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右腕の肌を裂いたら息を飲むほど美しい黄金の骨。

気がついたら年が明けていた。

秒針は音もなく滑らかに周回し、いつの間にか時間が過ぎる。私はいつもそうだ。時間に置いて行かれる。


大晦日と元日は、猫の病院と、夫の実家に顔を出すことで、終わった。夫の実家で姪っ子たちとカードゲームをして、賑やかに過ごした。自分の実家には、ウイルス騒動から一度も帰っていない。母が神経質なたちで、人が集まることを避けている。

会えるときも会えないときも、会える人も会えない人も、それぞれの場所で心安らかに過ごしてもらえれば、私はそれが一番良いと思っている。会いたいときに会えなくても、大切な人がいるその場所で、その人なりに居心地良くいてくれたら、それで良い。

私は、いつもと変わらず、愛猫と穏やかに過ごせたら良い。年老いて、痩せた、私の猫。一緒に過ごしてきた18年。老いてもなおピーンも張ったヒゲを褒め、衰えてもなおサラサラの毛を撫でているだけで、私は愛しさが胸を満たして指先までホカホカする。人生の癒やし。

猫は人間の約7倍のスピードで老いると言われているから、私の愛猫は私より7倍も早く老いていて、私はたぶん人間の標準スピードで老いていて、老いの先には必ず終わりが待っているのだけれど、私にとっては、終わりがあるというのは心から安寧で、安心できることなのだ。

何もかもが永遠に終わらず、無限に続くなんて、恐ろしくていられない。私はいつか必ず訪れる終わりのときまで、老いながら、日々を穏やかに過ごしたい。


贅沢を言えば、今年もできれば好きな小説を書きながら、この右腕が書きたいものを書きながら、生きていかれたらいい。

右腕の肌を裂いて息を飲むほど美しい黄金の骨が見えたら、私はきっと何でも書ける。去年は、いろんなジャンルに挑戦する年だったけれど、今年は自分らしい文章と向き合ってじっくり書く年にしたい。きっといつか、私の骨は黄金に、絢爛でなくていいから、さりげなく美しく輝くと信じている。ひとつ年が明けた、麗しき日に。


顔の皮
剥いでみな
骸骨は黄金さ

黄金バッド/吉井和哉




2022年。
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。


秋谷りんこ

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