人目」の「何」に来る数字がそのまま度数になります。
かしこい人にしかわからない言い方をすると……
基準となる人から数えて1から番号をつけていったときの、距離を測りたい人までの番号をつけた回数
……のことです。何回数えたか=何度数えたか、ってそういう話ですね。数えた回数のことを度数といってるわけです。もちろん「全く同じ人」のことは1度といいます。
かしこい人には0度がないということはすぐ分かりますよね。それは音を数える覚悟がないことを意味します。数える覚悟ができたら声をかけて下さい。
番号だけを言い表す場合には、数えていく人たちが変化しているかどうかは気にしません。言い換えれば、変化記号は無視して、元々の名前だけ、すなわち、幹音名だけを数えているということもできます。
もっとかしこい話:度数を序数詞で表す
日本語で音楽理論を学ぼうとすると中途半端に英語を使うことになるので、度数を数えるときは数字に1stだの2ndだの3rdだの4thだのとかいうのをつけて表すことが多いです。これを序数詞といいます。
かしこい人はかしこいので、音楽理論のことを話している最中に序数詞を見たら度数のことを言っているという理解をすることができると思います。
また、度数の代わりに「第○音」という言い方をすることもありますが、これも根本的には度数と同じです。英語の序数詞と同じで、順番を数えてるだけです。
オクターブ
音名は、全部で7つを順番に繰り返していく仕組みなので、上にも下にも同じ音があります。8番目は同じ名前の人が出てくるのですが、もちろんこの人のことを8度(8th)といいます。8度に関しては、オクターブという特別な名前が与えられてます。
また、オクターブは、1オクターブ、2オクターブ、…というように数えることもできます。1オクターブは8度ですが、2オクターブは15度、そしてnオクターブは(7n+1)度です。
オクターブ以上離れている度数のことを呼び表すとき、○○オクターブと△△度、という言い方で表されることも多いですが、9度や10度、…と表されることもあります。これらを複音程と呼んだりします。
喩えるなら、1時間30分を90分と言っているようなものです。
また、1オクターブ以上離れている人を呼び表すとき、何オクターブかはさておき、単に「オクターブ違いの○○さん」とか「オクターブ違いの○○度の人」とだけいうときがあります。
度数の上下関係
上に図示したように、Cの6度上にはAがあり、そのAのオクターブ下(8th下)には、Cの3度下でもあるAがあります。
また、Cの4度上にはFがあり、そのFのオクターブ下(8th下)には、Cの5度下でもあるFがあります。
かしこい人はお気づきでしょうが、上下にある同じ名前の人に向かって、下に向かって数えていった番号、上に向かって数えていった番号の両方を足し合わせると、必ず「9」になります。
ここで注意しておきたいこととして、上下という前提がなくても、「下から上に数える」ものとして考えるのが基本です。
上下を区別しない度数の言い表し方
それに関連して、オクターブ上下する同じ音名の人たちを区別しないような度数の言い表し方があります。
例えば、「Xさんからみて6度のYさん」というのは、「Xさんの6度上のYさん」と「Xさんの3度下のYさん」を区別しない呼び表し方です。
厳密にいえば、Yさんという名前で呼ばれるありとあらゆる人たちを区別せず、「Xさんの6度のYさん」と呼びます。ですので、言い換えれば、高低を無視して音名だけに着目した二人の関係の呼び表し方だとも言えます。
歴史で喩えるなら、徳川氏の分家(徳川御三家)からみて、本家に連なる徳川家康、徳川秀忠、徳川家光、……を区別せずに全部ひっくるめて本家(徳川将軍家)と呼んでいるようなものです。つまり家系と家系の関係について、代を区別せずに呼び表しているような感覚ですよね。
上の例で言うと、どのオクターブのXさんから見ても、どのオクターブのYさんも6度の家の人、みたいな感じです。
また、下に向かって数えた度数は、9との差を取ることで上に向かって数えた度数、上下を区別しない度数の呼び表し方として改めることができます。これを度数の転回といいます。
例えば、二人の上下関係に関係なく「PさんからQさんまでの度数」とだけ言われたときは、下にいるQさんに向かって数えて、9からその度数を引けば、上にいるQさんに向かって数えた度数と必ず等しくなります。
人と人の上下関係をわざわざ指定しない度数の言い表し方があると思っておいて下さい。これは別に「かしこい音楽理論」に限った話ではありません。ちょっとしたことですが、今後この言い表し方が地味に役に立ってきます。
番号だけでは厳密な距離は表せられない
さんざんここまで度数の数え方を説明してきましたが、第1回で説明したように、幹音同士の距離は一定ではありません。これは変化音の距離も一定ではないことを意味します。
そういうわけで、厳密なインターバルを呼び表すためには、番号に付け加えるための何かが必要になります。同じ友達にも、ダチとマブダチがあるようなものです。
次回、そのことについて説明したいと思います。
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