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尊と2人で、シンジのコンサートに招待された。 あの日、都心の大きなコンサートホールは満員御礼だった。彼の作品が、たくさんの人の心に届いている証だ。 私もシンジの音楽が好きだった。 実際に彼と出会う、ずっと前から。 尊がギリギリに到着するというので、一人で建物に入ると、すでに中は多くの人で賑わっていた。 私は、明るいエレベーターホールで1人、これまでのことについて考えを巡らせる。 これが最後の夜になると分かっていた。シンジにも皆にも、そして尊に会うのも、これっきりだろ
尊から離れると決めた日から、私は努めてたくさんの人に会った。 中学生以来会っていなかった友人、旅行先や留学先で知り合った友人、高校でお世話になった先生、趣味を通じて知り合った友人、学会で声をかけてくれた研究仲間。 そうやって、自分は社会とたくさんの接点があると実感すると、私の中の尊の存在は徐々にちっぽけになっていく。 そんなある日、高校の同級生に勧められて始めたマッチングアプリは、確実に私のターニングポイントになった。 尊の世界から離れるために、夢中になれる新しい出会