「テニスの王子様」を分析する(115):不可逆の暗示

負けるつもりはない。
だからこそ「引き戻す!!」と強く思うのだが、そう思う直前にミサンガが切れる。

許斐剛『テニスの王子様 14巻』集英社、2002年、P.21。

不可逆的な出来事(ミサンガが切れる)が描かれたコマと、「引き戻す」セリフのコマは対照的だ。真逆と言ってもいいだろう。

そしてセリフがなく「切れる」という出来事だけが描かれることは、なんらかの暗示のように思える。
一般的には願いが叶うといった幸運の予感とされるが、セリフ(引き戻す)と逆方向の出来事であるため、単純な幸運ではなさそうな予兆も感じさせる。

許斐剛『テニスの王子様 14巻』集英社、2002年、P.23。

その後、「戻る」というセリフの後に
ミサンガは地面に落ちる。
重力に逆らうことなく落下することは、こちらも「戻れなさ」とは対照的だ。
ミサンガを通して、出来事とことばの不一致が描かれる。


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