【連載小説】小五郎は逃げない 第20話
幾松の行方 3/3「んっ、きさまは上方の者か」
「そうでんねん。大坂で商人してましたんけどな、何や京でお侍はん同士でいさかいが多なったによって、物が売れんようになりましてな、今ではこの様ですわ。金ものうなって、親戚頼って京に来たんですわ。まあ生まれて初めて来たさかい、道がさっぱりわかりまへん。あちこちの家を探してましてん。」
以蔵はその場しのぎの嘘を並べ立てた。しかし、斎藤は黙って聞いているのかと思っていたが、静かに刀の鯉口を切った。
「まずい、斬られる」
以蔵は心の中で