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ショートショート:白衣の天使【1227文字】

俺たち3人は少し緊張して待っていた。
居酒屋の、座敷の個室。
幹事は俺。相手はナース。

そう、久しぶりの合コンである。

骨折で入院していた俺は、担当してくれていたナースに一目惚れし、退院の日に何とか連絡先の交換までこじつけた。


「本当に可愛いの?」

彼女いない歴3年になる友達が言う。

「俺が狙ってる子はめっちゃ可愛い。で、連れてくるって言ってた他の2人も、結構可愛い。1人はキレイ系かな。3人とも、まじで白衣の天使って感じだぜ。清楚で優しくて、まさに天使。もしかしたらバージンかも。」

「さすがにないだろ。でもナースで、しかも可愛いとかキレイとか、本当にいるんだな。」

この前彼女と別れたばかりの、もう1人の友達が言う。

「俺も驚いたよ。あの病院、きれいなナース多かったぜ。」

「エロい目で見てたんだろ、どうせ。」

「バレたか?」

3人で女の子を待つ間、俺たちの期待と妄想は膨らむ。



個室の引き戸が開いた。

「あ、ごめんなさい。待たせちゃいました?」

女性が入ってきた。

俺の担当してくれていたナース・・・だと思う。

なんだ、病院で見ていたのとずいぶん感じが違う。

顔は可愛い。病院で見ていた通りだ。

でも、なんか、違う。

なんか、その、

めちゃくちゃに、ださい。

病院ではきれいにお団子されていた髪は下ろしていて、よく見るとボサボサで相当傷んでいる。いつもお団子にしてあったから気付かなかったんだ。

それから、変なキャラクターの描いてあるヨレヨレのトレーナー。膝の出たジーパン。

え、この人は部屋着で居酒屋に来たのか?



男友達のほうを見ると「この子?」という顔をしている。

俺は「たぶん」という曖昧な顔しかできない。



それから、もう2人、女性が入ってきた。

俺は度肝を抜かれた。

目のまわりをガッツリ真っ赤に塗ったゴスロリファッションの女性と、首にチェーンをかけたヘビメタファッションの女性が入ってきたのだ。

目のまわり真っ赤なのは、去年くらいに流行った、何て言ったか。地雷メイク?そんなやつだった気が…。

「なんか、3人とも、仕事中と雰囲気違いますね。」

思わず言ってしまった。

だって、3人とも、俺にとっては白衣の天使。

上品で優しくて、それこそ本物の天使だったんだから!

「そうですか?私服だからかな。3人とも普段こんな感じですよ。」

ヘビメタナースが言う。

え、今、口の中に何か光るものが。

もしかして、え、舌ピ?

「え、舌ピアスしてます?」

「あ、見えます?仕事中はマスクしてたから気付きませんよね。」

そういってベエっと見せてきた舌にはきれいな丸い銀色のビーズようなものがついていた。



男友達を見ると「お前、話が違うぞ。」という顔をしている。

俺だって、こんなはずじゃなかったと思っているのに!

俺の白衣の天使たちはどこへ行ったのだ!?


そう。俺は知らなかったのである。
白衣と私服のギャップが激しいのは、「ナースあるある」だということを。

そしてこのあと、彼女たちのとんでもない酒豪っぷりに、さらに驚かされることを俺はまだ知らない。



《おわり》

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