クロス屋さんの男の子の話

今の仕事を受けているところは、他業種の職人さんをまとめている会社で。
監督さんが最近
「クロス業種の若い子が入社した」と前印象を話してくれてたのよね。

「所属のクロス屋さんと一日仕事をしてもらったんだけど、『あんなので大丈夫ですか?』って言われたんだよね。」
「そりゃまた随分だねぇ。」
「うん。○○さん病み上がりだから、あんまり動けないのもあるんだろうけど…」
何やら勝ち気な子だね、なんて話していて。
その後材料の運搬でその子と会った時の仕事ぶりを見て、なかなか卒のない子だなぁと感心しつつも、前評判がずっと頭に残っていて、今ひとつ声を掛ける気にもならず。
でもその時の仕事で「この子は気遣いの出来る子だなぁ」と思った事があって。
今の現場は8階なんだけど、併設のエレベーターは3メートル以上の材料は運べない仕様。
届いた仕上げ物の天井材は3.6メートル。
最初の段取りでは1階で材料を切ってエレベーターに、っていうつもりだったんだけれど、当日に私がどうしても一枚で使いたい、とわがままを言ったら
「わかりました!」と快諾で4階まで運び出して。
「荷揚げ屋さんに階段運びを頼むと、追加料金が発生するんですよ。なので4階まで運べば通常料金なんです。」
若いのによく知ってるね、と言うと
「オレ、足場屋にも居たんで。運ぶのも平気です」
なかなか機転のきく子だな、と。

そんなこんなでクロス仕事でやっと現場に再入場。
先輩のクロス屋さんとは初顔合わせ。

挨拶もそこそこにクロス屋さんの仕事が進む段取り優先で色々と相談するも、なんだか判断がはっきりとしない先輩。
話を割って若い子が対応してくる。
内心(随分と前に出てくる子だな、先輩よく怒らないな…)なんて思っていたんだけど、聞こえてくる二人の会話で状況を察したのよ。

「この先輩、仕事できない人だな」

とにかくボーっとしてる。
確認ができない。
その仕事の先の判断が出来てない様子…

その先輩が、午後の一服前に壁の注意喚起の貼り紙をボーっと見てたのね。
「……」
「どうしました?」
「…これがねぇ、読めないんですよ。」
「え?」
「いやぁ、先日頭やっちゃいましてね。体には残らなかったんですけど、文字がまだ読めないんです。コレは多分頭上注意、ですかね?」
「…そうだったんですか、残念ですが場内禁煙です。」
「タバコでしたか、ははは。
なのでタバコも吸えないんですよね」
「○○さーん、ここパテ何回目ですかぁー?」
「あ、おう!そこ2回かな?」
「まだ1回みたいですよー。オレやっちゃいますね!」

色んな事が繋がって最初の若い子が言っていた「あんなんで大丈夫ですか」の本当の意味を理解した瞬間でした。

人からの前評判よりも、やっぱり本人と会って見ないと判らないな、と俯瞰して見ていた自分を反省しました。

いい若い子が入ったね。








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