猫と一緒にあなたのそばで　＃どこでも住めるとしたら

どこでも住めるとしたらどんなところがいいだろう？

世界中、素敵な場所はたくさんある。私が初めて行った海外はグアムだった。

英語ができなくてもコミュニケーションがとれるほど日本人の観光客に慣れてくれていて、困ることは何もなかった。真っ白いビーチに青い海、煌めく太陽と美しい空。最高だった。慣れない外貨での買い物も楽しかったし、日本人だとわかると日本のギャグを見せてくれる現地の人たちのおもてなしも嬉しかった。

ボルネオ島にも行ったこともある。とにかく自然が豊かで、海にも山にも近く、人々は温かかった。トイレに紙がなくて、かわりにホースの伸びた水道があって「これで洗うんだ」と言われてカルチャーショックをうけたのが忘れられない。海が信じられないほどきれいで、何時間も夢中でシュノーケリングをした。少し休憩しよう、と砂浜に座っていると、目の前を大きなイグアナのような爬虫類がのっそのっそと歩いて横切るから、本当に驚いた。あと食べ物が抜群に美味しかった。

フランスとイタリアの境界くらいにある山間部にも行ったことがある。

部屋から氷河が流れるところが見えて、普段生活をしている日本と同じ地球とは思えなかった。街は花々に溢れ、小川が流れ、建物はどれもお菓子の家みたいに瀟洒だった。ジェラート屋さんがたくさんあってどれもかわいくて美味しかった。おとぎ話の世界のようだった。

世界中には、素敵な場所がたくさんある。それでも、家に帰ってくるとなんだかほっとした。旅行に行くのと、住むのとなると、ちょっと話は違うのかもしれない。

私は、住むなら、やっぱり日本がいい。その第一の理由は、治安の良さだ。海外の良いところはたくさんあるし、日本の住みにくいところもたくさんあると思う。でも、治安の良さは変えられない条件である気がする。だから、まずは日本。
それで、できれば都内に1時間以内で行ける場所がいい。美術館や博物館、文化的な催しが行われるとき、見に行きたいものに行ける距離にいたい。東京に住まなくていい。東京の近くに住みたい。
東京に近くありながら、わりと自然のあるところがいい。これは矛盾しそうで矛盾しない。山奥とは言わない。でも、近所に畑があって、ご近所の農家さんが「ほれ、大根とれたからおでんにでも入れな」なんて言っておすそわけしてくださるようなところがいい。「ありがとうございます！」と言って、美味しくおでんをいただけるところがいい。大根には葉っぱももっさりついている。大根の葉っぱは炒めて食べると美味しい。
近所の人がいい人だとなおいい。うちには子供がいないから、家の前で子供が遊んでいる声が聞こえたりしたら賑やかで嬉しい。皆既月食の夜に外にでたらお隣さんもいて、一緒に夜空を見上げるような関係がいい。「あ、欠けてきましたね」「欠けてきましたね」なんて言いあいながら、写真とったりして見せあえる仲がいい。
近くに川があるのもいい。夏場は足をつけて遊べるような川だ。木漏れ日の中、冷たい川の水に足を浸し、心地よい風が通り抜ける夏。最高ではないか。夕暮れには蛍が見えたら風流だ。川がきれいな証拠だし、蛍はやっぱりきれいだし。
住む家は、もちろんペット可の物件だ。これはゆずれない。愛猫がいるからだ。そんなに広い家じゃなくていい。猫たちが走って遊べるくらいの広さがあれば、それでいい。猫たちが窓から外を見られるように、マンションじゃないほうがいい。狭くていいから庭があって、庭にくるスズメを猫が眺めて楽しめるといい。
徒歩圏内にコンビニがあったら便利だ。スーパーもあると便利。散歩ついでにお買い物行けたら最高。
実家とそんなに遠くないといい。母親がひとりぐらしだから、ときどき顔を見にいける距離がいい。何かあったときに自分の運転で行ける距離がいい。

私が住みたいのは、そんな場所だ。

今、いくつも条件をあげた。これらのすべてに該当するのが、実は今住んでいる家だ。東京にも近く、でも自然があって、近所の農家さんからお野菜をいただいて、お隣さんとも仲が良く、猫と一緒に穏やかに暮らしている。私はすでに、自分の住みたいところに住めているのだ。これって、最高に幸せなことじゃないですか？

美しい場所は世界中にたくさんあるけれど、私が住みたいのは、きっと今の家だ。夫の隣で、愛猫をかわいがりながら、かわりばえのない日常を過ごす場所。住みたいのは、こんな、落ち着く場所が一番いい。

といいつつ、何年か前に、夫に海外転勤の話があったとき、嬉々として、猫を連れてついていく気満々だった(笑)結局、海外転勤の話はなくなったんだけれど、私は愛猫と夫のそばにいられれば、そこが私の一番住みたい場所になるのかもしれない。それはそれで、最高に幸せだなー。

おわり

#どこでも住めるとしたら