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【実録】愛してくれると、信じたかった。

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何千人もの女性を救ってきた女風セラピストは、私を幸せにはしてくれなかった。 彼が私に見せた、歪んだ性癖。 スワッピングに乱交パーティ、欲望渦巻くディープな世界で、私たちは…
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2022年3月の記事一覧

22. 苦しみを与えるために

≪ 21. 早朝のナイトクラビング 私とシンジがセックスすること自体は、尊も皆も当然知っている、というか見ているわけで、お互いのパートナーも特段咎めることではないけれど、これはあまり良い状況ではない。 本当に2人きりになるのはこれが初めてだった。 シンジの家には油彩から立体まで様々なアートが置かれていたが、私は一度もそれに触れなかった。音楽だけじゃなく芸術全般が好きなんだろう、でも私は、これ以上何か共通点を持つのが怖かったんだと思う。 『ハルくんのキス、いいよね。咥え

21. 早朝のナイトクラビング

≪ 20. 新たな始まり 「ハルくん、いないとダメ?」 広い玄関で、シンジの声が響く。 「え?いや、」 私は振り返る。 「コーヒー、飲む?」 彼は私を遮り、靴を脱いでリビングに向かう。 私は望んで、シンジに流されていた。 私がソファに座ると、キッチンから声がする。 「ハルくんはいないよ」 パートナー以外と外で会うのはルール違反。 そう、尊から聞かされていた。 2人で会っていいんですか、なんてバカ真面目な質問はできず、私は聞くタイミングを完全に失ってしま

20. 新たな始まり

≪ 19. 泣く故郷 シンジパーティーの主催者。作曲家。 ハル(海/尊)|女風で出会った私のパートナー。 よく手入れされた街路樹の葉が落ちてきて、 乾いたコンクリートの上をカラカラと転がる。 雑踏の中で、かき消される音を探すのが好きだ。 私には聞こえているよ、と言いたくなる。 夜勤を終え、朝方の六本木で信号待ちしていた時だった。 人はまだ少ない。 数メートル先でゆっくり停車したタクシーが、 なんとなく気になった。 こういう時、不思議な勘が働くのは何故だろう。