【連載小説】小五郎は逃げない 第36話
奪還 4/6 以蔵の方はとにかく速い。最初に対峙した隊士の正面から接近戦に持ち込むと見せかけ、以蔵のスピードについていけないその隊士は、刀で以蔵の一刀を受け止めようとしたところで、以蔵は相手の刀を弾き飛ばすと同時に背後に回り込み、低い姿勢のまま真一文字に相手のふくらはぎのじん帯を切断した。これも一瞬の勝負だった。呆気にとられた二人の隊士は、一人は右後方から、もう一人は左後方から、同時に以蔵に切りかかった。以蔵は苦痛に顔をゆがめて倒れている隊士の髷を掴んで無理やり引き起こし、右