紫陽花の詩
紫陽花は青春の引き出しだ。
昔住んでいたマンションの脇には公園があった。
小さな公園の中にてんとう虫とアヒルがバネでビヨンビヨンと動く乗り物を思い出す。
家から一番近い公園だったので、思い出が数えきれないほどある。
小学生の頃に大雪が降った日は近所の友だちと1日かけて大きな鎌倉を作ったし、中学生のころお付き合いした彼と下校した帰り道、ながなが立ち話をした。
高校生では友だちとイベントで踊ることになったダンスを練習したり。
その公園はいつも歯がゆい若さに溢れた匂いと紫陽花に囲まれていた。
学生時代に一世を風靡したサスケの“青いベンチ”
TSUTAYAでレンタルしたアルバム「Smile」は、MDに落として何度も聴いた。
中でも最もたくさん聴いたのは“紫陽花の詩”だと思う。
急な雨が降ってきたから図書室に駆け込んだ二人。
ふとした瞬間に彼女が愛しくてたまらなくなるような、ギュッと切ない気持ちが当時からすごく好きで。
いつか私も恋をして、こんな風に思ってもらいたい…と密かに願って生きてきた。
そう思い出してもう一度聴いてみると、タイムマシンに乗ったかのように当時の感覚が蘇る。
そして同時に受け止め方が変わった。
こう思われてみたい。と憧れた感情は、わたしが娘に対して抱きしめたくなる一瞬を体現しているのだ。
ギターの柔らかな音色で包まれるお二人のハーモニーは今、改めて聴いても魅力的だ。優しさと慈しみに溢れている。
音楽を聴くだけで、青春の匂いが鼻を掠める。
愛しい記憶を大切にしまっておいてくれるわたしの引き出し。そこに娘への愛も重ねてそっと閉じる。
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