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七色の涙 13

それから数日して手紙が届いた。きれいな青色の封筒に、見慣れた少し乱雑な文字。長い純とのつきあいの中ではじめてもらった手紙だった。
 丁寧にハサミで封を開けると薄い便箋が一枚。その繊細さとは似つかわしくない文字が並べられていた。

「その後元気にやっていますか。俺は仕事に追われる日々を過ごしている。また来週から九州に行くことになった。色々考えたんだけど、そっちに行って良かった。海はきれいだったし、お前は元気だったし、なんだかもやもやしてたものが晴れたから。次いつ会えるかはわからないけど、俺はもっとしっかりしたオトコになってたいなと思う。元気で。色々ありがとう。純」

 何度も何度もかみしめるように読んだ。私たちの終わり方。手紙として記されたら、私は改めて自分が出した答えの重みとまた向き合うことになった。
 途方もなく寂しかった。大切な人を無くしてしまった喪失感。私の出した答えはもしかしたら間違いだったのかもしれない。でも終わったものを巻き戻すことはできない。

「優子。純からの手紙は私の心を痛めました。無くしたものの大きさを思い知って、涙が溢れました。純がこの島にきてから後、私はずっと心ここにあらずでフワフワしています。私は泣きつかれてここに来たから、涙は枯れたと思ってたけど、違ったみたい。純は優しすぎるから心が痛くて、どうしていいのかわからないよ。純はどうしてますか?会っていますか?」
 
 純が島から帰ってから、島は忙しくなった。お盆休み。天気にも恵まれてバタバタと時間だけが過ぎて行った。
 

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