4K60fpsが如何に贅沢品かという話

情報量が多く、綺麗な映像には説得力があり、今までにない感動を生む力がある。
しかしそれは途方もなく高価な機材と人とがあって初めてできるのだ。

ごきげんよう、普段はバーチャルタレントをやっている九条林檎だ

個人でやっているバーチャルタレントというのは兎角なんでも自分でやらなければならない。
機材はどんなのがあるか調べて予算を組んで買い、出演の打診あれば見積を出して交渉をし、3Dモデルが使いたいサービスに適合していなければ天下のゲームエンジンUnityを起動して直したり、サムネイルデザインして配信をしたり、
あとは日がな1日動画編集に明け暮れる、そういう生活をしている。

あくまで我の場合なので他のバーチャルタレント・Vtuberが当てはまるとは限らないが、こういう生活をしていると映像表現について考えることがある。
気を抜いてYouTubeで動画を見ていてもテロップのフォント(文字の形)が気になる、どうやったら手持ちのツールで文字の装飾を再現できるか考えてしまう。
我は本職の動画編集者という訳ではないしそんなに熱心に動画編集について研究している訳でもない。
しかしやはり気になってしまうものは気になる、良いなと思ったものは模写のように手元で作る。こうして非常にゆったりしたスピードで編集の引き出しを増やしている訳だが、真似したくても難しいものというのは沢山ある。

現在その最たるものは4K60fpsと言えよう。

4K60fpsとは何か

4Kはざっくり画質を指す言葉だ、4Kのテレビやなんかが家電量販店の店頭に並ぶようになってから久しい。最近は8Kなんていうものも出るようになった。
今の地上波放送は大体2Kと呼ばれることもあるフルハイビジョンぐらいらしい、これは調べてみたが見た資料によって書いてあることがまちまちだった。
Vtuberの配信も2K相当の1080pか1個下の720p、ハイビジョン相当であることが多い。

60fpsは1秒間に表示される画像の枚数、フレームレートやなんかと呼ばれるものだ。この数が多ければ多い程映像がなめらかに見える。
昔2~3年前に流行った噂で人間は30fps以上は知覚出来ないというのがあったがとんでもない。現に我はしっかりはっきりと見分けることが出来る。なめらかだと感じた映像の詳細を確認すれば高フレームレートだったというのは日常茶飯事だし、実際そういう方も多かろう。
この噂の出どころは恐らくテレビが30fpsなことに由来すると思うが我は映像について特別詳しい訳ではないのでよくわからない、興味があれば是非とも調べてみてくれ、ははは

4K60fpsの扱いづらさ、高価さ

さてこの画質の良いなめらかな映像たる4K60fpsのどこがそんなに贅沢なのか。
まず現在の映像作品というものは殆どがコンピューターで編集される。
バーチャルタレントの方も予算とにらめっこをして買える中で一等上等な皆様ご存知パーソナルコンピュータ、略してパソコン、さらに略してPCを各家取り揃え、編集・配信に精を出しているわけだ。

このコンピューターにはそれぞれ脳たるCPU、その作業机たるメモリがあって、それの大きさなどで処理できるデータの量や種類が変わってくる。
あまりに大きすぎるデータを扱うとどんどん時間がかかり、画面はカクカクし、しまいには青い画面になって止まる。
だから映像を編集するなら手持ちのコンピューターで処理できる量のデータのものでないといけない。

4Kというのは単純に2Kの倍である。
我の持っているPCはざっくり2年前のものだが、これはとても古い訳ではなく、当時のハイエンドと言えるものでもないものの、VRだってすいすいと出来るなかなかの代物だ。
しかしそれでも1080pのものを編集するのに映像をクロマキー合成したものを2つ同時にプレビュー再生するとだいぶカクカクとしてくる。なにぶん使っているソフトが古いのもあるのだが、4Kなんか扱ってみるとカットしたり、図形を動かして、この時点でもうプレビューはだいぶカクカクしていて動きは確認できないのであとはもう静止画の状態でエフェクトかけて色調補正かけるのでもう精一杯だ。
ただでさえある程度時間のかかる映像出力が3分の動画を出力するのにひと晩かかったりやなんかする。
しかし歴史に耳を傾けるとニコニコ動画ができた当初は内容にもよるが480pを出力するのにもそんなのが普通だったというのだから技術の進歩には全く頭が上がらないな。

さて4Kでそんなものだ、では4K60fpsだとどうなるのか。
我のPCでは1回目の出力途中でクラッシュし、まるごと全てを再起動してまっさらな状態で動画出力してやっと成功した。
プレビューは殆どスライドショーのような状態で動画の演出なんて考えていられやしないというものだ。
嗚呼4K60fps、なんという贅沢品。

4K60fpsが贅沢品たり得る理由

最初に、世の中にはきのこたけのこで大真面目に争う人々がいるように、映像は24fpsの方がいいという人、フレームレートが高ければ高いほど良いという人、むしろ15fpsの方が良いという人、それぞれにいて、しかもTPOでまた違ってくるというような様相であるから高フレームレートの方が良いなぞと断言してしまっては1fpsでしか動けない体にされても文句は言えない。ははは、冗談はさておき、我は先刻とても丁寧に編集されて適切な演出を加えられた4K60fpsの映像を見てえらく感動した。
時たまテレビの宣伝で生よりも生々しいなんというのがあるがまさにその言葉が正しい。

実の所我の使っているモニターは4K対応ではなく、60fpsにかろうじて対応しているというような具合なのでそういう単純なことだけ考えると4Kの映像を見ても違いのあるはずはないのだが、恐らく我が知らないだけで何か違いが出るのだろう。
実写の映像だったがスタジオ照明の下で人の顔の肌を見た時のあの感じがありありと、カメラワーク、カットなどの演出が加えられているせいか、はたまた実際の視覚よりも小さくみているせいか、いずれにせよ実際よりも生々しく感ぜられる。

情報量が多かった。
情報量の多いのは魅力的と言い得ると思っている。実際個人的な所感だが昨年飲めるようになったばかりの酒はジュースよりも情報量が多いというのが最初の一番大きな印象だった。

どんなに高価でも魅力的でないのでは贅沢品でない。
空気中の微細な芥を非常に小さなピンセットで一粒ずつ集める機械があってそれが高価だとして買いたい者はそう多くはないだろう。
しかし、記録された実写映像でありながら生よりも多くの情報を魅力的に演出して届けることができるその為の良いカメラ、良いコンピューター、良いカメラマン、良いエンジニアは実に表現を仮にも生業としている者にとっては非常に魅力的。
それらが合わさって生まれた4K60fpsは紛うことなき贅沢品なのだ。

最後に

我はいわゆる個人勢の中では中堅のあたりに位置する、おいそれとPCを買ったりカメラを買ったりはできない。できないはずだが先日我はSONYのvlog向けのカメラを買った。頭が一つしかないのにVRゴーグルは2つある。コントローラは4つ。
なんだかんだといって4K60fpsもその内扱えてしまうようになるだろう、技術が進めばそれだけ順繰りに機材は安くなる。
その時自分が魅力的だと思える画を作れる、あるいはなるべく正確に伝えられるよう今後も弛まず精進していきたい。